破壊神が幻想入り。 作:紅嬢妹 朔夜 警告! ・この作品は、東方Projectの二次創作です。 ・この作品は、「ロックマンゼロシリーズ」との2次創作クロスノベルです。 ・東方キャラ及びロックマンゼロシリーズのキャラが皆様のイメージとかなり違うかもしれません。 ・というかキャラ崩壊もイイトコです。 ・俺設定ありありです。 ・この物語はフィクションです。 ・この物語は駄文です。 ・この物語に登場する“ゼロ”はロックマンゼロ4以降のゼロですが、作者の趣味により使える技は「ロックマンX4」より引用しています。 ・この物語に登場するゼロの武器は正式名称は「ゼットセイバー」ですが、作者の趣味により「ビームサーベル」と表記されています。 ・それでも良い! と言う方のみ読み進めてください。 ・二次創作や、上記の設定などに嫌悪感を抱くおそれのある方は、ブラウザの「戻る」で引き返しておく事をオススメ致します。 ・ストーリー自体の進展は無いので読み飛ばし上等です。 ・魔理沙はみんなの魔理沙です。 Vol.14 〜魔法の森・魔理沙の家〜 意外に思うかもしれないが、霧雨魔理沙の朝は早い。 夜が明ける前から起きて軽い朝食を済ませ、森で魔法のキノコをはじめとしたマジックアイテムの素材を採取する。 採集から帰るとすぐにアイテムの精製に入り、それが終わると集めた物や作ったアイテムを持って色んな所へ売りに出かける。 そんな中でたまに寄り道をして、顔馴染みと他愛のない話をするのが、彼女の一日の楽しみなのだ。 そうして一日の大半を外で過ごし、何だかんだと帰ってくるのは真夜中。 遊んでいるようで彼女なりにしっかり自活しているのだ。 故に、驚く事もある。 たとえば、普段は人も寄り付かない彼女の家にいきなり来客があるというのがその1つだ。 尤も、上記のとおりのライフサイクルでは、仮に来客があっても彼女はほとんど留守である。 だからこそ、アイテムの精製を終えて出かけようとした丁度その時、家の呼び鈴が鳴った事を意外に思ったのだ。 「はいはい、こちら霧雨魔法店。生憎今から出かけ…」 「元気そうだな、魔理沙」 扉の向こうに居たのは、それはそれは意外な人物だった。 「よぉ、ゼロじゃないか! くたばったって聞いてたけど直ったのか!」 「俺が死んだら、お前がリベンジを果たせないだろうと思ってな」 「よく言うぜコノヤロー。次は徹底的にとっちめてやるぜ!」 相変わらずの調子で軽口を叩く魔理沙。 その瞳がゼロの後ろの人影を捉える。 「魔理沙、おはよう!」 「よぉ、今日はフランも一緒か。ホントに珍しい日だぜ」 フランの背中をバシバシ叩きながら魔理沙が大声で笑う。 「で、お前ら今日は一体どうしたんだ?」 「あ、うん。実はね…」 少女説明中… 「成程、それで霊夢の所に」 「うん…」 「…なるほどねぇ」 ゼロとフランを交互に見ながら、含んだ言い方をする。 尤も、魔理沙で無くとも気付くだろう。 ゼロの事を楽しそうに話すフランの表情が、博麗神社へ行くくだりになってから見る見る暗くなっていくのだ。 気付かない方がどうかしている。 「そういや、どうして私の家を知ってたんだ?」 「美鈴に聞いた。どうせ森を行くなら寄ってみたらどうかと」 「そっか。折角で悪いんだが、私はこれから… っと、そうだ!」 ふと、魔理沙が思いついたように手を叩く。 「なぁ、2人とも急ぐ旅じゃないんだろ? なら、ちょっと付き合ってくれないか?」 「わ、私は別に構わないけど… ゼロは?」 