北海道の方言(その1) 2002年1月14日UP
どこの地方にも方言があります。北海道も例外ではありません。
北海道に住んでいた頃、いろいろな方言を聞いたり使ったりしたはずなのですが、約20年前に東京に来てから方言を使わないように気をつけていたので、いつのまにか使えなくなってしまいました。でも、使わなくなった今だからこそ分かることもあります。子供の頃に聞いたり使ったりした方言を思い出し、私の勝手な解釈を加えて紹介することにします。(たくさんあるので、2回に分けて書きます。)
しばれる
ひどく冷え込むこと。北海道の特色を表した方言であるが、最近では全国的に知られているようである。数ある北海道方言の中でも出世頭と言えるだろう。
ただし、本来「しばれる」は北海道の冬でも特に寒さが厳しいときに使われる言葉なので、薄い氷が張ったくらいで使ってはいけない。たとえば玄関を開けて冷たい外気に触れたとたん、顔がちくちくと痛み、息を吸えば鼻毛が凍って鼻の穴がふさがるくらいでなければ「しばれた」うちには入らないのである。だから北海道ほど寒くないところで使うのは邪道と言わなければならない。
あずましい
とても落ち着いて気分が良いというような意味。住み慣れた我が家が一番「あずましい」ものである。静かでのんびりできるときは特にあずましく感じる。逆に、うるさかったり、物が散らかっていたりすると、「あずましくない」と否定形になる。たとえば明日までの宿題など、気になることがあって落ち着かないときも、「あずましくない」のである。
首都圏の満員電車は、すぐに逃げ出したくなるくらい不快であるが、あれは「あずましくない」で表現できる範囲を超えている。あんなにひどい場所は北海道にはないからである。
みったくない
かわいいはずの子供や美しいはずの女性にとって、最もおそろしい言葉。最大の侮辱表現である。「見たくない」から転じたのではないかと想像され、「かわいくない」とか「美しくない」というような意味であるが、これらよりも圧倒的に強い否定を感じざるを得ない。
言われた人は救いようがなくなるくらい傷つくこともあるので、使うときは注意が必要である。それを承知のうえで使うときは、つまる音の「っ」の部分に気持ちを込め、ここで一瞬息を飲むようにして発音すると良いだろう。ただし、その結果としてどんな目にあっても私は責任を負えないので、その点はご了承いただきたい。
なお、「みったくない」は形容詞であり、そのような状態であるものを「みったくなし」とも言う。
こわい
この言葉は、標準語と同じように「恐ろしい」という意味でも用いられるが、それだけではなく、「疲れた」という意味でも使われる。だから、ジョギングをするとライオンに追いかけられたわけでもないのに「こわい」し、身体をたくさん動かせば、たとえそれが楽しい遊びであっても「こわい」のである。それから、風邪を引いて身体がだるいようなときも「こわい」のである。病気で寝ている人がこの言葉を使った場合、決して恐ろしい夢を見ているとは限らないことに注意しなければならない。
なげる
標準語の「投げる」という意味だけではなく、「捨てる」という意味でも使われる。北海道では、ゴミは投げるものなのである。
きっとこれは、「投げ捨てる」という言葉を短くしたものに違いない。「投げ捨てる」という表現からは、目の前から一刻も早く消え去ってほしいという強い気持ちが感じられる。そっと捨てるのではなく、目の届かないところまで放り投げて捨てなければ気持ちがおさまらないのである。「投げる」もこれと同じである。それに対して、「捨てる」で表現される物には、まだゴミになりきれていないようなもどかしさを感じてしまう。投げ捨てることに未練が残っているようで、いさぎよくないのである。
もしも北海道で「そこの○○を投げてくれ」と言われたときは、○○を拾ってその人に投げてあげるのか、それとも捨てるのか、そのつど的確に判断する必要にせまられる。そのとき、○○の価値だけではなく、投げてあげた場合に相手が受け取れるのかどうかも考えなければならない。重いタンスを投げつけられた相手はケガをしてしまうので、力持ちの人は特に気をつけてほしい。
なお、北海道でも、野球のピッチャーはボールをキャッチャーに投げているのであって、いつもゴミ箱に捨てているわけではない。そんなことをしていたら、ボールがいくつあっても足りなくなるし、バッターはいつまで待っても打てないのである。
なして
「なぜ?」とか「どうして?」と問うときに使う。この言葉は、「なぜ?」の「な」と「どうして?」の「して」とがくっついてできたものと考えられる。二つの同じような意味の言葉の一部を切り取って結びつけたところに、北海道弁の強引かつ思い切りの良さを感じることができる。まことに味わい深い言葉である。
とうきび
畑から穫ってきてすぐに茹でて食べる「とうきび」のおいしさは格別である。収穫から数日後に東京のスーパーに並べられたものは「とうもろこし」と呼ばれ、「とうきび」と比べると味が落ちてしまっているのは否めない。
やめれ
標準語では「やめろ」。命令形の語尾が変なのである。これと同じようなものは、起きれ(起きろ)、あきらめれ(あきらめろ)、考えれ(考えろ)など、枚挙にいとまがない。標準語のように語尾を「ろ」にすると、なんとなく気取った言い回しに聞こえてしまうのである。
これで十分に意味が通じるのだが、なぜか後ろに「や〜」をつける人もいて、これを聞くと北海道を満喫することができる。つまり、「やめれや〜」、「起きれや〜」、「あきらめれや〜」、「ちゃんと考えれや〜」などである。
もうすぐ発売されるATOK15は関西弁に対応するらしい。北海道弁にも早く対応しれや〜。
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