[住基ネット]の強行は人権を侵す結果につながる
このところ昼間、家にいることが多くなって、特に気になるのがある。全く知らない人物から電話が頻繁にかかってくることである。
なれなれしくも・・・・・さんですね と、こちらの名を何度となく呼びつけておいて「わたくし、今度そちらを担当することになりました・・・・・です。 きょうは、あなたが儲かる投資・・・・・のご紹介で、お電話しました」といって
長々と一方的にしゃべられ、困惑している。
こうした、たぐいの勧誘は、ますます目立つようになってきている。多くの方が日常茶飯に経験され、ウンザリなさっておられることでしょう。
今のところは、電話帳に記載の情報などでで手当たり次第にかけてきているようであって、漠然とした話しですんでいるが、
そのうちに、「・・・・・今日は、あなたにピッタリの投資のご紹介で、お電話しました」に変わって、こちらの内情をかなり掴んで、切り込んでくることが十二分に懸念される。
個人の氏名、住所、年齢、性別などの基本情報が一旦、漏洩した場合、一人歩きがとどまることなく、どんどん拡大する一方で、取り戻すことは、まず不可能である。国民の最大の関心ごとになってきた「住民基本台帳ネットワーク・システム」いわゆる「住基ネット」は、その可能性が高い。
個人情報の一元化については、「国民総背番号制」として何世代も前から是非の論議が繰り返されてきた経緯があり、いまに始まったことではない。来週の月曜日から稼動するにいたり、騒ぎのとおり全国自治体で参加、不参加、見送りなどで揺れている。これでは国の全国網による国民管理の思惑も、網が途切れて侭ならならない事態になってきた。
ことの本質は、国民の利便性が向上して、どれだけメリットがあり、しかも個人の情報がキッチリと守られ、人権が保護されるか、されないかのところにある。ところが最近の政府広報を見る限りにおいても「…住民基本台帳ネットワークシステムは、制度面、技術面及び運用面において、万全の個人情報対策を行っています。」であって、個人情報を保護しますとはいっていない。いや、言えないのである。
このところテレビなどを通じて、片山総務相は「…今やらなければ準備もできているし、これまでも多額の経費をかけてきた、是が非でも予定どうり実施する そうしないと法律違反になるので どうしてもやる」という主旨のことを興奮気味になって、高圧的に押さえ込もうとしている。これを見て、どれだけの人が理解し、納得したであろうか。極めて疑問である。
インターネットを駆使している人であれば、ウイルスやハッカーなどの浸入でダメージを受けた経験から、おわかりと思うが、悪さをする側は情報を盗んだり妨害するこも容易ようだ。現状において、これを完璧に防御することは至難の技との専門家の見解もある。
わが国の市町村で最多の人口を抱える横浜市は、性急な思い付きとも取れる判断で、個人の裁量による選択制としたが、これは市民の側と事務処理にかえって混乱を招き新たな問題を投げかけたようだ。また、川崎市は、職員に対し守秘義務違反の罰則が定められているので、よし、としているが。だからといって情報保護の保障は何もない。これでは国の思わくを追随するのみであって、市民擁護の姿勢が希薄であって実施機関としての主体性に欠けている。
いづれにしても、先月の大手メディアによる世論調査結果でも76%つまり4分の3が稼動延期を望んでいる。こうした実態からしても、3年前の関連法案改正審議の際の「個人情報保護の法整備が前提」とする当時の首相答弁をふまえて、せめても「個人情報保護法」が成立して、国民の人権養護の規定の整備がされるまでは、拙速な実施には反対である。
2002.8.3 さきよし