〜君のためなら〜




「んっ、カ、ミュー……、こ、ら……、やめっ、ろ……っ!」
「やだ。マイクがいけないんだよ。俺を誘惑するから」
「なっ、俺は何もしてな……んんーっ!」

「貴様ら!! ここで何をしているっ!!」

 背後から一喝されて、マイクロトフは慌てて塞がれていた唇を離すと、乱された制服の襟元をかき合わせた。カミューは、ちっ、じゃましやがって……と舌打ちしながら振り返る。そこにはここ、マチルダ騎士団の頂点に立つ男が立っていた。
「これはゴルドー様。何って、こういうことですので、気を使っていただけるとありがたいのですが」
 出歯亀はいただけませんよ、と薄ら笑みを浮かべるカミューに、ゴルドーはぶちっとキレた。
「ここをどこだと思ってる!! だいたい執務中だろうがっ!!」

 ここ、とはゴルドーの執務室、謁見の間である。マイクロトフはゴルドーの豪奢な椅子に上半身を押し倒され、赤い絨毯に膝をつき、その足のあいだにカミューの身体が割って入っている、というあられもない格好だった。堅苦しい青い制服は胸元近くまで肌蹴られて、すでにいくつか所有印が刻まれている。カミューにはこれ以上はない、というほど扇情的な眺めなのだろうが、ゴルドーにはあいにくその手の趣味はない。鍛え上げられたごつい身体のどこがいいのかさっぱり理解ができなかった。女性やせめて美少年くらいならまだわかるのだが。余談だが、カミューの少年時代は少し狙っていたりした。正体を知ってあきらめたが。

「ゴルドー様が悪いんですよ。留守にしてらっしゃるから」
 しれっと責任転化してくるカミューに、ゴルドーは
「わしだって忙しいんじゃ!! だいたい、数分も席を外しとらんわっ!!」
 と、血圧が上がる勢いで怒鳴り返す。
 ゴルドーの怒鳴り声にカミューは嫌そうに眉を顰めると、しぶしぶ、といったふうにマイクロトフから手を離した。そして立ち上がるとマイクロトフに手を差し伸べて起こしてやる。マイクロトフは憤死しそうなほど恥ずかしかったが、上司の手前、怒鳴り散らすわけにもいかず、とりあえずは襟元を整えはじめた。「色っぽいのに……」と残念そうにつぶやくカミューに肘鉄をくらわす。
 ゴルドーは呆れたようにため息をつくと、
「執務時間外に何をしようと勝手だが、執務中は公私のけじめくらいつけろ」
 と、説教する。マイクロトフは真っ赤になって「申し訳ありません……」と恐縮するが、カミューはどこ吹く風、といった具合だった。
「マイクロトフ、貴様も相棒の手綱ぐらい、きちんと締めろ」
「は……、もうしわけ……」
「そうそう。それで、たまに俺の上にも乗っかってよ♪」
「おまえは黙ってろ!!」
 マイクロトフは真っ赤になってカミューを蹴り飛ばす。ゴルドーは疲れたようにため息を吐くと、「下がれ……」と力なく命じた。



 謁見の間を出、廊下を歩きながら、マイクロトフは火照った顔をそのままにカミューに怒りをぶつけていた。
「まったくおまえは信じられない! あ、あんなところであんなこと……っ!」
「だってー。マイクがあんまり色っぽいから」
 まったく悪びれていないカミューにマイクロトフは怒鳴り返す。
「お、俺が何をしたっていうんだ?! 落ちた書類を拾っただけだろうがっ!!」
「うん。そのときのこのへんのラインがたまらなくて……」
 と、カミューは腰から尻のあたりまでをいやらしく撫で下ろした。ひっと声を上げて腰が引けたマイクロトフは瞬時に茹蛸のように顔を赤らめると、
「この、セクハラ魔!!」
 と、げしっとカミューを蹴る。しかし、カミューは懲りずに腰を抱き寄せ、耳元に低い声で囁いた。
「ね、続きをしようか? 今度は邪魔が入らないところで……」
「するかっ!!」
「えー? でも、さっき中途半端に煽っちゃったからツライでしょ?」
「うるさい! うるさい! うるさいー!!」
 腰を抱く手を叩き落とし、逃げるように足を速めるマイクロトフをカミューが追いかける。マイクロトフの怒鳴り声が聞こえなくなるまで廊下に控えていた騎士たちは鎧像よろしく微動だにしなかった。あの二人の言動は見ざる聞かざるでいるしかないのだ。
 普段は尊敬極まりない赤青両騎士団長だが、二人揃うとカミューが手がつけられない。へたに動いたらあとが怖い……。ちなみに、謁見の間の中で警備担当だった騎士たちは二人が(正確にはカミューが)入ってきたとたん、部屋の外に避難していた。
 マイクロトフと一緒のカミューは歩く環境汚染のような存在だった……。



