〜誕生日の思い出〜




 カチ。

 時計の針が12時を廻った。
 新年の始まり。
 布団にくるまって互いの温もりを分け合って、まだ幸せな余韻に包まれながら、マイクロトフとカミューはその瞬間、にこり、と顔を見合わせる。
「今年も宜しく、マイクロトフ。」
「こちらこそ、カミュー。」
 くすくす・・・。
 額と額をこつん、と合わせて。
 笑いあいながらまた、じゃれあって抱き合う。
 同盟軍に来て、初めて迎える新年。
 クリスマスを終えたと思えば、すぐに大掃除、という具合でどたばた、どたばたしていて。
 ここに来てまだ一年経たないと言うのに、二人に与えられた個室にはそれでも色々と雑多なものが増えていた。
 掃除の際、どちらか一方が捨てようとしたものに対し、
『それは要るんだ!』
『これは一回も使ってないじゃないかっ!』
 互いに言い合って、主張しあって。結局かなり多くの物が捨てれないまま、この部屋には残ってしまっている。
 改めてベッドの中から部屋の中を見やれば、面白いものだ、と二人はつくづく思う。
 例えば、本棚。
 4段ある棚を上下2分割して、互いの趣味や必要な分野の本が並べられているのだが、兵法関連のもの以外は見事にジャンルが違う。
 違うのは本棚ばかりではない。部屋に置いてある小物から何から何まで。全然類似性のない雰囲気の物があちこちに置かさって、それが微妙な感じで溶け合い、この部屋の独特な風景を作り上げている。
「何だか、嬉しいね。」
 カミューが目を細めて言う。
「うん?」
「だって。私達の物が雑然として、でも当たり前のようにあちこちにある。今じゃそれが見慣れた光景で、そうじゃないと、きっと落ち着かない。」
「ああ、そうだな・・・・。」
 マイクロトフも同意する。
 互いのものが雑多に置かれている、この部屋。今ではこの部屋のこの風景は自分の心に気持ち良く馴染んでいて、この部屋以外に帰ることなど考えつかない。
 いつかロックアックスに戻れる日が来たとしても、きっと自分はカミューの物を自室に持ち込んで、この優しい部屋の雰囲気を再現したくなるだろう。
「俺もこの部屋は大好きだ。」
 ふわ、と笑んで言うとカミューが目を細めてマイクロトフを見つめた。
「マイク・・・・・。」
 優しい手の平がマイクロトフの頬に触れ、次いでカミューの顔が近づいてくる。
 うっとりと目を閉じると、降りてくるカミューの口唇の感触。まるで羽根が触れるかの如く、軽く啄ばむようなキスを何度も落とされる。
 甘いキスを甘受していると、カミューが「そうだ」と言った。
「・・・?」
 きょとん、としたマイクロトフにカミューが言う。
「まだ言っていなかったね。明けましておめでとう。マイクロトフ。」
「・・・・・・・・・。」
「マイク?」
 なにやら急に黙り込んだ様子のマイクロトフの顔を、カミューが覗き込む。
「どうしたの?」
「いや・・・そういえば、昔は正月が嫌いだったかな・・とか思って。特に”おめでとう”が。」
「?どうして?」
「俺の誕生日は1月3日だろう?」
「ああ。それが?」
 ちゃんとプレゼントは用意してあるよ、とカミューが微笑みつつ言って来るから、マイクロトフはくすくす笑いながら、話し出す。