少々不安そうに、フランがゼロの方を見る。 前回も湖で時間を取らせてしまったという負い目を感じての事なのだが、それは杞憂に終わる事になる。 「俺も構わない。お前には借りもある」 「気にすんなって。いちいち借りとか貸しとか、面倒だぜ」 そう言ってニカッと笑う魔理沙にゼロも表情を崩す。 「さぁ、そうと決まれば善は急げだ! ゼロ、まずはお前を知ってる奴の所だ!」 「俺を知っている…?」 「まぁ、来れば判るさ」 そう言いながら何処からともなく箒を取り出すと、それに跨る魔理沙。 「フランは自力で飛べるな? ゼロ、お前は後ろに乗りな」 「良いのか?」 「良いも何も、お前に合わせて歩いてたらあっという間に一日が過ぎちゃうぜ」 魔理沙の言葉に納得しつつ、魔理沙の後ろに腰かける。 「良いなぁ、ゼロ」 その様子を何だか羨ましそうに見ているフラン。 「まぁまぁ。後でお前も乗っけてやるよ」 「ホント?! やったー!」 どうやら、箒に乗ってみたかったらしい。 「さぁ… 行くぜ!」 刹那、箒からジェット噴射のような炎が飛び出したかと思うと、あっという間に魔理沙とゼロは高く遠く飛び上がっていた。 「あ、ま、待ってよ〜!」 そして、その2人を懸命に追い掛けるフラン。 「おい魔理沙、スピード…」 「あ? これでも落してる方だぜ? お前案外乗り物弱いのか?」 「そうじゃない。これじゃフランが俺達を見失う」 「おっと、そうだったそうだった」 てへっと舌を出して笑いながら、箒を減速させる。 しばらくしてフランが追いついてきた。 「もう! 迷子になるかと思ったじゃない!」 「あっははは、悪い悪い。ゼロを楽しませてやろうと思ってつい、な」 ウインクしながら謝る魔理沙に「もう、しょうがないなぁ」と笑いかけるフランはそれはそれは可愛かったという。 「ゼロ…」 不意に、魔理沙がフランに聞こえない程度の小声で話しかけて来る。 「何だ?」 「有難うな」 「…何がだ?」 「フランの事さ。私も、フランの事は何とかしたかったんだ」 「お前…」 少しだけ、憂いを帯びた笑みを溢す魔理沙。それは、ゼロが今まで見た事の無い魔理沙の顔だった。 が、すぐに元の不敵な笑みに戻る。 「しっかしよくやるぜ! 文字通り命懸けでフランを解放するなんてな!」 「別にお前に礼を言われる事じゃない。俺は俺で、勝手にやった事だ」 フッと笑いながら答える。 「ねぇねぇ、何話してるの?」 と、フランが割って入ってくる。 「ゼロがお前にべた惚れって話さ!」 「な、なななな何言ってるのよもう! ゼロのバカァーッ!」 途端に耳まで真っ赤になったフランが、絶叫しながらもの凄いスピードで飛び去ってしまう。 「…何故俺?」 「かっかっか♪ ありゃあフランも満更じゃないぜ」 「…で、どうするんだ?」 「そうだなぁ、取り合えず… 追いかけるぜ!」 叫ぶや、魔理沙が箒に力を込める。 それに呼応するように、再び凄いスピードで飛翔する。 「殺人的な加速だ…」 ゼロの呟きすら、置き去りにして。 〜魔法の森・マーガトロイド邸〜 意外に思うかもしれないが、アリス・マーガトロイドは人との交流が多い。 元々人形使いという魔法の形態上指先の器用な彼女は、人里に赴いては人形作りの仕事を受けて来る。 その見返りとして幾らかの金銭と食材、そして布や糸、針などを分けてもらう。 先日も人里で、お世話になっている先生へプレゼントがしたいという寺子屋の子供達に頼まれて「等身大もこたん人形」を作ったばかりである。 