α507からα7へ

(α7の使用レポートのようなもの)

2002年12月31日UP

 最近まで、ミノルタのα507si(以下、「α507」と記述します。)をメインのカメラとして使っていました。私にとって2台目の一眼レフカメラで、約7年間も同じカメラを使っていたことになります。私のHPに掲載している写真の大部分は、このカメラで撮ったものです。α507は、いわゆる高級機ではなく、一眼レフカメラとしては安価な機種ですが、私にとって最低限必要な機能はちゃんと揃っていて、使いやすいカメラでした。コストパフォーマンスを重視する人にお勧めのカメラです。

 しかし、オートフォーカス(AF)とマニュアルフォーカス(MF)を切り替える機能が故障してしまい、AFが使えなくなってしまいました。MFでもピントを合わせることができるし、マクロ撮影ではMFの方がピントを合わせやすいくらいなので、そのまま修理にも出さず使っていたのですが、やはりAFも使えた方が便利です。それに加えて、最近はシャッターボタンの調子が悪くて、うんと深く押し込まなければシャッターが切れなくなっていました。カメラも歳をとると鈍感になるということがわかりました。

 そんなわけで、α7の購入に至りました。α7は2年前に発売されてからとても評判が良くて、次に買おうと思っていたカメラです。新しいα7で最初に撮ったものは、今までお世話になったα507です。いつも撮るばかりで撮られるのは初めてだそうで、ちょっと緊張していたようです。お勤めご苦労様でした。

今まで使っていたα507α7で撮影

(90mmマクロF2.8 f8 -0.5補正)

 α7ではまだ数本のフィルムしか撮っていないのですが、気に入っている点や改良してはどうかと思われる点などを書いてみました。気に入っている点と言っても今まで使っていたα507と比べてのことなので、皆さんがお持ちのカメラでは既に可能なことばかりかもしれませんが・・・。

1.AF

 α7の中央の測距点にはデュアルクロスと呼ばれる2つのクロス型センサー(+と×)が重なっているセンサーが使われているせいか、α507に比べるとAFでピントを合わせやすいようです。カスタム設定で、速いAFと遅いけれども迷いにくいAFのどちらかを選べるようになっているので、後者を選んでみたら、AFがさらに合いやすくなり、迷って行ったり来たりすることがあまりありません。

 なお、オートフォーカス(AF)のスピードが大きく向上したとか、ピント合わせのセンサー(測距点)が9点に増えたというのがα7の売り物になっていますが、私にはあまり関心がありません。ピントを合わせたい部分に必ず測距点があるわけではないし、測距点の場所によって構図が影響を受けるようなことは断じて避けるべきですα507と同じくらいのスピードでも、測距点が1カ所でも、しっかりとピントが合うAFならばそれでOKです。

2.AFとMFの切り替え

 カメラをマニュアルフォーカス(MF)に設定しておいて一時的にAFにするとか、その逆にAFに設定しておいて一時的にMFにすることが簡単にできます。カメラ背面のボタンを右手親指で押せば良いのです。私のα7はMFに設定してあり、その状態でカメラ背面のボタンを右手親指で押すと、AFでピントを合わせてくれます。この機能は、次のような私の撮影スタイルにぴったりです。

(1) 最初に、構図をだいたい決めて、MFでだいたいのピントを合わせます。その状態で絞りと露出補正値をセットします。(露出補正については4と5のところでも書きます。)

(2) マクロ撮影の場合は、そのままMFでファインダー内でピントをしっかり合わせ、シャッターを押します。しかし、離れた被写体ではAFも使えた方が便利です。ピントを合わせたい部分に測距点を合わせ、右手親指で背面ボタンを押すと、AFでピントが合います。

(3) 次に、元の撮りたい構図に戻します。じゃまな物が写らないかとか、本当にその構図で良いかとか、念のためにもう一度ファインダーを覗いてチェックし、構図の微調整を行います。もしも構図が元の状態から変わった場合は、露出補正も変えなくて良いかどうか、もう一度考えます。

(4) シャッターを切ります。ここで何も操作しなくても自然にMFに戻ってくれているのがうれしいところです。もしもシャッター半押しのときにAFが動いてしまったら、それまでの準備が台無しになります。露出に自信があるときを除き、露出補正値を変えて、さらに1〜2枚、シャッターを切ります。

