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レストランではいわゆる「女性メニュー」が大盛況だった。大盛況と言うよりは、むしろ、猛威を振るっていると言った方が的確かもしれない。とにかく、女性や子供の好みそうなメニューが氾濫していた。 もちろん戦士の食事と言った普通の定番メニューもあるのだが、その隣にはパステルカラーの『イチゴフェアー・ストロベリー、ラズベリー、クランベリー、ブルーベリー、あなたはどれがお好き?』という、恥ずかしいメニューがおいてあったりするのだ。 男性陣は『またか…』という目で見ていたが、もちろん女性は大喜びだった。 そんな中、そういうメニューに狂喜する男性もいるわけで…。 「あぁ、ゲオルグどの、これですよ!」 「お、こりゃうまそうだなぁ」 「あっ、私、これが食べてみたいですわ!」 わいわいとレストラン前で騒いでいるのは、何とも珍奇な三人組だった。 順に、フィッチャー、ゲオルグ、エミリア。そう、甘党三人組である。 『甘党』という以外にはこれっぽっちも接点のない三人ではあるが、この接点こそが重要なものらしい。食の好みさえ一緒なら話は自然と盛り上がる。そんなものなのだろうかと思いはするものの、どうもそんなものらしい。 三人はわいわいと喋りながらレストランに入り、それぞれが食べたいものを注文していく。エミリアが一緒と言う強みもあってか、恥ずかしげもなく『イチゴのミルフィーユ』だの『フランボアーズ』だのと、いい年をした男が注文していた。 その三人が『ここに幸あり』といった風情で甘いものを堪能していると、レストランに細長い二人組みが入ってきた。赤と青の衣装をまとったその二人、ほかでもない、マチルダの団長コンビだ。 どうも二人は部屋で食べる用の軽食を頼みに来たらしいのだが、ふと例の三人組に気がつくと、側へ歩み寄ってきた。 「あら、こんにちは、団長さん」 「こんにちは。…それは、何ですか?」 マイクロトフが指差した先には、桃白色とでもいうのか、優しい色合いの飲み物が置いてあった。エミリアはそれを手に取り、マイクロトフのほうへ傾ける。どろりとしたそれは非常においしそうだった。 「スムージーというんですって。おいしいですよ」 「スムージー…」 見つめるマイクロトフの瞳が輝いている。カミューは苦笑し、マイクロトフの肩を叩いた。 「マイクロトフ、食事なさっている方に喋りかけるのは失礼だろう」 「あっ…こ、これは…失礼しました」 赤くなったマイクロトフを見、ゲオルグは面白そうに笑っている。 「なぁに、食事ってのは楽しくないとな」 「そうそう、そうですよ、マイクロトフさん」 そういうゲオルグとフィッチャーの目の前にあるのは、胸焼けのしそうな生クリームの山であった。カミューはそれとなく視線を逸らせながら、マイクロトフの袖を引っ張る。 冗談ではない。これ以上ここにいたら食欲がなくなってしまいそうだ。 「我々は失礼しますよ。…行こう、マイクロトフ」 「失礼いたしました」 頭を下げた二人に、エミリアはにっこりと微笑み、あとの二人は気楽そうに手を振った。 カミューはマイクロトフをレストランの会計のところに引っ張っていきながら、心の中で考える。 マイクロトフはその性格上、やはりというか、歴戦の戦士や軍人などに非常に弱い。例をあげれば、それはビクトールやフリックだろうし、キバやリドリー、極めつけがあのゲオルグ・プライムである。都市同盟軍に彼が参加したと聞いた時のマイクロトフの顔ったらなかった。自分たちを憧れの目見る少年と全く同じ顔をしていたのだから。 確かにそれは純粋な憧れであろうが、……それでも、マイクロトフがそんな顔をするのは少々面白くなかった。そんなわけで、カミューはマイクロトフがゲオルグに近付くのを回りくどく阻止しつづけているのである。 ……まぁ、実を言うとカミューも多少ゲオルグと話してみたいと思わないでもないのだが。 カミューは適当にメニューを決め注文したが、隣にいるマイクロトフはなにやら迷っているようだ。そっとその顔をのぞきこむと、視線は例の「スムージー」とか言う飲み物の前で止まっている。カミューは小さく笑い、注文を待っているウエイトレスに笑いかけた。 「あと…これも一つ、お願いします」 「えっ、カミュー…」 「なんだい、いらないのかい?ま、いらないのなら私が……」 「い、いや!いるぞ!」 力説した青騎士団長に、目の前のウエイトレスはぷっと吹きだした。笑われ、マイクロトフは思わず赤面してしまったが、それでも頭を下げた。 「では…それでお願いします」 「分かりました。オーダー通しまーす!」 