尤も、流石にその時ばかりは報酬は受け取れなかったが。 まぁ、事の顛末が人里を治める稗田阿求の耳に入り、当分食材や人形作りに必要なものを分けてくれるとの事なので、結果オーライだが。 ただ、居を構えるのが魔法の森という場所上、人は滅多に来ない。 仕事は大抵、アリスが人里に出た時に受けて来るからだ。 故に驚く事もある。 そんな、普段人が訪れる事の無い自分の家に来客があった時などがそうだ。 とはいえ、それも大抵は魔理沙だったりするのだが。 「ようアリス! 居るんだろ? ちょっと茶を飲みに来たぜ!」 「はぁ… アンタねぇ。家は喫茶店じゃ… あら貴方?」 だから、今日自分の家の呼び鈴を押したのが魔理沙である事は驚かなかったが、同行者がいた事には内心驚いていた。 「魔理沙、彼女は…?」 「魔理沙、この人だぁれ?」 「ゼロ、フラン。紹介するぜ。こいつはアリス。私と同じ魔法使いだ!」 「フラン… フラン…? フランドー… って、魔理沙?! まさかその子!」 「ん? あぁ、レミリアの妹だぜ?」 何でもないかのようにさらりと言う魔理沙だが、対してアリスは内心気が気ではなかった。 紅魔館に幽閉されし悪魔の妹の名は、それだけ幻想郷に知れ渡っているのだ。 「ほらフラン、アリスに挨拶しろよ」 「う、うん…」 魔理沙に促され、一歩前に出て来る。 「は、初めまして。フランドール・スカーレットです。よろしくね」 「人形使いのアリス・マーガトロイドよ。宜しくね、フラン」 フランの異名と実際に会ってみた印象のギャップに可愛さを感じ、アリスが柔らかな表情で挨拶を返す。 「貴方が命懸けで彼女を解放した理由が判る気がするわ、ゼロ」 不意にアリスから話を振られ、当惑する。 「俺は…」 「あぁ。知ってるわ、ゼロ。尤も、貴方は私を知らないでしょうね」 「魔理沙からもそう聞いた。どういう事なんだ?」 「そうね。まぁ立ち話も何だし、上がって行って頂戴。紅茶とクッキーならあるわ」 「フラン、アリスのクッキーは美味いんだぜ」 「わ〜い、クッキークッキー♪」 きゃいきゃいとはしゃぐフランと魔理沙の後を、ゼロは少々複雑な面持ちのままついていく。 通されたリビングのテーブルに腰かけると、アリスの仕業なのか、ティーセットやクッキーがふよふよと飛んできてテーブルの上に乗った。 「私が初めて貴方と会ったのは、貴方がレミリアに倒された後よ」 紅茶にミルクと砂糖を混ぜ、一口含みながら話す。 「そうか、あの時に」 「えぇ。パチュリーから連絡を受けてね。見てもらいたいオートマタがあるって」 「世話をかけたな」 「気にしないで。どの道、私じゃどうにもならなかったんだもの」 溜め息を吐きながらクッキーを一齧り。 「でも驚いたわ。死んだという話しか聞いてなかったから。まさかこうして私の家に来るなんてね」 「…そうか。それで俺をここに連れてきたのか」 「へへっ、そういう事さ」 得意げに魔理沙が答える。 確かに、一体どこからここまでの情報を掴んでくるのか。 「その節は世話になった。礼を言う」 「だから気にしないで。結局私も何も出来なかったんだし」 そう答えるアリスの脳裏に、ふと疑問が浮かぶ。 「そういえば、誰が貴方を直したの?」 「ん? あぁ、そういえば確かに」 その疑問の声に、魔理沙も同調する。 「もしかして… “アレ”かな…?」 そんな中、フランがふと思い出したように口を開く。 「何か知ってるの?」 「おい、水臭いなフラン。教えてくれよ」 「うん。