「ゴルドー様、お願いです!! 俺をどこかに左遷してください!!」
 マイクロトフはもう何度目になるかわからない嘆願をゴルドーに直訴していた。その短い黒髪には草がいくつか絡まっており、騎士服はわずかに乱れ、頬が上気し、全身がどこか汗ばんでいるように見える。どこで何をしてきたか、なんて聞く気にもならないゴルドーは、むう、と眉を寄せた。
「しかしのぅ。ワシも命は惜しい」
 何を言ってるんですか! あなたはマチルダの最高権力者でしょう?! と言い返しそうになったマイクロトフは言葉を飲み込んだ。まさかとは思うがあの男なら……やりかねない。
「しかし、俺はもう耐えられないのです……」
 マイクロトフがかすかに涙をにじませた瞳で力なく訴えると、ゴルドーは重いため息をついた。
 本当に嫌ならとっとと別れればいいのだ。しかし、そんなことを考えてるふうにはまったく見えないし、なんだかんだいってもカミューの意のままになっている、というのは心底嫌ではないのだろう。所詮バカップルなのである。……かなり度がすぎてるが。
「じゃが、忘れたわけではあるまい? あの砦崩壊事件のことを……」
 ゴルドーの言葉に今度はマイクロトフがため息をつく。

 前に、マイクロトフの要望が通り、マチルダのはずれの砦に何ヶ月か赴任を命じたことがあった。ハイランドと都市同盟軍の関係が危うくなっていた時期であり、命令にはなんら不自然を感じさせる点はなかった……のだが。マイクロトフが赴任地へ出発する日、火急の知らせが届いたのだ。砦が何者かの手によって半壊させられたと。幸い犠牲者はおらず、半壊した瓦礫の山が偶然盾のような役目となり、外敵の侵攻は不可能となった。しかし、人が駐在できる状態ではなく、いまでも無人となっている。その半壊した瓦礫はところどころ溶けていた。よほどの高熱でないと岩が溶けることはありえない。そして、その砦に駐在していた騎士たちは一様に何も見ていないと証言し、事件はうやむやとなったのだが。
 どう考えても数十人が待機している砦を半壊されて怪我人の一人もでなかったのはおかしいし、目撃者がいないというのにも無理がある。しかし、騎士たちは頑なに口を閉ざし、終いには「何にも見てないんです! 勘弁してください!」と涙ぐむ始末。
 ついでに言うと、半壊された日はカミューはミューズまでゴルドーの使いに出ており、夜遅く帰ってきた。帰ってきたとたん、マイクロトフの部屋に押しかけ、「しばらく会えないから……」なんてしおらしいことを言って、散々、散々好きに抱いたのだ。

