第2話「スターはいらない」



 ある日の放課後、新聞部室では、まゆみが困惑の表情を浮かべていた。部員数が減って、ついにまゆみと一平と五郎の3人だけになってしまったのだ。
 仕方がなく、転校してきたばかりで校内の様子も記事の書き方も知らない五郎を、記者として取材に出すことに。
 一平は、五郎に取材のやり方を教えるため一緒に行こうと言うが、五郎は「特ダネを掴むには一人でなくちゃ」と拒否し、そのまま部室を飛び出す。
 その態度に一平は肩をすくめて呆れるが、まゆみは「あのめくら滅法がいい所なのよ」と、苦笑しつつ送り出す。

 しかし一平が部活動の取材に行ったついでに聞いてみたところ、どこの運動部にも文化部にも五郎が来た様子は無いという。「えらいやつ背負い込んじゃったなあ」と嘆く一平を、まゆみは「どこかで昼寝でもしているんじゃない」と、さらりと五郎に戦力外通告をして慰める。
 その頃、五郎は校内ではなく屋外を歩き回り、警察署へ行って事件はないかと聞いて迷惑がられたり、赤信号の横断歩道を渡ってトラックの運ちゃんに怒鳴られたりしていた。

 街を散々歩き回っても何も特ダネが見付からず、立ちすくむ五郎。しかしそんなとき、五郎の目の前を消防車が通り過ぎる。
 後を追いかけて火事の現場に行ってみたところ、バケツリレーの先頭にいたのは、五郎の同級生の岡田だった。
 近所の人達が必死に消火活動をしている中、五郎は岡田をつかまえて「今週の特ダネは君に決めたよ!」と一人で盛り上がる。
 しかし、ちょうどそのとき一人の女性が走ってきた。火事になっている家の中に、まだ子供がいるのだという。
 五郎は近くにあった防火用水の水をバケツでかぶると、岡田の制止も聞かずに家の中へと飛び込み、見事に子供を抱いて脱出した。
 そんな彼に、武勇伝を聞き出そうと本物の新聞社の記者やカメラマンが殺到。
 興奮冷めやらぬまま、学校へと戻った五郎。汚れた学生服を脱ぎ、ランニングシャツ姿で新聞部室に飛び込み「特ダネだよ!」と訴える。そんな様子に、一平は五郎の頭がおかしくなったと思い込む。
 疲れ切った五郎は、そのまま倒れてしまい、救急車で運ばれた。

 火事の現場で五郎にインタビューした毎朝新聞の記者は、会社に戻って事件のことを部長に報告。なんとその部長は偶然にも、まゆみの父親だった。
 記者は、まゆみから五郎に関する情報を得て記事で大きく取り上げようと言うが、それを部長が止め、「相手は中学生だ、あまりセンセーショナルに扱うとのぼせ上がる」と慎重に判断する。

 しかし、小さな記事にしたのは毎朝新聞だけで、他の新聞社は大きく扱っていた。
 翌朝、新聞を読んだまゆみは、父親に何故こんな滅多にない美談を大きく載せないのかと問うが、父親は「それは私の編集方針だ」「考えてみることだね」と笑い飛ばす。
 納得できないまま登校すると、途中で一平と会う。
 一平は、これで新聞部の人気も上がり部員も増え、学校でも部費をたくさんくれるだろうと楽観的に言う。
 そうして談笑しながら学校へ向かうと、校内から校門のはるか手前まで続く長蛇の列ができていた。
 最後尾の生徒に聞いてみたところ、なんと新聞部への入部希望者の列だという。

 放課後の新聞部室は大騒ぎになっていた。
 部長のまゆみの前に座った入部希望の女子生徒は、入部したい理由を聞かれ「だってかっこいいじゃん」と言ってのけ、まゆみを呆れさせる。
 部室の外では次から次とやって来る生徒を一平だけでは捌ききれず、彼らの押し寄せる圧力に耐えかねて部室のドアも圧壊。
 そうしているうち、五郎が現れたという話が伝わり、五郎目当てに集まっていた生徒達は一気に去った。
 多数の生徒に取り囲まれ、揉みくちゃにされる五郎。

 遠巻きに見ている一平とまゆみの所へ、クラスメイトの萩野ユリがやって来た。新聞部に入りたいという。
 だがまゆみは、ユリが既に文芸部と美術部と音楽部とを掛け持ちしていることを挙げ、週に一度新聞を出すのは大変なことだと、思い直すよう説得。
 しかしユリは、まゆみの言葉を曲解し、五郎を独り占めしたいからだろうと反論。
 売り言葉に買い言葉で、互いの溝は埋まらないまま、ユリは白いハンカチをまゆみに投げつけて立ち去る。