って言っても、私もよく判んないんだけど…」 少女説明中… 「つまり、その人魂みたいなのがゼロの事を直したのか」 「判んないけど、思いつくのはそれくらいだよ」 「ゼロは…? 何か心当たりは無いの?」 アリスに問われて、周囲の視線を受けながらフッと小さく笑う。 「そうだな… 多分、そのお節介焼きが犯人さ」 「知ってるの? その人の事」 遠い目をするゼロにフランが再度問い掛ける。 「あぁ。遠い昔の戦友さ…」 〜魔法の森・アリスの家・玄関前〜 夕刻、既に紅く染まりつつある世界が、遠くに夜の風を運んでくる。 「じゃあ、また来るぜ!」 「全く… まさかストックのクッキー全部食べつくすとは思わなかったわ」 「だって美味しかったんだもん。な、フラン?」 「うん、アリスのクッキーとっても美味しかった!」 魔理沙に同意を求められて屈託の無い笑顔で答えるフランの頭を、アリスがそっと撫でる。 「またいつでも食べにいらっしゃい♪ 味は貴女の所のメイド程じゃないだろうけど」 「ううん、アリスのはアリスの味がして良いと思う!」 「良い子ね♪」 フランの素直な賛辞を嬉しそうに受け取る。 「貴方もありがとう。私じゃほとんど参考にできないけど、貴方の話は興味深かったわ」 「気にするな。話をしただけだ」 「充分よ。いつか、術者の魔力すら必要としない、心を持ったオートマタが実現する。人形使いとしては実に有意義だったわ」 箒を取り出し、跨る魔理沙にゼロが続き、フランも飛翔態勢に入る。 「それじゃあ」 「えぇ、またね」 アリスに手を振って見送られ、3人は飛び立った。 「そういや、博麗神社に行くんだっけ? どうする、今日の内に足を運んでみるか?」 思い出したように魔理沙が問い掛けて来る。 「夜になってからじゃ迷惑が掛かるだろう。明日ちゃんと行くのが筋だと思うが…」 ゼロの返答に僅かに思案し、ふと何かを思いついた魔理沙が急に進路を変更する。 「あ、ねぇどうしたの魔理沙?!」 フランも慌てて魔理沙の後を追う。 「今日はもう遅い。神社は明日にしてゼロとフランの宿を探そうぜ!」 〜妖怪の山・文の家〜 意外に思うかもしれないが、射命丸文は家に居る事が多い。 元々天狗の、それなりの立場の者としてあまり山を離れる事が出来ないが、正直それは大した理由では無い。 無論、自らが発行している『文々。新聞』のネタ探しの為に外に出る事はよくある。 が、その外出も移動を除けばネタ探しだけで、実質の作業はその編集と印刷作業が主軸だ。 本来であれば机上の空論だが、それを可能にしているのが文自身の自負する『幻想郷最速』の移動力だ。 ひとえに努力の賜物である。 尤も、それが実を結ぶかは別問題であるが。 故に驚く事もある。 自らが誰かの元を訪れる事は頻繁にあっても、誰かが文の所へ訪ねて来る事は殆ど無い。 何しろ家に居る時間自体は少なくないが、外出回数が半端じゃないのだ。 稀に配下の犬走椛が何かしらの用件で呼びに来る事はある。 だから、今自分の家の呼び鈴を鳴らしているのはきっとまた何かつまらない用事でも預かってきた彼女だろうと思い込み、内心面倒臭いと思っていたのだ。 「椛〜? 私は今次の新聞づくりで忙しいんですから変な用事は代わりに貴女が済ませなさいと言ってるで…」 「何だ、また椛に面倒事押しつけて新聞づくりかよ?」 そこに居たのは、ここではない別の場所で見慣れた顔であった。 「あ、あややややや?! 魔理沙さんじゃないですか! わざわざこんな所まで何の御用で?」 