『ばくはつ五郎』エッセイ17 青空学園
青空学園って?
五郎たちが通う学校「青空学園」。
一体どのような学校なのだろうか。
まず分かっていることは、学校名が「青空学園」であること。
少なくとも中学校があること。
地元の有力者からの寄付金が無ければ、運営資金が赤字であること。
作中に出てくる情報は、この程度である。
そもそも公立なのか私立なのか。
作中に出てくる情報からすると、私立っぽい部分が多い。
例えば、上にも書いたが、経営が赤字で寄付金を得ているなど。自治体の予算で運営されている公立学校なら、こうは行くまい。
また公立学校ならば職員は公務員ということになるが、教頭の赤原が、生徒の親が経営する料亭で接待を受けて生徒をえこひいきするなど、地方公務員法に触れそうな行為も見られる。
そして在籍している生徒は、地元の有力企業の社長令嬢、大手新聞社の部長の娘、全日本でもベストテンに数えられる柔道選手。
また、3年という非常に長期にわたって休学していた細川が復学できたなど、融通がかなり利く印象もある。
初代校長の胸像も建っていた。教育委員会が任命し異動する公立学校の校長ならば、考えにくいことだ。
こうした点からは、学校法人であり私立であると考えた方が自然である。
さて、それでは。
父親を亡くし、遠いところにいる叔父の家に引き取られた五郎については、引き取るときに文句ばかり言っていた叔父が、わざわざ私立の学校へ入れてくれたのだろうか?
五郎だけでなく、第13話で転校してきた森田もそうだ。両親を亡くして入院中の祖父のところへ来たという、とても私立学校の学費など払えるとは思えない境遇にあった。
当時の転校にまつわる状況がどうだったのかは分からないが、どうにも不自然である。
それはひとまず置いて。
学校名の「学園」も、実は気に掛かる。
Yahoo!辞書で「学園」を引くと
、「学校。現在では、下級から上級にわたるいくつかの学校から成る組織をいう場合が多い」とある。
では青空学園には、五郎が在籍している中学校の他にも学校があるのかというと、これが作中にはまったく出てこない。
高等部や小学部もあるのかも知れないし、無いのかも知れない。しかし、「青空学園中等部」などという呼び方をされていないことを考えると、無い可能性が高い。
だが、果たして中学校のみの私立学校というのは、存在するのだろうか? 少なくとも筆者は知らない。
生徒の卒業後の進路はどうなのだろうか。
まゆみやユリは、高校へ進学するものと思われる。恐らく成績も良い方だろう。
かと思うと、当時の情勢では中学校を卒業してそのまま就職だろうと思われる生徒も、数多くいる。そもそも父親のかわりに働いているなどという中学生が何人か出てくる。
そのどちらも、クラス分けをされることもなく、同じ教室で机を並べて勉強している。
ということは、進学コース・就職コースなどには分かれていないという推測が成り立つ。
ちなみに文部科学省の資料によると、
昭和40年における中学校卒業者の進路
は、高等学校等進学者が70.7%、就職者が26.5%と、就職者が四分の一を越えており、決して珍しい存在ではなかった。できれば「ばくはつ五郎」の舞台である昭和45年の数字が欲しいところだが、作中の様子を見るに、それほど急激には減っていないことだろう。
どうにも、考えれば考えるほど、分からなくなる学校である。
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