「猫とペスト」        HOMEへ


現在の日本では絶滅したペスト(黒死病・ネズミ、リスなどのげっし類の病気で、その病原菌はノミによって人間に媒介される)は、古代エジプト、インド、明治の日本(聖徳太子の時代にも)、世界の様々な地域で発生して、それはネズミから人へ、人から人へ(肺炎を引き起こして、咳や痰から)伝染する、死に至る恐ろしい伝染病です。

古代エジプトでペストが流行ったとき(インド、日本においても)、人々を救ったのは私たちの愛する猫でした。そして、 猫はネズミの天敵として人々に飼われ、ネズミを退治することから、人々から敬われることになりました。


しかし、ネズミを退治する猫には、そのペスト菌が入り込むだろうし、ノミもたかるだろうと言うことは予測できます。なぜ、猫がペストにかからなかったのか?

 私はその疑問を解くために、伝染病の世界的な権威、北里研究所に電話をしました。


「ペストの伝染は、ネズミ(その他のげっし類なども)にたかったノミ(シラミ、ダニも)から人間に伝染することが知られています。猫が絶対にペストに伝染しないわけではないが、ペストになった猫が発見されると論文に発表されるほど究めて稀なことです。
一般にペストはノミが人を刺したとき、ペストに掛かった人の唾液や痰から伝染して、血液に入り込み、次々にリンパ腺を破壊して、やがて肺炎などを引き起こし死に至らすのですが、猫に入り込んだペスト菌は、猫のリンパ腺でそれを壊滅してしまうのです。すなわち、ペストが猫に伝染することがあっても、その猫から人間に伝染することは無いのです。」


このために、インドや東南アジアなどの猫が多く飼われていた地域では、ペストの流行が押えられたと伝えられています。


R・コッホ博士(1843〜1910、ドイツの細菌学者、1905年・結核に関する研究と発見によりノーベル医学賞を得る。1908年(明治)・世界旅行の途中で日本に立ち寄り大歓迎を受ける)が来日したときには、強く猫の飼育を推奨したと記録されています。


また、日本の各地でペストやその他の伝染病が発生したとき、その多くはネズミによる媒介であり、人々を救ったのが猫であることから、日本の各地に「猫を祭る神社」(絹織物の蚕をネズミの被害から守ったことも)が作られたようです。

ネズミは恐ろしいペストなどの疫病を媒介しましたが、人々は「猫」を飼うことにより生命の危機からも助けられたのです。 
 1996/6/22 北里研究所(談話より)   

『西洋のペストの流行について』

近代の衛生設備や医学が発展するまで、人類は諸類の疫病に悩まされましたが、中でもペストの流行は近代史の初めまでのヨーロッパ史の暗黒面を形づくり、その恐ろしさは私たちの想像を絶するものでした。

ヨーロッパ史上でペスト大流行の最初は6世紀(542〜595)で、この時はローマ帝国の約半分もの人々が死亡したと伝えられています。


その規模において、歴史的な意義においてもっとも注目されるのは、14世紀中期の全ヨーロッパを恐怖のどん底に叩き込んだもの。(東アジアに発生して、小アジアから、アラビア、アフリカを経て、1340年代にヨーロッパを席巻し1349年に終息)、それ以後、14世紀後半期ら15世紀、16世紀、17世紀に掛けてヨーロッパは各地でペストに悩まされることになりました。

この史実は、中世ヨーロッパの「猫への虐待行為」に照らすと、非常に興味深いものです。

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