まさか魔理沙がやってくるとは思いもしなかった彼女は突然の事に珍しく動揺する。 「何、用ってほどの事じゃないんだけどさ…」 文の言葉に答えながら、魔理沙が視線を自身の背後に移す。 「おやおや…? あ、あややややや! これはこれは!」 「…お前の家だったのか」 「あっ、あの時の天狗さんだ〜」 どうやらゼロとフランも知らなかったようで、文の登場に意外そうな顔をする。 「ゼロさんにフランさんじゃないですか! いやぁ〜まさかおふた方がこんな所においでなさるとは思いませんでした!」 「…俺もだ」 「うん、私も…」 「まぁ、立ち話も何だし入って下さい。もうすぐ暗くなりますし、そうなるとちょっとばかりこの辺は物騒ですから」 文に促されて入る3人。 通されたのは文の部屋だった。 まず目に着いたのは、部屋中を埋め尽くすノートと数々の写真。 写真に写っているのは、幻想郷でも屈指の実力者から、人里の名も知らぬ人間まで様々だ。 「記事になると思ったものは、とりあえず全部記録してますからね〜」 などと軽い口調で言うが、実際これだけの記事を集めるだけでも大変だ。 「大した奴だ…」 「あ、私とゼロの写真もある!」 フランが指差した先には、以前文が紅魔館に来た時に撮影した写真があった。 「あぁ、安心して下さい。約束通りそれは記事にはしていませんから」 「おい文! 何で私が強盗になってるんだぜ?!」 魔理沙が突然大声を上げたかと思うと、机の上の写真を指差す。 そこには、堂々と紅魔館の大図書館に窓突き破りながら侵入する魔理沙の姿が収められていた。 「いやぁ〜、これは丁度ゼロさんの噂を最初に聞いた時に外で張っていたら撮れたんですよ〜」 「お前、そんな頃から…」 流石のゼロも文の情報通っぷりに溜め息を吐く。 「安心して下さいよ、これも記事にはしませんから。その代わり…」 途端に文の瞳に悪魔が宿る。 「わーってるよ! また新聞作り手伝えば良いんだろ?」 「あややや、良いんですか〜? 助かります〜♪」 「飯は食わしてくれんだろーな?」 「そりゃあ勿論! 魔理沙さん好みの和食で良ければ幾らでも!」 と、どんどん会話が関係の無い方向に進んで行こうとした所で、ゼロが一歩前に出る。 「で、魔理沙。宿を探すって話が、どうしてここに?」 「ん? 宿?」 と、ゼロの言葉に文がきょとんとする。 「え? あぁそうだったな。実は文…」 少女説明中… 「何と?! 若い男女が2人旅で一つ屋根の下のアバンチュール?! 身分の違い所か生物・非生物の壁すら越えた禁断の愛!」 「あぅ。ち、違うよぉ…」 「バスターのチリになりたいか?」 魔理沙の説明を確信犯的に曲解しつつ身悶えする文に対してフランはその言葉の意味する所を知って真っ赤になり、ゼロもゼロでストレスマッハだった。 「あややややや! じょ、冗談ですって! 嫌だなぁも〜♪」 既にバスターのチャージを終えて照準を合わせているゼロに慌てて両手を上げる。 「フランの情操教育に悪いから、冗談も程々にしてくれ」 今日何度目かの溜め息を吐き、バスターを収める。 「成程。つまり手頃な宿を紹介して欲しいと。しかし困りましたねぇ」 「何がだ?」 文の真面目に困った声に反応する。 「さっきも言いましたが、ここは妖怪の山でして。もう日も沈んでしまいましたし、今から出るのは危ないですよ」 「大丈夫だよ、私とゼロなら!」 フランが元気そうに話すが、文は溜め息を吐く。 「良いですかフランさん。夜に力を発揮するのは何も吸血鬼だけではありません。