 昔の小さな子供の頃。
 大晦日やお正月とか。子供にとってはそんなこと、関係ない。
 一番のイベントいえば、クリスマスや、自分の誕生日であって、他の行事の時など「大人はどうして、あんなにばたばた忙しそうにしているのだろう?」と横目で見ているくらいのものだった。
 そしてお正月三が日ともなれば当然、ご近所や親戚がこぞって新年の挨拶をしに家に訪れる。そして来る人々は、「おめでとう、マイクロトフ」と口々に言ってくれる。
 それは単に「新年おめでとう」という意味合いで言ってくるのだが、幼いマイクロトフには解らない。
 だからマイクロトフは小さな子供の頃は単純に「皆、どうして俺の誕生日を知って祝いに来てくれるのだ?」と不思議に思い、でも祝いの言葉を述べられて嬉しく思ってもいたのだ。
 が。
 成長し、大きくなってくれば正月の意味も、何故人々が訪れに来るのかも段々と解って来る。
 理解してから数年はお正月を迎える度にマイクロトフは妙な感慨と共に、誤解していた「おめでとう」の言葉を気恥ずかしい思いをして、何となくお正月が苦手に思った時期もあった。
 そして年齢が進むにつれ、新年と同等視されたマイクロトフの誕生日には、誕生日だからと言って特別な料理を家人がしてくれることもなくなり、彼にとって誕生日とは別段大した意味合いを持つものではなくなってしまった。
 そんな風に思う自分の心を少しの寂しさを感じながらも、これでいい、と過ごすようになって、数年経った頃。
 この男と出会った。
『誕生日おめでとうマイクロトフ』
 満面の笑顔と共に、プレゼントやら、マイクロトフの好きな料理やらを当たり前の顔をして用意してくれる、この存在に。
 カミューと誕生日を過ごすようになってからは。
 寂しいどころか賑やかで、そして嬉しい気持ちを抑えきれない、照れくささで一杯になって。
 めまぐるしく騒ぐ自分の感情をどう取り繕うかをだけに忙しくなって、寂しいとか考える余地は隙間程もなくなってしまった。いつしか苦手だったはずの正月は嬉しいものへと変わっていた。
「我ながら子供臭いとは思うのだが・・・。」
 それでもやっぱり誕生日は嬉しいんだ。
「マイクロトフ・・・・・。」
 照れくさそうに、俯いて話すマイクロトフのその様子に、カミューは堪らない愛しさを覚えて、彼の頬に口付ける。
「愛してるよ、マイクロトフ。」
「・・・・・・。」
「ねぇ、マイクは?私を愛してる?」
 途端真っ赤染まった頬を見れば聞かずとも理解るのだが、それでも問い掛けてみる。・・・答えを聞いてみたくて。
「マイク?」
「・・みゅー・・・。」
「え?」
 聞き返そうとした瞬間、マイクロトフの手がカミューの方に伸びて来た。伸ばされて来た手が、するりとカミューの頭に廻され、ぐい、と引き寄せられる。次いで唇に触れる、マイクロトフの吐息。
「マイク・・・」
 触れたか触れないか、という位のマイクロトフからのキス。
「俺は・・・っ・・、そのっ・・。」
 相変わらず真っ赤になったままの顔をカミューはぐい、と持ち上げて告げる。
「・・・・足りないよ、マイクロトフ・・・・」
 鮮やかなアメジストの瞳に情欲の色を宿して、カミューはマイクロトフの唇を奪う。
「んっ・・かみゅ・・ふ・・・ぁ・・こ・・ら」
 さわさわと明確な意思を持った恋人の手が、また自分の躯をまさぐり始めるのに気づき、抗議の声を上げようとするがそれは恋人の唇で甘く塞がれた。
 冷めかけていた汗の湿りが、カミューの手が肌を滑る度にまた熱を帯びて来る。あえかな甘い吐息が漏れ始めれば、もうお終い。カミューの手管に陥ちて行く自分を止められは、しない。
「姫はじめ、しよ?」
「お前・・はっ・・さっきまで今年最後だからって、あれほ・・ど・・っ!」
「あれは去年の話。今は今年。」
 だから、しよう?
 言いながらもうカミューの手はマイクロトフの一番敏感な部位へとそろそろと伸び始める。
「・・ん・・ふっ・・ぁ・・・。」
 何とかして甘い責め苦から逃れようと伸ばした手は、カミューによってやんわりと捕らえられた。
「だぁめ。逃がさないよ?マイクロトフ。」
「かみゅ・・っ・・っ・・ん・・・。」
「愛してるよ・・・。」
 つい先程まで乱していたシーツの海にまた、埋められる。快楽の中、呼吸困難になりそうな躯を助けるかのように見せかけて、更に強い快楽に陥とされては没頭させられる。

 まだ闇が包む新年の夜中。
 懊悩も煩悩も。
 除夜の鐘では消去れなかった想いを交し合って、夜は更け行く。
「愛してる・・・・。」
 囁いたのはどちらなのか。



「明後日には誕生日お祝いをしようね?」
 楽しげに、そしてこの上なく優しく恋人が囁くから。
 マイクロトフははにかんで、頷いた。




同い年企画?(笑)
まさみさんへ、お誕生日おめでとうvv


LASSさんからいただいてしまいました!
ありがとうLASSさんっ! 素敵すぎです!
あああ、この2人は除夜の鐘では煩悩は
捨てきれなかったのね!(笑)わかるわ!(爆)

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