注文したものが出来上がるまで二人はブラブラと待っていたが、渡されたトレイを持って互いの自室へと歩き出す。元騎士団長ともあろうものが自分の食事を自分で運ぶなどどうにも似合っているとは言いがたいのだが、この軍の中ではこれが普通なのだった。軍のトップに立つリーダーが率先して自分のことを自分でやるため、今では文句を言うものもいない。 通りがかった騎士や同盟軍の仲間たちに挨拶を返しながら、渡り廊下を渡ってマチルダ騎士団のフロアまでたどり着いた。 「どうしよう、執務室で食べる?」 「いや、部屋の方で構わんだろう。特に仕事もないようだし」 「そっか、じゃ、部屋に行こう」 騎士団の執務フロアから奥の方へ行き、二人は二人の自室へと入った。ようやく部屋の中で落ち着くと、マイクロトフはさっそく例の飲み物に手を出している。 カミューはその向かいに座り、子供のような表情で味見をしている親友をからかうような表情で見守っていた。 「どう、マイクロトフ」 「……うん、なかなか美味い」 「そう。……私も一口欲しいなぁ」 「あ、ああ、飲むといい」 差し出されたグラスを見、カミューは不満そうに口を尖らせた。 「冷たいなぁ、飲ませてくれてもいいのに」 「馬鹿かお前は。どうしてそんなことをしなければならんのだ」 「だって、私のおかげで今、ここに、それがあるんだろ。だったら、感謝の気持ちくらい見せてくれたって」 「…………………」 確かにその通りではあった。 マイクロトフはうなり、カミューの口元にグラスを差し出す。が、カミューはいっこうに口をつけようとはしない。 「カミュー、飲まんのか?」 「私は『飲ませて』って言ったんだよ。これじゃ、ただ私が飲むんじゃないか」 「どうしろというのだ、一体」 カミューはにっこりと微笑み、両手を差し出した。マイクロトフはその前で仏頂面をしている。カミューがこういう表情をする時にはたいてい、ろくなことが待ってはいないのだ。 「口移し。当然でしょ〜」 「な、な、何を言っているんだ、お前は!な、何で俺が…」 「飲みたかったんでしょ?一人だったら注文なんか出来なかったくせに。感謝して欲しいなぁ〜」 「い、いや、だが…」 「いらないのなら、後は俺がもらおっと」 「あっ!」 奪われたグラスをマイクロトフは穴が開きそうな勢いで見つめている。カミューは手の中のグラスを振り、マイクロトフを見た。その悪戯っぽい視線にマイクロトフはうなる。 「マイクロトフ?」 「……………………」 「ふぅん、後で新作の木苺のタルトをデザートに買ってこようと思ってたんだけど、やーめた」 「…………!」 実はマイクロトフ、タルトが大好物である。しかし、物で釣るあたり、カミューもせこいというか情けないというか。ここまでしてキスして欲しいのだろうか。 マイクロトフはうなりながら立ち上がると、カミューの側まで行き、グラスを受け取った。琥珀色のカミューの瞳が楽しげにきらめいている。 「……お前のおごりだろうな」 「ふふ、仕方ないな、おごるよ」 負け惜しみのようなマイクロトフの言葉にカミューは笑ってしまった。 マイクロトフはグラスの中身を口に含み、カミューの肩に手をかけた。なんというか、その姿はまるで罰ゲームのようだった。カミューは薄く微笑を浮かべたまま、マイクロトフの腰に腕を回す。 マイクロトフは口の中にスムージーを入れたまましばらくうなっていたが、カミューが腰に回した腕を軽く引き寄せると、意を決したようにカミューに口付けた。 甘く濃い液体がカミューの口に流れ込んでくる。それを飲み込んでしまうと、お返しとばかりにマイクロトフの口に舌を滑り込ませた。口内に残った甘いそれを全てなめとってしまい、どこか甘く感じられるマイクロトフの舌をゆっくりと味わう。肩にかかったマイクロトフの手から段々に力が抜けていく。 唇を離すと、とろけたような闇色の瞳と視線がぶつかった。カミューは笑い、マイクロトフの唇を指で拭う。 「ごちそうさま。おいしかったよ」 「…………………」 「さ、食事をはじめようか、マイクロトフ」 「…………………」 何をか言いたげな不満そうなマイクロトフの表情に笑うと、カミューはついっとマイクロトフの頬をなぞった。 「俺は、お前を食べてもいいんだけどね。その方がいい?」 「じ、冗談ではない!」 憤然と元の席に戻ったマイクロトフに、カミューはぷっと吹きだした。 |
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失礼しました。8484というキリではない番号を申告し、 あまりにもあまりだというので、交換にしたのです…。 まさみさんのリクは「口移しちゅー」………。 スムージーって…デニーズメニューなのかなぁ(笑) |