キヨハラソフトを使う楽しみ

2000年9月14日 UP

 

 ソフトレンズを使うと、かっちりとピントが合った写真ではなくて、その名のとおり、ソフトなふんわりした描写を得ることができます。普通のレンズでもソフトフィルターを使えば似たような効果を得ることができますが、ソフトな描写の美しさはソフトレンズに一日の長があるように思われます。いろいろなメーカーがソフトレンズを製造していて、それぞれ特徴があるようです。

 

 私が持っているのは、キヨハラというメーカーの焦点距離が70mmのレンズです。このソフトレンズで撮った芙蓉の写真をUPしたところ、掲示板でいろんな感想をいただきました。このキヨハラのソフトレンズは、「オート」という言葉とは無縁のレンズで、他のレンズや他のメーカーのソフトレンズでは経験できないマニアックな特徴があります。

 

 それでは、このレンズの特徴を紹介していきましょう。

 

 まず最初に、ピント合わせは、MF(マニュアルフォーカス)しかできませんので、ピントリングを手で回して調整します。距離目盛りの数字がついていないし、ピントの微妙な外し方が描写のポイントなので、ファインダーで画像を確認しながら調整します。ちゃんとピントが合った状態(それを見つけるのが難しいのだけれど)よりもほんの少しだけ手前にピントを外すのが、きれいな描写を得るコツだそうです。

 

 そして、なんと無限遠よりもさらに遠い物にピントを合わせることだってできてしまうという優れものです。心ある方は、はたして世の中に無限遠よりも遠い物があるのだろうかとか、なぜそんなことができる必要性があるのかなどという質問は、どうかご遠慮ください。

 想像をたくましくすれば、例えば、片思いの相手の心は無限遠よりも遠いのかもしれません。そこにピントが合うなんて、ひょっとすると何物にも代えがたい素晴らしいレンズなのかもしれないし、見ちゃいけないものを見てしまって後悔するレンズなのかもしれません。

 

 ピント合わせだけではなく、絞りだってマニュアルです。それも、普通のレンズのようにカメラ側で調整するのではなく、レンズの先端についている絞り羽根を指で回して調整するのです。最近のレンズでは味わえないこのマニュアル感覚が最高です。絞りは無段階なので、f7とかf9なんていう、へんてこりんな絞り値も可能です。いつも使っているf5.6とかf8とかに飽きてしまったときに最適と言えるでしょう。つまり、固定観念にとらわれない自由さを思う存分味わうことができるのです。

 

 絞りによってソフト加減が変わるので、絞りとピントの調整をファインダーを覗きながら完全マニュアルでやらなければなりません。絞りを動かすと、それにつれてファインダーから見える画像のソフト効果が変化します。そして、ファインダーで見たはずの画像と現像された結果とが同じとは限らないという、開けてびっくり玉手箱的な予測不能なおもしろさがあることも、このレンズを使う醍醐味と言えます。(ただし、これは単に私の画像記憶能力が不十分であることが原因となっている可能性を否定しきれません。)

 

 なお、絞りを指で回して調整するため、露出をカメラに任せるプログラムオートは不可能であって、絞り優先モードしか使えません。この禁欲さがたまりませんね。(笑)

 

 そしてもうひとつ、露出についての注意点があります。前のカメラで使ったときはなんともなかったのですが、なぜか今のカメラで使うと、AEの基準が1.5〜2段くらいずれてしまうので、フィルムのISO設定を変更して使っています。このことを忘れたり、またはキヨハラソフトを使った後にISO設定を元に戻すことを忘れてしまうと、あとで思いがけない悲劇(場合によっては喜劇のことも…)を楽しむことさえできるのです。このような楽しみは、カメラによっては対応していない機種もあるようですので、お買い求めの際には十分にお気をつけください。あっ、このことは実際に使ってみて初めてわかることなので、お買い求めの際に気をつけることは不可能です。買ってみてからのお楽しみですね。(笑)

 

 いよいよ最後に紹介する楽しみです。カメラ側がこのレンズを正当に認識しないため、フィルムが入っていてレンズが装着されていないときにシャッターが切れないようになっているカメラの安全機能を解除しないとシャッターが押せないという「裏技」もちゃんと用意されています。この解除の方法はカメラの説明書に書かれていないので、まさに裏技なのです。なんと奥が深いのでしょうか!

 この裏技を当然にして知らなかった私は、首を傾げながらレンズを買ったお店を再び訪問し、お店のおじさんも原因がわからなかったために、私と同じように首が傾いてしまい、幸いお店の近くにあったミノルタのサービスセンターに行って、そこでようやく首がまっすぐになったという、一生忘れられない思い出もあります。

 

 ねっ! おもしろいでしょう〜!

 こんなにたくさんの楽しみを与えてくれるレンズが、ほかにあるでしょうか?

 あなたも使ってみたくなりませんか?

 

 

(追記)

 MF専用カメラで使われているファインダーの真ん中でピントを合わせやすくしているマット面(ピントが外れていると像が二重になって、ピントが合うと像がぴったり重なるファインダーです。)は、このレンズには向いていません。これはレンズの説明書に書いてあったことです。おそらく、そのようなファインダーでは、ソフト加減を確認しにくいからだと思います。

 

 

(注意)

 以上のことは、ミノルタのα507siというカメラで使った場合のことです。そのほかのカメラで使う場合のことはわかりません。想像を超えた楽しみが隠されているといいですね。

 

 


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