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厩舎の方に歩いていくマイクロトフの背中を見つめ、カミューはぽつりと囁いた。 「好きだよ……」 口に出してみても遠くを歩く彼に届くわけもなく、ただ、想いが胸を虚しく駆け抜けていくだけだった。 カミューはふう、とため息をついて踵を返し、兵舎のほうへ歩きはじめた。 言ったら軽蔑される……。 おそらく友人にも戻られなくなるだろう。その恐怖感がかろうじてカミューを思いとどまらせる。 しかし、焦げつくような想いが溢れる寸前なのは確かで。 カミューはもう一度ため息をついた。 その日の夜、カミューは警備の当番にあたっていた。いつものようにマイクロトフと夕食をとって、他愛のない話をする。そうした、ささやかだが楽しいひとときを過ごしたあと、マイクロトフは自分の部屋へ、カミューは警備の詰め所に向かうため別れた。 「がんばれよ」 「ああ。おやすみ、マイクロトフ」 軽く手を上げて自分の部屋へと向かうマイクロトフの後ろ姿を見送って、カミューも詰め所に向かう。 外に出ると、ひんやりとした空気が肌を刺した。マチルダの生まれでないため、まだ寒さになじめないカミューはぶるっと身を震わせる。 寒い日は星が良く見える。 いつだったかマイクロトフが言った言葉を思い出して、カミューは空を見上げた。 空気がぴん、と張り詰めるような寒さの中、澄みわたった夜空に瞬く満天の星が広がっていた。思わず歩みを止める。 故郷では自分のいる方角を把握するために見ていた星が、マイクロトフの言葉ひとつでまったく違うものに見えた。 悲しいくらいに奇麗だ……。 感動すら覚えている自分を見つけ、カミューは自嘲気味に笑った。 まるでマイクロトフの瞳のようだ、とは……。重症だな……、俺も。 それでも、とカミューは思う。 あきらめることができるのなら、とっくにそうしてる。何度、悩んで考え抜いても、結局は同じ結論に辿りつくのだから。 だから、最後のそのときがくるまで、この想いをけっして捨てたりはしない……。 白い季節を運ぶ風がカミューの身体を吹き抜けた。その冷たさにカミューは我れに返って、再び歩きはじめる。 寒い冬がまたやってくる……。 二人が出会った季節。すべてを真っ白に染めてしまう季節。 それでも、激しく燃える恋の炎は誰にも消せはしない。 せつない片想い。あなたは気づかない……。 FIN |