 それから、カスタム設定で、DMFモードというのを選ぶこともできます。これは、AFでピントを合わせた後、レンズのピントリングを回してMFでピントの微調整を行うことができるというものです。これも使い方によっては便利だと思います。

3.ファインダー

 ファインダーの善し悪しはカメラ選びの重要なポイントです。MFでピントをしっかりと合わせられるかどうか、そして、ボケの具合がしっかりと確認できるかどうかが重要で、ファインダーの性能に大きく影響されます。α507も価格の割には良いファインダーだと思いますが、ファインダー倍率がα507の0.75倍に対してα7は0.8倍なので、α7の方が大きくて見やすいです。

 なお、α507と同じようにα7のファインダーの視野率は100%ではありません。この点について不満な人も多いかもしれませんが、私は気にしていません。視野率100%だと、マウントに隠れてしまう部分があるので、かえって困るようにも思います。(これは、スリーブの状態とマウントの状態のどちらを最終形と考えるかによるのではないでしょうか。ちなみに私はマウント派。。。)

4.露出補正

 α507はカメラ上部左側のダイヤルを回して露出補正を行うため、ファインダーから目を離さないと露出補正がやりにくいです。手持ち撮影のときは露出補正値を変えるたびに構図を作り直さなくてはなりませんでした。α7は右手親指で後ろのダイヤルを回して露出補正を行うように設定できるので、ファインダーから目を離さずに露出補正ができるようになりました。これは常識的な機能なので、ようやく普通のカメラに追いついたと言えます。

 α507の露出補正は±0.5刻みだけでしたが、α7は±0.5刻みと±1/3刻みのいずれかを選択できます。これはとても良いことで、もしも±1/3刻みだけだと困るところでした。私は±0.5刻みで十分だと思っています。今まで±0.5刻みで露出補正を行ってきた経験では、例えば補正なしと+0.5とで撮った場合、補正なしでは暗すぎて+0.5では逆に明るすぎ、その間でなければならなかったというようなことがないのです。+0.5でも暗すぎ、もっと+側に補正すべきだったということはときどきありますが、±1/3刻みの場合はそのような危険性が増します。±1/3刻みだと、±1/3では足りなくて±2/3でも撮っておかなくては心配になるケースが多くなることでしょう。慣れの問題だとは思いますが・・・。

5.輝度分布表示

 カメラの背面にある液晶の輝度分布表示が便利です。こんな図が現れます。α7はカメラの背面にとても大きな液晶があって、それだけ見るとまるでデジカメのようです。大きな液晶があるおかげで、このような表示が可能となりました。

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 そのとき撮ろうとしている構図の中で、各部分が基準の露出に対してどれくらい明るいか又は暗いかがこれを見れば一目瞭然です。これを参考にして露出補正値を決めることができます。買う前は、この機能がとても便利ではないかと思っていました。しかし、なんと、+0.5、±0、−0.5はすべて同じ表示になってしまうではありませんか。±1以上の違いがなければ違いとして表示されないのです。明るすぎて色が飛んでしまったり、暗すぎて色がつぶれてしまったりというような、露出の大きなずれは避けることができます。しかし、露出の微妙な調整には力不足です。+0.5、±0、−0.5の違いも含めて各部分の明るさを知るためには、背面のAELボタンを押したままカメラを振って、ファインダーの真ん中の部分を合わせ、そこでファインダー下部のインジケーターを見ることになります。これはこれで便利な機能なのですが、α507と同じであって、進歩がありません。

 それと、上図のような輝度分布情報を表示させるためには背面の2カ所のボタンを押さなくてはなりません。ちょっと面倒なので、1カ所だけ押せば表示されるようにしてもらいたいです。

6.簡易ミラーアップ

 望遠レンズでシャッタースピードが遅くなってしまうとき、三脚とレリーズを使っても、カメラぶれが起きてピントが合わないことがあります。私もときどきこれで失敗します。この最大の原因はシャッターを切る直前のミラーショックによる振動なので、シャッターを切る前にミラーアップさせ、振動がおさまってからシャッターを切れるようにすれば改善できます。いわゆるミラーアップ機能です。

