中国奥地での二十年にわたる発掘調査の末、我々はついに、古代ウドニズム文明の遺跡を発見した!
 中国といえば多彩な食文化が特色だが、中でも非常に豊富なバリエーションを持つ麺類は、中華料理の代表といえる。中華では小麦粉を練ったものが麺類であり、例えば餃子も麺類として扱われる。
 しかし意外なことに、そのルーツは現在までに判明していない。
 ここより東の地域では、麺の作り方が西から伝わったと言われている。そして逆に西に行くと、東の方から伝わったと言われる。
 つまりこの地域が、麺類発祥の地である可能性もあるのだ。
 あるいは、世界史を塗り替えることになるやも知れぬ……。我々は興奮を抑えながら、慎重に捜索を開始した。

 独自の文字と、そして驚くべきことに、現代のものと比べても遜色ないレベルの紙を持っていた古代ウドニズム人たちは、膨大な量の記録を残していた。
 彼らの文字は、表音文字であるウドニズム文字と、古代中国の亀甲文字とを併用する文法だった。奇妙なことに、その文法は日本語と酷似している。まるで、ひらがな・漢字交じりの文章を読んでいるかのようだ。

 そして調査を続けるうち、我々はあることに気付いた。「3」だ。
 彼らは何故か、異常なまでに、数字の3にこだわっているのである。
 皇帝に謁見する際は3度礼をする、一日に3度礼拝するといった礼儀作法や宗教的行為なら、まだ分かる。
 日常生活に至るまで、彼らは3にまつわる行動様式ばかりなのだ。
 建築物もそう。例えば、遺跡にある階段は全て3段。それ以上高いところに登るものがあっても、3段目ごとに踊り場が作られ、決して2段以下で終わったり、4段以上続くことはない。
 彼らは何故、ここまで「3」にこだわるのだろうか。

 ……それから数日後。
 発掘された古文書を研究室に持ち帰って解読しているとき、助手の一人が走り寄ってきた。
「教授! これを見てください」
「どうした? 何なに……こ、これは!」
 助手が持ってきた古文書の題名には、「3こそはすべての数の母なる数」と書かれていた。
 これは、もしかしたら、彼らが「3」にこだわる理由が記されているのかも知れない。
「よし! 解読を続けてくれ!」
「分かりました!」

 ところが数分後、その助手が突然、どたりと床に倒れ込んだ。
「大丈夫か! どうした?」
「教授、その文書は……そんな馬鹿な……あり得ない」
「これか? 何が書いてあったんだ?」
 助手が翻訳した文書を手に取り、読み進めてみた。
 そこには、こう書いてあった。

「3こそは全ての数の母なり。なんとなれば、“3とはマミー”と言うが如し」

あとがき:
えぇと、「サン・トワ・マミー」の「マミー」は母親とは関係なく、フランス語で「Sans toi m'amie」と書き「恋人よ、君なしでは」といった意味だそうです。
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