確かに並の妖怪は単体では貴女には敵いませんが…」 「確かにな。10匹や20匹ならどうって事無いが、数百の妖怪から一度に襲われるとなると…」 魔理沙も頭を悩ませる。 「しかも、ゼロさんは夜は能力に制限が掛かるのでしょう? リスクはなるべく負うべきではありません」 文の言葉は尤もだ。 ゼロのエネルギー貯蓄容量は、大きいが無限では無い。 しかも、夜になればそれは減るばかり。 当然の判断だった。 「う〜ん… 仕方ありませんねぇ」 何か思案しながら、文が言葉を捻り出す。 「見捨てるのも後味悪いですし、狭いですが皆さん今日は家に泊まって行って下さい。魔理沙さんも宜しければどうぞ」 「やったぁー! 天狗さんありがとぉー!」 狂喜乱舞しながらフランが文に抱きつく。 「あ、あややややや! フランさん、そんなに暴れられては困りますよ…」 口ではそう言うが、その表情は満更でも無さそうだ。 やはり、案外子供好きのようである。 「それじゃあ、私は夕食の用意をするので、魔理沙さんとゼロさんは客間の掃除と布団の用意をお願いします」 「えぇ、何で私が…」 「一晩の宿を提供しようと言うのですから、その位は当然ですよ!」 「文、何なら手伝いは俺一人だけでも構わんが…」 ゼロが言葉を続けようとするが、それは文に遮られた。 「いけませんて! こういうのは皆でやらないと不公平ですからね!」 「あ、じゃあ私も…」 文の言葉で、フランもゼロの傍へ行く。 どうやら手伝うつもりらしい。 その様子をにっこりと見つめていた文が魔理沙にわざとらしく小声で囁く。 「ほれほれ魔理沙さん? フランさんまでお手伝いをすると言ってるのに、貴女1人だけサボってちゃいけませんよ〜?」 「わーったよ、ったく」 魔理沙はまだ愚痴をこぼしていた。 その日の夕食は、文特製のカレーだったそうな。 〜妖怪の山・文の家・客間〜 夕食と風呂を済ませ、女性陣は寝室へと引き上げた。 「…」 蝋燭の明かりだけが灯る薄暗い部屋で、ゼロはビームサーベルとバスターの手入れをしていた。 カチャカチャと、小さな金属音のみが断続的に続く部屋。 「これで良し」 バスターのグリップを握り、テーブルの前にある花瓶に狙いを定める。 「その花瓶はお気に入りなんです。冗談でもそういうのは止めて下さいね」 「すまんな、知らなかったんだ」 突如背後から掛かる文の声に特に驚いた様子も見せず、ゼロはバスターとビームサーベルをホルスターに納めた。 「大体、人の家でそんな物騒なものを出さないで下さいよ」 ぷんすかとわざとらしく怒りながら、牛乳瓶を片手にゼロの向かいに座る。 「時間のある時はこうしてないと、落ち着かなくてな」 そんな返答に「やれやれ」と苦笑しながら、牛乳をひと口。 「貴方の居た世界とは、それほど戦いばかりの世界だったのですか?」 ふと思った疑問を口にする。 それは外の世界への興味と同時に、そんな中で戦っていたゼロへの興味。 「勿論そればかりじゃなかった。戦いの無い時もあった。だが…」 「…悲しいですね」 言い淀むゼロに静かに語りかける。 「そういえば、ゼロさん的にはどうですか? この幻想郷は」 「そうだな…」 考える事をやめ、今まで感じた事を思い返す。 訳も判らないまま連れてこられた未知の世界。 そこでいろんな出会いを経て。 ゼロは、経験した事の無い穏やかな気持ちになっていた。 「その顔は、満更でもないといった感じですね」 「あやや」と笑いながら、牛乳をもう一口。 