 α7には、ミラーアップして2秒後にシャッターが切れる簡易ミラーアップ機能があります。先日UPしたこの写真はα7の簡易ミラーアップを使って写しました。三脚を使っていますが、レンズの焦点距離は250mmとかなりの望遠で、シャッタースピードは0.7秒と遅く、しかも縦位置の写真というぐあいに、カメラぶれが発生しやすい条件が揃っています。今までの経験から考えると、かなりの確率でぶれるケースです。もっと重くてしっかりした三脚を使うとか、カメラとレンズとの両方を三脚と一脚で支えるというような方法でぶれを防ぐことも考えられますが、これはなかなかたいへんなことです。簡易ミラーアップで写したこの写真は全くぶれていませんでした。とてもうれしい機能です。(比較のために簡易ミラーアップを使わずにもう一枚写しておけば良かったと、後になってから気づきました。そのうちにやってみたいと思います。)

7.プレビュー

 ボケの具合を確認するために、脳波検査・・・ではなく、プレビュー機能が必要です(^^;。α507にもプレビュー機能がありますが、プレビューボタンを押したままで絞りを変えることができませんでした。一度プレビューボタンを離してからでなければ絞りを変えることができなかったのです。α7は、この点が改善されました。

 しかし、α7のプレビューボタンは押しにくいです。「押してもだめなら引いてみな」と言いますが、引くことはもっと難しいし、無理に引いても壊れるだけだと思います。(笑)。ファインダーを覗きながらプレビューボタンの場所を指先で探し当てるのがとても難しいのです。この点ではα507の方が優っていました。α7のプレビューボタンのところに何か指で触ってわかるような物を張り付けてみてはどうかと考えています。

8.裏蓋ロック

 フィルムがまだ入っているのに間違えてカメラの裏蓋を開けてしまい、それまでに撮ったカットを台無しにしてしまうという失敗を何度かやったことがあります。こういうときに限って、カメラには人生最大の「傑作」が入っているものです。逃がした魚は大きいのです。

 しかし、α7では大丈夫です。フィルムが入っている状態では、フィルムの巻き上げが終わっていない限り、裏蓋を開けようとしても開けられないようになっています。でも、本当にそうなのでしょうか? このレポートを書くために試してみました。初めて試すときはこわいものですね。おそるおそる試してみたところ・・・、開きませんでした。うっかり者の私にとっては、とても便利な機能です。

9.データの記録

 フィルム7本分の一枚一枚の写真の撮影データがカメラに自動的に記録され、それを背面液晶に表示させることができます。記録されるデータは、撮影年月日、時刻、レンズの焦点距離(ズームレンズの場合は撮影したときのおおよその焦点距離)、絞り、シャッタースピード、露出補正値などです。これでデータをメモする必要がなくなりました。

 データセーバーというものを買い、レンズの代わりにカメラに取り付けると、フィルム400本分のデータを記録できます。そのデータをパソコンに取り込むこともできるそうなので、パソコンに取り込めば、記録できるデータ量は実質的に無限と言えます。でも、データセーバーは定価が25000円もします。カメラから直接パソコンにデータを取り込めるようにすれば、データセーバーも不要ですし、もっと便利だっただろうと思います。

 それから理想を言えば、フィルムの枠外にデータが書かれるようにしてもらいたいですね。場所が狭いということなら、レンズの焦点距離、絞り、シャッタースピードだけでも良いです。

10.STFモード

 ミノルタには、135mmSTFレンズというボケの美しさにとことんこだわったレンズがあります。作例を見ると、ボケが柔らかいながら芯があるような印象を受けます。しかし、素晴らしいレンズは値段が高いという当たり前でありつつもたいへん残念な法則があって、このレンズも例外ではありません。

 α7には、135mmSTFレンズと同じような(同じようであっても、おそらく同じではない)描写を普通のレンズで行う機能があります。レンズの絞りを変えながら7枚の多重露光をするのだそうです。ですから、止まっている被写体を三脚を使って写す場合に限られます。まだ試してみたことはないので、これがどのような描写をもたらすのか、まだわかりません。(S)すばらしく、(T)とんでもなく、(F)ふるえがくるような描写を期待して、そのうちに試してみたいと思います。

