マジシャンの憂鬱



 タキシードにシルクハットの男が、ポケットから白いハンカチを取り出し、観客の前で何度か振って見せた。
「タネも仕掛けもございません」
 と、すぐに観客席からヤジが飛んだ。
「お前、それじゃ商売にならないだろ!」
 すると、小さな劇場は笑いの渦に包まれた。
 いつものことではあるが、それでも不快感は抑えきれない。

 手品を趣味にしている男……種苗店と釣具店を営む男性は、憮然とした表情のまま、手にかぶせたハンカチの下から花束を取りだして見せた。

あとがき:
一発ネタは久々かも。
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