フィッシュ・アンド・ラブ



 あたしの家は魚屋だ。
 おかげで、あたしは威勢ばかり良くて可愛いげは無いし、いつも魚臭い。
 お風呂に入っても、洗濯したばかりの服を着ても、香水を付けても、この臭いは取れない。
 だから、あたしに寄ってくる男の子なんて、いない。来るのは猫だけ。

 でも最近、隣のクラスの男子が、よく話し掛けてくる。
 あたしなんかの、どこが良いんだろう?
 今日も彼に誘われて、一緒に帰っている。あたしは、思い切って聞いてみた。
「ねえ、なんでいつも、あたしと一緒にいてくれるの?」
「なんでって、そりゃ、お前が……す、す……」
 口ごもってる。
 も、もしかして!?
 やばい。あたしの心臓、バクハツしそう。
「お前が、スルメの匂いをさせてるから。俺、スルメ大好きなんだ!」

 ふと我に帰ると、あたしの足元に、大きなタンコブを作った彼が倒れていた。

あとがき:
祖父の四十九日の法要中に突然考えついたネタ。
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