11.その他

 シャッタースピードが速くなりました。α507の最高1/4000秒に対して、α7の最高は1/8000秒です。しかし、私は1/1000秒よりも速いシャッタースピードを使うことはほとんどないし、α507の1/4000秒で不足を感じたことは一度もないので、この性能は無用の長物となる可能性大です。

 また、測光システムは、14分割ハニカムパターン測光、中央重点的平均測光、スポット測光の中から選ぶようになっていて、これはα507と変わっていないようです。


 

<とりあえずの採点>

 以上の項目についてα7の現時点での採点をしてみます。10点が満点、α507と変わらなければ5点です。(使い続けるうちに新たな発見があって、採点が変わる可能性があります。また、私にとっての採点ですので、被写体の種類や撮影方法が違えば、点数も違ってくると思われます。)

項目

点数

コメント

裏蓋ロック     

10点

 間違って裏蓋を開けてしまうという致命的な失敗を完全に防ぐことができるこの機能は素晴らしい。簡単なことのように思われるが、これ以上は望めない。文句なしの10点満点!!

AFとMFの切り替え

9点

 とても便利になったので高得点。ボタンが小さくてちょっと押しにくいので1点減点。(このボタンを大きいものに変更するカスタムサービスがあるらしいので、もう少し使ってみてから考えようと思う。)

簡易ミラーアップ

8点

 今まで悩みだったミラーショックによるカメラぶれを解消することが可能となった本格的なミラーアップなら9点。ミラーショックが全くないカメラが開発されれば10点。(C社の一部機種で採用されているペリクルミラーは、ミラーショックがないけれど、フィルムに届く光が減少するので10点満点とは言えない。)

 AF

8点

 中央の測距点はAFが迷いにくく、ピントを合わせやすくなったようだ。測距点が9点に増えたことと、AFスピードが速くなったことは、世の中の評判は良いのかもしれないが、私にはあまり関心がない。

データの記録

8点

 これによりデータのメモをとる必要がなくなった。背面の大きな液晶は、データを読むときにも好都合。パソコンへの取り込みが簡単にできるようになるか、それとも主要なデータだけでもフィルムの枠外に書かれるようになれば、さらに点数アップ。

ファインダー

7点

 大きく見やすくなったが、店頭で覗いたα9のファインダーには負けているような気がする(価格から考えて当たり前。。。)。ファインダーの中に9点もある測距点は、私にとっては目障りなだけなので減点対象。

露出補正

7点

 露出補正を後ろダイヤルでできるようになったが、普通のカメラに追いついただけという見方もある。なお、適正露出を得るための露出補正という行為自体が不要にならない限り、10点満点はつけられない。(ただし、撮る人が意図的に実際よりも明るくしたり暗くしたりするための露出補正は、どんなに技術が進歩しても必要。)

輝度分布表示

6点

 背面液晶の輝度分布表示は期待が大きかっただけに、その反動で採点が厳しくなってしまった。露出補正値を決めるためには結局、α507にもあった測光インジケーターを使うことになりそう。発想は良いので、さらなる改良が望まれる。

シャッタースピード

5.5点

 5点にしようかと思ったが、1/4000〜1/8000秒のシャッタースピードを使う可能性がゼロとは限らないので、おまけで0.5点プラス。

プレビュー

5点

 機能的に改良されているものの、押しにくいところが減点対象。結果的にα507と比較して±ゼロ。

STFモード

 まだ使っていないので採点不能。


 

(参考1) α7の詳細を知りたい人は、

 ミノルタのこちらのページをご覧下さい。(pdfファイルで重いです。)

(参考2) レンズとの相性について

 α507では使えたのにα7では使えないレンズがあります。さすがにミノルタのレンズは大丈夫ですが、シグマのレンズがあぶないようです。私が持っているシグマのレンズでは28〜70mmF2.8-4と24mmF2.8は問題なく使えたものの、300mmF4を装着するとα7は全く操作不能になりました。これはカメラとレンズとの間でやりとりする電気信号の問題だそうです。シグマでは無料で修理してくれます(送る場合は送料を自分で負担しなければなりません。) 


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