February 28th放送 ビートたけしのアンビリーバボー

奇跡の水



 全ての生命の源、水。人体の70%は水であり、それを維持するために人間は毎日2リットル以上の水を摂取する。そしてそれらの中には、信じられないような効果を人体に与えるものもある。
 中米メキシコの首都、メキシコシティーから北へ約300km離れたトラコテという小さな町に、不思議な力を持つといわれる水がある。人口数千人の町に似つかわしくない巨大な給水施設、ウニケ・デ・メヒコ・ラボ。ここの水を見つけた所有者のヘスス・チャヒンさんは、水を発見したのは偶然であったと語る。11年前、彼は愛犬が車にはねられたのか、足を怪我して倒れているところを裏山を散歩中に発見した。

 犬は足を痛がり苦しそうで、歩けない犬にせめて水を飲ませてあげようと近くの水場に連れて行くと、犬は懸命に水を飲んだ。ぐったりとした犬にもう何もしてやることができないと思っていたその時、犬は突然何事もなかったように歩き出したのだ。
 チャヒンさんは驚き、きれいな水を飲んだからだとその時は冗談を言っていたのだが、それだけでは終わらなかった。ひどい腰痛に悩まされていた従業員は、チャヒンさんに勧められたその水を飲んでみることにした。毎日飲み続けた彼の腰痛は、どんどん快方に向かったという。

 それからチャヒンさんは飲みたいという人に水を公開するようになり、効果は口コミで広がりこれまでに300万人もの人が訪れている。神経麻痺で寝たきりだった女性が回復に向かい話すことができるようになったり、糖尿病や子宮ガンを克服した人もいる。
 ここでは訪れた人のファイルを作成し、どんな症状の人にどれくらいの水を分ければ良いのかを管理している。できるだけ多くの人に水を分けようという配慮からだ。チャヒンさんは、なぜこれほど水が効くのか調査をしてもらったのだが、成分は井戸と同じ程度で、なぜ病気に効くかはわかっていないという。

 奇跡の水は、ドイツのノルデナウにもある。この町にあるホテル・トメスの敷地内にある、掘らなくなった鉱山から出る水だ。ホテルではここをワインセラーとして使用していたのだが、ワインが急速に熟成することがわかった。不思議に思って調べると、わき水が原因のようで、飲用しても効くとわかり飲むことになったという。
 この水を求め、年間50万人の人が訪れるという。水は世界中から訪れる人々に無料で配られる。地下にある洞穴では、水の発する「気」が充満しているといい、ここを訪れる人は静かにそこに身を委ねる。ここの水で神経損傷や聴覚障害が治ったなど、様々な証言が数多く存在する。

 そして、ここノルデナウの水もまた様々な角度から調査が行われたのだが、なぜ体に良いのかはわからなかった。さらにこのような奇跡の水は日本にも存在した。大分県の北西に位置する日田市。ここにある深井戸から不思議な力を持つといわれる水が出る。この水もまた、偶然発見された。
 所有者の石井さんは、ウナギの養殖をしていた。養殖には良い水が必要だったため、彼は10本ほどの井戸を掘った。ウナギはきれいな水で元気に育ったのだが、ある井戸の水を使ったウナギだけが特別丈夫に太く育ったのだ。

 この水だけ特別なのではないかと従業員の間では噂になった。水質検査の結果飲用にも問題はないと判明し、従業員たちはこのウナギが特別大きく育つ水を持ち帰り自宅で飲んだ。すると、家族全員が健康になり病気などが治ったのだ。効果は口コミで広がり病に悩む人々がこぞってこの水を飲んだ。産まれた時からアトピーに悩んでいた女の子も、今ではすっかり綺麗な肌をしている。糖尿病に苦しんでいた男性も、水のおかげで元気になっている。
 日田の水を取り寄せ、飲用と洗浄に使っている皮膚科の病院もある。全国からは、重い病を克服したという手紙も沢山寄せられている。

 そしてまた、日田の水も病状改善の実績はあるものの、なぜ効果があるのかはわからない。番組でも3つの水質検査を実施したのだが、ミネラル成分は多いが、特別な水であるという結果は得られなかった。
 様々な検査によっても原因がわからなかったため、これは暗示の効果つまりプラシーボ効果ではないかと実験を行った。プラシーボ効果とは、効くと思って服用すると何でも無いものでも実際に効果が現れることである。まずは、6人の被験者の血液流動性を調べる。どろどろの状態は動脈硬化などを誘発し、さらさらの状態が良いとされる。

 実験前、6人は全員が血液がどろどろの状態だった。そして3人には日田の水を、残りの3人には水道水を、いずれも体にいい水だと説明して飲んでもらった。1時間後、再び6人に血液検査を行ったところ、日田の水を飲んだ人の血液は明らかにさらさらした状態になっており、水道水を飲んだ人には改善があまり見られなかった。日田の水が体に良い原因はプラシーボ効果ではないことがわかった。
 この奇跡の水を、独自の観点から解説を試みた人物がいる。九州大学農学部の白畑氏だ。水そのものは水素と酸素から成り、水そのもののはたらきに注目したのだ。酸素に2つの水素がついてH2O、水は成り立つ。

 そして、活性酸素が奇跡の水の謎を解くカギなのではないかとしている。体内に取り込まれ、エネルギーとなり燃え残った酸素の残り2%ほどが活性酸素になる。活性酸素は強い酸化作用を持つ攻撃的な物質だ。活性酸素には、体内に侵入する異物を撃退する武器となる善玉もいるが、同時に正常な細胞を傷つけ酸化させる悪玉もいるのだ。
 細胞を酸化させるとはつまり老化の促進につながる。活性酸素がたまると有害な酸化作用が広がるのだ。白畑氏は、奇跡の水は特別な状態の水ではないかと考える。通常水素は2つの分子がくっついて存在するが、単独で存在するとそれは活性水素と呼ばれる。

 一方、活性酸素はもとは単独だったものが、細胞に攻撃を与えて破壊し、無理矢理結びつく相手を作ってしまう。つまり、奇跡の水の中に多くの活性水素があるため、体内の活性酸素が細胞を破壊することなく活性水素と結びつくのではないかというのだ。奇跡の水の正体を、多量の活性水素を含む水と考えるのである。
 実際には活性水素の性質には未知の部分が多いのだが、白畑氏は独自の方法で3つの奇跡の水の活性水素の量を検出した。結果、3つの中でも日田の水は特に多くの活性水素を含んでいることがわかった。

 白畑氏は、アルカリイオン水の研究が奇跡の水を理解するのに役立ったと話す。アルカリイオン水は、水を電気分解させて作られる。すでに厚生労働省によってその効果は認められているが、その性質の詳細は明らかになっていない。
 アルカリイオン水は様々な医療機関でも用いられている。アトピー性皮膚炎に悩んでいた多くの患者が、薬ではなくアルカリイオン水によってかなりの改善が見られたのだ。
 奇跡の水もアルカリイオン水も、医学的効果の詳細なメカニズムは解明されていない。しかし、将来研究が進んで水のパワーにより難病が克服される日が来るかも知れないのだ。