馬鹿は死んでも治らない




 カミューの身長が少々低い、というのはあまり気にしたことはない。背が低かろうが剣技は申し分ないし、頭も切れ、社交にも長けている。まさに赤騎士団長にふさわしい男だろう。
 だが、あの身長ははっきりいって罠だ。目の高さに頭があると思わず撫でてしまうではないか。そのせいか、いろいろと悪さされてもどこか本気で怒れないでいる……。


 ドアを開けると、カミューが上半身裸の状態で片腕立て伏せをしていた。俺はその姿にノックをしなかったことを後悔する。ここは自分の部屋であると同時に彼の部屋でもあるのに。
「す、すまない……」
「何を謝っているんだい? ここはおまえの部屋でもあるだろう?」
 おかしそうに笑われ、俺は気まずさにうつむく。均整のとれた身体を惜しげもなく晒して汗を流す姿に、思わず息を呑んでしまったことに彼は気付いただろうか。
「き、筋トレしてたのか?」
「うん……。もう少し鍛えたいと思ってね」
 どこか照れ臭そうに、柔らかく微笑むカミューの表情に俺の胸が甘く締め付けられるのを感じた。どうやら俺は、いつも人を食ったような笑みを浮かべている彼の、先程のような真剣な表情や、こういう何気ない表情に弱いらしいのだ。
「おまえの剣は充分速くて強いではないか……」
「ありがとう。でも、お姫様抱っこをするにはまだまだだろう?」

 ぴきっ

「……………………」
「マイク?」

 ひょいっ

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ」

 どさり

 床に放り投げられたカミューはわなわなと震えると、わっと床に泣き伏した。
「うわーん! マイクのばかばか!! 俺が、されたい、んじゃなくて、俺が、したい、んだよーっ!!」
「戯言は寝て言え」
 少しでも見直した俺が馬鹿だった。




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