肉球みゃあみゃあ
同棲を始めて一ヶ月。
とうとう彼女に、俺の趣味がバレた。
買ってきた写真集を眺めていた現場を押さえられてしまった。
……といっても、隠していたわけでもないし、それほどまずい趣味でもない。
ちょっと猫が好きというだけだ。
彼女の方は生き物全般が苦手というので、今までは言わずにいたのだが。
「……で、猫の写真集なんか買って来ちゃって、そんなに猫が好きなの?」
「ああ……。別に、隠していたわけじゃないんだが……」
「いいよ、別に、猫くらいなら。ヌード写真とかアイドルとかの写真集でもないし」
「そう言ってくれると気が楽だよ」
「でも、猫のどこが好きなの?」
「そうだな、全体的に好きだけど、特にどこかと言われたら、肉球だな」
「に……にくきゅう……?」
「ああ。プニプニして、とっても良いんだぞ」
「そ、そう……」
どこか不思議そうな表情を浮かべる彼女の反応を、俺はただ、動物嫌いのせいだと思っていた。
だが恐らく、彼女の方は嫌いゆえに動物に関する知識もあまり持ち合わせておらず、「肉球」という言葉じたいも知らなかったのではなかろうか。
そこに思い至ったのは、それ以後三日間連続で、夕食にミートボールが出たときだった。
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