そんな文にフッと笑うゼロだったが、不意に文が牛乳瓶を置く。 「…どうした?」 声を掛けずにはいられなかった。 文の顔が、どこか悲しそうだったから。 「ゼロさん。それでも貴方は、元の世界に帰りたいですか?」 「文、お前…」 「あ、あやややや! か、勘違いしないで下さいよ?! べ、別に帰って欲しくないとか、そう言う事じゃ…」 しどろもどろの文の言葉に、しばし考える。 美鈴からも。フランからも。 同じ問いをされた事がある。 その度に考えてきた。 既に元の世界にも、自分の帰る場所など無いだろう。 ならば恐らく、戻る事が出来ても眠りに就くだけだ。 それも悪くは無いのだが… 「俺はいつか、ここから居なくなる」 フランの時と同じ答えを、文に告げる。 「…」 その言葉に、文が一瞬ドキリとする。 恐らくそれは、文も本当は判っていたであろう現実だから。 「だが、急ぐ訳じゃない。お前との決着くらいはつけてから行くさ」 「そっ、そそそそうですよね! 私との決着をつけずに帰るなんて、絶対に許しませんからね!」 フッと笑うゼロに一瞬安堵の表情を見せてしまった自分に気付き、内心慌ててそれを否定する。 文にとってゼロとは、取材対象でしか無かった筈なのだ。 そんな文の動揺をクスリと笑い、ゼロが席を立つ。 「あやや? ゼロさんもお休みですか? でしたら皆で…」 「いや、流石にそうもいかないだろ。適当な床で寝る」 「いやいや、こちらこそそんな真似させられません。せめて空き部屋のベッドを使って下さい」 「じゃあ、そうさせてもらおう。お前も早く休めよ」 言いながら、ゼロがその場を後にした。 「さて、と…」 残りを飲み干して空になった牛乳瓶を流し台に置くと、歯を磨いて彼女も寝室に戻った。 〜博麗神社・境内〜 「〜♪」 ザッザッという乾いた箒の音に鼻歌を乗せて、その少女は境内の掃除をしていた。 いつもより心なしか笑顔なのは、恐らくこの後の休憩で食べる芋ようかんを楽しみにしての事だろう。 昨日、珍しく彼女の元を訪れた紫が、これまた珍しく土産を置いて行ったのだ。 「あいつもたまには気が利くじゃない♪ さぁ〜って、ひと休みひと休み♪」 粗方掃き終えて母屋へと戻り、お湯を沸かしてお茶の用意。 緑茶葉は朝使ったものの二番煎じだが、一度しか使ってないのでまだ大丈夫だろう。 「そういえば、何であいつあんな事を…」 支度をしながら、ふと少女は昨日の事を思い返していた。 「外来人?」 「そう。恐らく明日、貴女の元を一風変わった外来人が訪れるわ。元の世界に戻る為に」 土産を私ながら話す紫の顔は、珍しく楽しそうであった。 「で、そいつを戻してやれば良い訳ね」 「いいえ。その頼みを断って欲しいの」 だが、紫から返ってきたのは意外な申し出だった。 「ちょっと、どういう事よ? 外来人なんて基本的に面倒臭いんだから、さっさと…」 「駄目なのよ、霊夢。その外来人はまだ帰るべきじゃない、いいえ、帰してはいけない」 「…どういう事?」 紫の態度に不信感を示す。 いつもなら紫が面白がって連れて来たのを、霊夢が渋々元の世界に戻すのが常だ。 だが、今回はその紫が直々に霊夢にその阻止を求めてきた。 「何が狙いなの?」 「そうね。目的も理由もあるのだけれど… 別に貴女は興味無いでしょ?」 「少なくとも面倒なのは御免よ。だから、何か企んでるのに話さないってんなら…」 「勿論、タダとは言わないわ。そのお土産だけど、実は…」 ボソボソと霊夢に耳打ちする紫。 