 新聞部室に戻っても、まゆみのイライラは収まらない。
 原稿を書いているときにも、新入部員達がうるさくて集中できず、書きかけの原稿を破り捨てる。
 また、新聞作成にまだ慣れていない五郎に、紙面のうち一段だけを割り当てて、原稿をもっと短く書き直すよう指示したところ、取り巻き達が「横暴だ」「五郎は新聞のスターだ、みんな五郎の記事を読みたがっている」と騒ぎ立てる。
 ついに業を煮やしたまゆみは、「新聞にスターは要らない」と一喝。その剣幕に、静まりかえる部室内。
 そこへちょうど良いタイミングで、ユリが部室に入ってくる。家の庭にテニスコートを作ったので遊びに来るよう五郎を誘う。
 まゆみの怒っている様子を見た五郎は、「いっちょ汗でも流すか」とその誘いに乗る振りをして、邪魔になるばかりの新入部員達を連れて部室を出た後、店の手伝いをするためにユリらと別れて走り去る。
 だが怒り心頭のまゆみは、彼らを見送った後、持っていた鉛筆に八つ当たりしてへし折ってしまう。

 その頃、五郎が預かってもらっている叔父の家「大石酒店」にも、新聞を見た人達から注文が殺到していた。
 叔父は五郎が福の神だと言って喜び、妻から「預かるときは文句ばっかり言ってたくせに」と窘められる。
 そんなところへ五郎が帰宅。ビールの配達に行くことに。

 配達を終えた後も、五郎は新聞記事にするための特ダネを探して夜の街を歩いていた。
 太陽中学の生徒が2人組のチンピラからカツアゲに遭っている場面に出くわし、「爆発だーっ!」と叫んでぶちのめす。
 その場面が新聞に載り、今度は「中学生の乱闘」として悪く報じられてしまう。
 放課後に新聞部室に現れた五郎は、弁解はせずに「腹の立つことがあったから目つきの悪い奴をぶん殴ってやった」とだけ言い、まゆみに退部届を渡して立ち去る。
 校庭から屋上の部室を見上げ「これで新聞部も静かになるな」と呟く五郎。

 新聞部室に残された一平とまゆみは、どちらも五郎について思ったことを言い出せず、どこか気まずい雰囲気になっていた。
 そこへ太陽中学の制服を着た少年が訪ねてくる。
 少年が「昨日五郎に助けられた」と言うのを聞き、思わず顔をほころばせるまゆみ達。
 だが、そんなことは知らず、「いいもんだなあ、インクの匂いってのは」と回想にふけりながら草原に寝転んでいる五郎だった。



 タイトルの回り方がぎこちないのは相変わらず。
 そしてエンディングのクレジットも、残念ながら第1話とまったく同じであった。
 キッズステーション版がスタッフや出演している声優などに関わらず毎回まったく同じ映像だったので、こっちなら放送当時のものを流してくれないだろうかと期待していたが、当てが外れたようだ。エイケン主題歌集DVDに収録されているのも同じなので、もしかしたら、もうどこにもオリジナルのフィルムが残っていないのだろうか。

 この回で気になるのはまず、冒頭の一平。
 帰宅しようとする生徒達に押され、ゲタ箱に頭をぶつけてしまうシーンがある。何故荷物を持って玄関にいるんだ。新聞部はどうした。

 同級生に向かって「俺は記者だ」と威張って見せた五郎だが、実際に部室に行ってみると、その日初めて取材に行くことになっていた。見習いですらないくせに威張るな。w
 そもそも転校してきたばかり、入部したばかりの五郎さえ記者として引っ張り出されることになった、部員減少の理由について何も触れられていない。

 一平の一人称が「俺」になっていたり、人名がごっちゃになっているのは、まだ2話目ということで仕方がない部分もあるものか。
 放送禁止用語が消されずにそのまま残っているのは、一視聴者としては嬉しいが、これが問題になって放送中止なんてことになったら目も当てられん。

 それから注目すべき点は、まゆみの家。立派な門構えで、広い庭もある大豪邸。さすがマスコミとなると給料が違う。
 まゆみと萩野ユリとの対立は、五郎を巡っての争いという他に、もしかしたら家柄争いのような面もあるのだろうか。

 また五郎の乱闘が新聞に載ったとき、文面では「少年A」と名前を隠されていたのに、はっきりと五郎の顔が写っている写真が紙面に大きく載っているというのは。

 余談だが、新聞部室には「新聞部々則」なるものが書かれた大きな紙が貼ってあった。
 内容はというと、

一.自分達の生活をしっかり見めよう
一.身近な出来事をより早く伝えよう。
一.生徒が親しみ楽しく読める生徒のための新聞
一.生徒と先生、家庭を結ぶパイプの役を果す。

…と、いまいちまとまりのない内容。
 本筋とは関係ないが、ちょっと気になる。

(2009/5/16)
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