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カミューの指がまるで身体に印がついているかのように的確に敏感なところを探りあて、刺激を与えてくる。 俺は沸き上がる快感を堪えながら、まだだ……と自分に言い聞かせた。先程から意外と冷静にタイミングを図っている自分に、今日こそは成功すると確信していた。 「マイク……マイクロトフ……」 カミューは優しく名を呼びながら優しい愛撫を繰り返す。それを目を閉じて甘受してると、ふと、手が止まった。どうしたのだろう、と目を開けると間近に琥珀色の瞳が俺を見つめている。 「キスして……いい?」 どうして今日に限ってそういうことを聞いてくるのだろうと思った。いつもは唇が腫れるのではないか、というほど何度もキスしてくるのに。 だが、俺の頭に名案がひらめいた。返事の代わりに頭を引き寄せ自分から唇を重ねる。カミューが驚いたように目を見開くのをおかしく思いながらキスに没頭するため再び目を閉じた。 今日は俺が主導権を握るのだからな……。 舌を絡ませ合い、唾液を交換する。互いの身体が熱を帯びるのを感じながら深いキスを繰り返した。薄目を開けてカミューがキスに夢中になっているのを確認すると、俺は一気に行動に出た。力まかせにカミューの身体を抱き込み、上下を逆転させる。 「うわっ?!」 思わぬ展開に声を上げるカミューにかまわず、俺は馬乗りになると勝利の笑みを浮かべた。 「マ、マイクロトフ……?」 「カミュー、いつもおまえばかりが優位だと思うなよ」 今日は俺が主導権を握ってやる、そう言って軽く唇を重ねる。そして、カミューの顔が驚きのあまり硬直しているのを満足げに見下ろした。 ついに……やったぞ!! 俺は勝ち誇ったような笑みを浮かべわずかに身体を揺らした。 「あっ……、マイ、ク……」 カミューは咽喉を仰け反らせ吐息混じりに名を呼んだ。そうして、感じてしまったのが悔しかったのか顔を赤らめ睨みつけてきたが、隠しようのない色めいた瞳ではなんとも迫力がない。 なんとなくそんなカミューが可愛くて、俺は笑いながらそっと頬に手を伸ばした。 「たまには、こういうのもいいだろう?」 「……ク、マイクロトフ!」 ゆさゆさと肩を揺すられる感覚にマイクロトフはぼんやりと目を開けた。目の前にはカミューのちょっと心配そうな顔。マイクロトフは状況がわからず目を瞬いた。その様子にカミューは少し申し訳なさそうな顔になる。 「ごめん。あんまりぐっすり寝てるから起こしたくなかったんだけど……」 さすがにね、と指で差された方向に目をやると時計は2時半を回っていた。 「なっ……!」 マイクロトフは一気に状況を思い出し絶句した。昼食後、すぐに眠気を感じて、しばし格闘していたのは覚えている。どうやらそれに敗北したらしく、いつのまにか寝てしまっていたのだ。しかも1時間以上。 机を見れば書きかけだった書類にミミズが這ったようなインクの跡。もはや字とはいえない落書きとなっている。そして、眠ったと同時にペンが手から離れたらしく、ペンが転がっている付近はインクが大きく滲んでいた。 「おまえがうたた寝なんて珍しいね。やっぱり夕べ無理させちゃったからか……」 ごめんね、と謝るカミューにマイクロトフは真っ赤になってうつむいた。 夢を、しかも、こんな真昼間の執務中にうたた寝してあんな夢を見てしまうなんて。 あまりの恥辱。騎士の恥だ! とマイクロトフは心の中でなじる。しかし、カミューはそんなマイクロトフの心中を読めるはずもなく、マイクロトフが落ち込んでいるのは、真面目な彼のことだから、執務中にうたた寝をしてしまったことを責めているのだろうと思った。 「ちょっと早いけどお茶にしよう。目が覚めるように濃いのを煎れるよ」 慰めるように肩を叩き、準備に取りかかる。マイクロトフはうつむいたまま、猛省していた。 節操のないカミューのことをケダモノだとか性欲の塊だとか散々罵っていたが、俺だって大差ないではないか……! 「カミュー、すまなかった! 俺は最低な男だ!」 突然、大声を張り上げるマイクロトフにカミューは危うくポットを落としそうにながら振り向いた。見れば、マイクロトフは重罪人のような顔をしている。 「え? い、いや、こんなの誰でもあることだろう? そんなに気にしなくても……」 うたた寝ぐらいでそんな大袈裟な……と、曖昧に笑うカミューにマイクロトフは頭を振った。 「俺は、いつもいつもおまえばかりを責めていたが、俺だって所詮は同じ穴のムジナだったのだ!」 確かにカミューは朝はなかなか起きないし、昼もこっそり昼寝をしていてはマイクロトフに見つかり怒られていた。だが、1回の過ちをここまで責めることはないだろう。 「あ、あのさ、マイクロトフ……」 「だがな、カミュー! おまえだって悪いんだぞ!」 思考が飛んでしまうほど夢中にさせるから。 そう思って赤面するマイクロトフをカミューは昨日、一昨日と連続で抱いたことを責められているのだろうと思った。 「ごめん。でも、おまえも悪いんだよ?」 カミューは苦笑いを漏らす。 昨日は自制してマイクロトフの部屋に行かなかったというのに、自分から罠に飛び込んでくるから。 ……カミューの部屋はマイクロトフにとっては罠の巣窟らしい。 カミューの返事にマイクロトフは、心を見透かされたのかと一瞬ひるんだが、自らを奮い立たせてカミューに向かって指を突きつけた。 「それも今夜で蹴りをつけてやる!!」 「は?」 夢の中でばっちりシュミレーションもできたことだし、と、拳を握るマイクロトフをカミューは、今夜は早寝をする、ということなのかな、などと少々見当違いなことを考えながら見守っていた……。 つづく |