TOPへ



 ここでは、猛禽類の保護について私の私見を述べさせてもらいます。猛禽類の生態的な地位における重要性は、ほとんどの人において異論はないだろうと思います。ここでは、どこにでも書いてあるようなことはほおっておいて、冷静に考えて『猛禽類の保護』がどのような形で実現されるべきか? 現実を踏まえてそのあるべき姿を見出していこうと考えています

『休息するノスリ』
どうして休息しているのか?
 ・
片足立ちである
 ・横枝に止まっている
 ・視線の位置(写真という瞬間では判断できませんが)
これらのことから、このノスリは休息しているとわかります
phto by higuchi


保護すべき種の選定について
まずは『選定の条件』について考えてみましょう
とりあえず思いつくまま3点ほど書いてみました


@稀少性
 これはいうまでもなく、日本において猛禽類の『種の保存』を考えるうえでは、重要視されるべきことであると考えられています。ここで稀少性という事を考えるうえでポイントとなることは、総個体数及びその動態地域個体群数及びその動態という2点が大きな要因になるのではないかと思います。
例えば、ある種は
 総個体数   5,000個体     動態  少しづつ増加
   A個体群  1,000個体    動態  少しづつ増加  
   B個体群    500個体    動態  現状維持
   C個体群  1,400個体    動態  少しづつ増加 
   D個体群    100個体    動態  少しづつ減少
   E個体群  1,000個体    動態  現状維持
   F個体群  1,000個体    動態  少しづつ増加
 というような場合、全体からみれば「種の維持」に関してはそう問題もないと考えられるが、D個体群のように少数の上に、減少しているという個体群があれば、種の多様性の保全の観点から、D個体群は保護の対象としていくというようなことが、これからは必要ではないかと考えています。すでに哺乳類・昆虫類・植物やいくつかの府県で出されているRDBなどは、このような観点から考えられているものと思われますが、このように真に種の保存の方法論について、もっと議論することが必要と思われます
A営巣の特殊性の検討
 これまでは、まったく議論にも上りませんが、個人的には@よりも重要ではないのかな・・・・? と思っています。
 これは簡単にいうと、自分で巣を作ることのできない(つまりは、営巣地の選択において、それを自らで選択できない状況にある)猛禽類こそが、まず一番に保護の対象とされるべきであろうという意見です。
 具体的には、自分で岩に穴をあけることのできないイヌワシハヤブサの仲間・自分で樹に穴をあけることのできないフクロウの仲間です。これらは、フクロウを例に取ると、生息環境がまったく変わらず(あるいは今よりも更に良くなっても)、その営巣樹が台風で倒壊したり、伐採されてしまうだけで、そこで生息することはできるが、繁殖することはまったくできません。これはイヌワシやハヤブサの仲間などについても同様です。(これからハヤブサも内陸部の鉄塔などで営巣することが増えるとは思いますが・・・・・:とりあえず今のところは・・・・)
 それに対して、クマタカやハイタカ属をはじめとする森林に営巣する大部分のタカの仲間は、彼ら自らが枝を折りそれを運んで巣を作るため、たとえ現在営巣している樹が倒壊や伐採を受けても、生息地内の同様なところに巣を架け替えることができます。小型のこのタイプでは、そのことが顕著に表れていると思いますし、同様な例をいくつか見ております。
 ところが、イヌワシやフクロウが営巣することができる岩壁や樹洞は、そう多くはなく、ましてやイヌワシのような100平方キロメートル以上の広大なテリトリーを持つ鳥でも、その中には2〜3箇所程度しか巣をかけることのできる場所はありませんし、ひどいところでは、1箇所しかないなどというところもあります。フクロウにしてもまったく同じ状況で、自然の森林内には彼らが営巣できるような樹洞など非常に少なく、深山以外の里山近くでは、その営巣地の大部分を社寺林や学校などの大木が残されているところにその大部分を依存している、あるいは依存せざるをえない状況にあると言えます。フクロウよりも樹洞空間を多く必要とし、なおかつ餌動物にも特殊性を持つシマフクロウなどは、もっと悲惨な状況ではないでしょうか?
 このような営巣の特殊性(自らが巣場所を作れない)を持つ猛禽類に対しては、保護を考えていくうえで、要件の一つとして取り上げていく必要があるのではないのでしょうか?
 皆さんはどう思いますか?
B分布が隔離されている
これは言うまでもありませんが、オガサワラノスリ・ダイトウノスリなどのように隔離分布されているものは、当然その地域にしか生息していないとともに、個体数も限られ、環境変化や病気、遺伝子の多様性の少なさからなどから、やはり、選定の要因の一つして考えていくべきでしょう

 
 

  



2001.2.1 OPEN
2002.2.1 RENEW