|
ゆらゆらと。暖かいぬくもりのなかを夢見心地でさまよっていた。 ふ、と。身じろぎしたのは自分か、ぬくもりを与えてくれてる相手か。 そのかすかな動きに反応してマイクロトフは目が覚めた。目を開けると空が明るくなりつつあるのがわかった。いつもの起きる時間。マイクロトフは心の中でため息をついた。 この時間に目が覚めてしまえば朝練に行かないわけにはいかない。たまには寝坊すればいいのに……、と思ってしまう自分がいた。 あまりにも心地よいぬくもり。人の腕の中で眠るのがこんなに心地よいなんて知らなかった。最初は気恥ずかしさが先に立って早く離れようと逃げるように訓練に行っていたのに、最近はときどき離れたくない、という思いに駆られる。それをぬくもりを与えてくれてる相手、カミューに伝えれば「たまにはサボればいいのに」と笑って言うのだろうけど。それは自分の甘えだから享受するわけにはいかない。 でも今日は特に離れがたくて。そっと顔だけを上げて自分を抱いている恋人の顔を見る。 今は長い睫毛に隠れている琥珀色の瞳。あの瞳に見つめられるとすべてを見透かされてるようで、どこかくすぐったくて。自分を見る瞳がいちばん優しいと思うのは自惚れだろうか。昼間は誰とでも臨機応変に軽やかに会話を交わし、夜は自分に惜しみない愛の言葉を紡ぐ形のいい唇。言葉でも動きでも彼は自在に操り、いつも自分はいいように翻弄されてしまう。自分の身体でこの唇が知らないところはもうない……。すっと通った鼻梁。奇跡のように整った顔立ち。奇麗、といっても女性的な要素は微塵もない。体格のいい戦士がそろった同盟軍の中では、見た目は少し華奢な部類にはいるかもしれないが、ムダな肉がついていないだけ。 マイクロトフはそっとカミューの唇に自分の唇を寄せた。呼吸を妨げて起こしてしまわないように、軽く。 彼の呼吸を微かに感じて、それだけで幸せな気分になってしまう。 重症だな、俺も……。 マイクロトフは苦笑いしてやっと起き上がる決心をする。上半身を起こしてカミューを軽く揺さぶった。 前は、起こしたら悪い、とそっと出ていっていたのだが、一度すごく怒られた。どうやらずっと不満に思っていたらしいのだが、その日は夢見が悪かったらしい。それ以来、起きるときは一声かけていくことにさせられていた。 たいてい夢心地で応えてくるから覚えてないのだろうけど。 「カミュー……」 「ん……」 そっと呼びかけると微かに返事がくる。 「カミュー、俺は朝練に行ってくる……」 なるべく眠りの縁から引きずり出さないようにと小声で話しかけると、マイクロトフは足をベッドから床に下ろした。 と、思いもかけずベッドについていた腕を掴まれた。 え?と思うまもなくそのままぐい、と引っ張られる。バランスを崩してカミューの上に倒れ込みそうになった。それをやすやす受け止めたカミューはまだどこか眠たげだったがにっこりと微笑んでいる。 「カ、カミュー……?」 「行かないで」 「え?」 「今日は一緒に起きよう?」 だから、ね、と寝返りをうつようにマイクロトフを抱き込んでマイクロトフをベッドの上に戻してしまう。そのままおでこを合わせて至近距離で眼を覗き込まれた。 マイクロトフはどきり、とした。自分の心を見透かされているようで……。 「……カミュー、朝練が……」 「たまにはいいだろ? マイクがいなくても青騎士の連中は真面目にやるよ」 「う、うむ……それは……」 口篭もってしまったマイクロトフにカミューはくすくす笑う。 「こんなにわがままなヤツに好かれて御愁傷さまだね」 「カミュー……」 困ったように皺を寄せてしまったマイクロトフの眉間に、カミューはキスを落とす。 違う……。わがままなのは俺の方なのに……。 そう思っても口には出せない。 いつかちゃんと正直に言うから……。 それまではカミューのわがままにつきあうふりをしててもいいだろうか……。 マイクロトフはいつものようにカミューの腕に頭を預けた。するとカミューもいつものようにもう片方の腕で抱き寄せてくれる。 たまにはこんな朝もいい……。 おわり |