そして同時に、見る見る霊夢の顔に生気が宿っていく。 「人里の有名店の芋ようかん?! 判ったわ! しょーがないからアンタの頼みを聞いてあげる!」 「ウフフ、ありがとう霊夢。それじゃあ私はこれで…」 「あ、そうだわ紫。その外来人の、特徴と名前は?」 ふと尋ねて来る霊夢に、紫はスキマを展開しながら答えた。 「真紅のボディに流れる金髪。最強のイレギュラーハンター、ゼロよ…」 「けど、帰すなって言ってもなぁ… どっちにしても面倒だわ…」 そんな事をぼやきながら急須にお湯を入れようとした時だった。 「…!」 境内の方から、何やら複数の人の声がする。 「何か境内が騒がしいわね」 霊夢が境内に戻ると、そこには何人かの見知った顔があった。 「よ、霊夢!」 「お早うございます霊夢さん!」 そのうちの2人は、魔理沙と文だった。 「何よ、アンタ達また来たの? 全く飽きないわね…」 溜め息吐きながら靴を履く。 そして、ここに居る事自体が珍しいもう1人の少女を見やる。 「珍しいわね、フランまでここに来るなんて」 「えへへ。お早う霊夢♪」 「はいはい、おはよう♪」 姉のレミリアとは違って控え目なフランの挨拶に笑みをこぼす。 しかしすぐまた真剣な顔つきに戻ると、、見慣れぬ“もう1人”の前まで歩いてくる。 「で、アンタは…」 「俺は…」 「良いわ、言わなくても。多分知ってるから」 「…?」 不思議そうな顔をするゼロの前で霊夢が溜め息を吐く。 「真紅のボディに流れる金髪。なるほどね、容姿は聞いた通りだわ」 「おい霊夢…?」 魔理沙が霊夢の態度を不思議に思う。 確か、霊夢はゼロの事を知らなかったはずだ。 「イレギュラーハンター・ゼロ。貴方の事で良いのかしらね?」 「あぁ」 「用件も知ってるわ。元の世界に帰る手掛かりでしょ」 「知っているなら話は早い。教えてくれ。俺は帰れるのか?」 ゼロの質問に、フランと文が若干気落ちした顔をする。 その様子を見て、更には魔理沙からのアイコンタクトを受けて「ふぅん」といたずらっぽく笑う。 「無理ね」 霊夢が発したのは、あっさりとした答えだった。 「理由は… 聞かせて貰えるか?」 「そうね。主にメンドイから」 「…そうか。邪魔したな」 だが、霊夢の予想に反して帰ってきたのは、霊夢と同じようなあっさりとした答えだった。 「え、あ、ちょ…」 「帰ろうフラン。帰る手掛かりが無いのなら、ここに用は無い」 「え、あ、うん…」 フランも霊夢やゼロのあっさりとしたやりとりに若干疑問を感じつつ、ゼロの手を握る。 「どういう事よ。あいつ帰りたいから来たんじゃないの?」 「まぁ、あいつはそういうやつさ」 「しかし霊夢さん。露骨に何か裏がありそうな回答でしたね。大方事情を知ってる誰かから賄賂でも貰いましたか?」 「う、うるさいわね!」 魔理沙の苦笑と文のいたずらっぽい笑いにそっぽを向く。 図星だったのだから仕方ない。 「それにしても… 変な奴ね、あいつ」 〜紅魔館への帰路・魔法の森の手前・人里との分岐点〜 「ねぇゼロ。本当に良かったの?」 「何がだ?」 「霊夢の事よ。何かあからさまに怪しかったけど…」 「そうだな」 淡々と答えるゼロを気遣うように、フランが擦り寄ってくる。 「ゼロがその気なら、あたし無理やりにだって霊夢に…」 「まぁ、そんなに急ぐ事も無いさ」 フッとゼロが笑う。 「それとも、そんなに早く俺に帰って欲しいか?」 「…バカ」 ぷぅーっと頬を膨らませながらゼロの腕に抱きつくフランはそれはそれは可愛かったという。