第1話「豆台風がやってきた」



 学生服やセーラー服の生徒達が行き交う、何気ない朝の通学路。
 だが、その平和な光景の中を、我が物顔でのし歩く5人組の姿があった。
 彼らこそは、青空学園最悪の暴力集団である、柔道部の副部長鬼丸率いるチンピラグループだった。
 鬼丸達の恐ろしさを知る周りの生徒達は、彼らを見ると黙って道を空け、空き缶をぶつけられてもただ引き下がるばかり。

 そんな彼らの行く前に、動じずに立っている一人の少年がいた。
 鬼丸達が怒鳴っても取り囲んでも悠然としている彼に、(    )と放送禁止用語で罵ってから次々と襲い掛かるが、少年は軽く投げ飛ばしてのける。
 新聞部のカメラマン一平は、早速この騒ぎを聞きつけ、倒れている柔道部員達の写真を撮っていった。

 朝のホームルームが始まり、担任が転校生を連れて教室に入ってきた。
 大石五郎というその転校生こそ、朝に柔道部員達をやっつけた少年であった。
 五郎は最初の挨拶で頭を下げるときに教卓に頭をぶつけて見せ、笑いを取ることに成功する。

 やがて昼休みになり、一平は写真を載せる記事のために五郎の所に取材に行くが、五郎はなかなか「ヒーローの談話」に応じてくれない。
 そうしているうち、柔道部長の荒熊が、鬼丸たちに連れられて五郎の所へやって来た。
 部員に代わって朝の礼をするので放課後に柔道部室へ来いという荒熊。その堂々とした姿に、「さすがはキャプテン、今朝の連中とはものが違う」と感心する五郎。

 放課後、一平が止めるのも聞かずに柔道部室を訪れる五郎。五郎は「ケンカをすると決まったわけじゃない、ただ来いと言われただけだ」と悠然と構えているが、一平は助けを呼びに走り出す。
 荒熊に出迎えられて畳の上へと登った五郎に、荒熊はいきなり襲い掛かる。
 五郎は必至に荒熊を説得しようとするが、荒熊は聞く耳を持たず、五郎を投げ飛ばし続ける。
 一向に戦おうとせず身をかわす五郎に、荒熊はとうとう業を煮やし、十八番の技「地滑り」の体勢に入る。
 絶体絶命と思われた五郎だが、荒熊が掴み掛かろうとした瞬間、部室の戸が開いた。一平とまゆみが、柔道部の顧問の先生を呼んできたのだ。
 荒熊もどうにか鎮まり、鬼丸たちは罰として一ヶ月柔道着の洗濯を命じられ、一件落着となるはずだった。

 五郎も手伝ったおかげで新聞は無事に刷り上がり、五郎達は晴れ晴れとした気分で帰路についた。
 だが途中で、まゆみが新聞部室に鍵をかけ忘れたことに気付く。
 急いで戻ってみると、部室内はめちゃめちゃに壊され、出来上がった新聞も破り捨てられていた。
 鬼丸達の仕業に違いないと、五郎は部室を飛び出そうとするが、まゆみが止める。
 まゆみは「向こうが暴力で来ればこっちはペンで戦う」「暴力に暴力で対抗すれば、暴力を認めることになる」と言うが、五郎は「悪い奴は徹底的に叩きのめしてやるのが一番いいんだ」と反論。
 結局二人の溝は埋まらず、納得できない五郎は部室を後にした。
 五郎は校庭から新聞部室の灯りを見上げ、「何が新聞だい、ガリ版キチガイ」と捨て台詞を残して、立ち去ろうと振り返った。

 そのとき、何者かが暗がりから五郎に石を投げつけてきた。
 姿の見えない相手から次々と石をぶつけられ、うずくまってしまう五郎。
 弱ったところを見て鬼丸達が姿を現し、竹刀で殴りかかる。
 最初は攻撃を受けてばかりの五郎だったが、鬼丸に「ままごとみてえに新聞部でデレデレしやがって」と言われ、新聞部はままごとなんかじゃない、と五郎の闘志に火が付く。
「爆発だーっ!」と叫び、全員をあっという間に投げ飛ばす。
 その鬼気迫る様子に、鬼丸達は逃げ去った。

 静まりかえった校庭に一人座り込み、五郎は考え込んでいた。まゆみと一平に言われた言葉、そして新聞部を馬鹿にされて怒った自分のこと。
 思い立った五郎は新聞部室へと戻り、新聞製作を手伝う。
 翌朝、まゆみや一平と共に、さわやかな笑顔を浮かべて新聞を配る五郎だった。



 ついにTBSチャンネルでHDマスター版の放送開始。それに伴い、レビューも書き直し。
 改めて見直すと、新たに気付いた部分も数多くある。

 キッズステーションで放送されたものと比べると、画質はもちろんだが、他にもいくつか違いがある。
 オープニング冒頭の、ドラムロールと共に「ばくはつ五郎」のロゴが回る部分があるが、この動きがやけにカクカクしている。エイケン主題歌集DVD版やキッズステーション版は、この回り方がもっと速く、またもっと外周に近いところまで回っていた。どうやら途中までの部分を抜き出してコマを落としているらしい。理由は不明だ。
 何より驚いたのは、「キチガイ」という言葉が消されずに残っていたこと。「なにが新聞だい」だけでも、ストーリーに不都合は生じないのだが。

(2009/5/9)
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