 マイクロトフが問い詰めればあっさりと犯行を認めそうなのだが、あれだけの被害をだした事件が自分のせいで起こった、という事実を受け入れる自信がなかったマイクロトフはそのままにしてきた、という経緯がある。
「……俺が、悪いんでしょうか……」
 ぽつり、とつぶやいたマイクロトフにゴルドーは同情の目を向ける。
「すまんが耐えてくれ」
 多少のことに目を瞑れば、二人とも騎士としては申し分ないのだ。マイクロトフは武術に優れ、カミューは外交関係もうまくこなす。どちらも騎士団長にふさわしい実力だ。ただ、二人揃うと問題なだけで……。
 二人の間にあきらめにも似た重々しい空気が流れたとき、
「失礼します。カミュー様が同盟軍の方々をお連れしましたが」
 と、謁見の間の入り口で番をしていた白騎士が入ってきた。二人はその名にぎくっと身を強張らせる。
 事情はどうあれ、ここで二人きりで話をし、こともあろうかマイクロトフは少し涙ぐんでいたりする。原因が自分にあろうとあの男は聞くはずがない。こんなところを見られたらゴルドーの命が危なかった。
「ま、待て! まだ通すな!!
 マイクロトフ!! どこかに隠れるのじゃ!!」
「ど、どこかってどこですか?!」
「ええいっ! ワシの後ろでいい! 早くせい!!」
「は、はいっ!!」
 マイクロトフは慌ててゴルドーの椅子の陰に隠れた。幸い、椅子は過剰な宝飾が施されているため、幅が広めにできている。ゴルドーはちらり、と後ろを見、少しはみ出ていた青い制服の裾を隠すようにふんぞりかえるように座りなおした。
「よ、よし、通せ」
「は、はい……」
 冷や汗と脂汗を一緒にかいてぜいぜい息を切らしているゴルドーの言葉に、白騎士はいったん謁見の間を出た。きっと寿命が縮んだことだろう、とそっと上司に同情する。
 ゴルドーが息を整えていると、ドアが重々しく開き、カミューを先頭に数人が入ってきた。部屋に入ったとたん、カミューの目がきらん、と光ったような気がしたが、ゴルドーは気のせいだと必死に自分に言い聞かせる。
 犬でもあるまいし、臭いで気付くはずが……あるかもしれない。もしくは気配で察知。もはや人間技ではない域だ。
「ゴルドー様、同盟軍のリーダー殿たちがお見えです」
 笑みを浮かべ告げるカミューに、ゴルドーは震えないよう肘掛を掴んでいる指に力を込めた。視線が椅子の後ろあたりに向いているような気がするのは気のせいか?
「う、うむ……」
 カミューの言葉にまだ年端もいかぬ少年が前に進み出る。そして、ここにきた目的を話していたように思うが、カミューの視線が恐ろしくて話などほとんど耳に入ってこなかった。少しでも早く出ていくように適当に返事をしているうちに謁見は終わった……らしい。
 カミューたちが出ていくとゴルドーは腹の底からため息を吐いた。マイクロトフも椅子の後ろから這い出て、ため息をつく。
「……ばれなかったでしょうか?」
「…………あとはおまえがなんとかせい……」
 自分の身の不幸を嘆かずにはいられないゴルドーであった。



「さあて、白状してもらおうかな、マイク。ゴルドー様と何をしていたんだい?」
 ずい、と1歩近づいてきたカミューに、マイクロトフは追い詰められた獲物のように後ずさった。しかし、背中に壁があたり、逃げ場を失ったことを知る。
「ま、待て、カミュー! 別にへんなことは何もしてないぞっ!!」
「だったら、どうして隠れたりしたんだい?」
 あくまでも笑みを絶やさないカミューが却って怖い。マイクロトフは必死に首を振った。
「別にたいしたことを話していたわけではないのだ! ただ、突然のことにびっくりして……!」
「嘘つきだね、マイクは。いいよ。もっと正直なところに聞いてみるから」
 カミューはにんまりと笑うとマイクロトフの両手を片手で拘束し、首筋に唇を寄せる。マイクロトフはぎょっとした。ここは城内の廊下。誰が通りかかってもおかしくない。
「ばっ、ばか!! やめろ、こんなところで!!」
「マイクが悪いんだよ。俺に嘘をつくから」
 ぺろ、と首筋を舐められてマイクロトフはびくっと身をすくめた。力が抜けそうになる膝を叱咤し、なんとか逃れようと必死に身を捩る。
「は、なせっ……!」
「だーめ」
 カミューは言うが早いか唇を塞ぎにかかった。そして、口付けたまま壁に押えつけようとするカミューと逃れようとするマイクロトフとの間に激しい攻防を繰り広げられる。マイクロトフの形勢が不利になった頃、背後からのんきな声がかかった。
「あれー、カミューさん? 何してるんですか? こんなところで」
 背後には同盟軍のリーダーを務めている少年とその義姉が立っていた。どうやら部屋に待機しているのが退屈で、出てきたらしい。
 子供にこんなところを見られた! とパニックになっているマイクロトフを余所に、カミューはにっこりと笑うと、
「これはリーダー殿、ナナミ殿。城の中の探索ですか?」
 と、なんでもないように声をかける。一瞬、マイクロトフの手を拘束する力が緩んだ機を逃さず、マイクロトフはばっと力任せに振りほどいた。
「カ、カミュー! 俺はミューズがどうなっているのか知りたい! この目で確かめてくる!!」
 そう叫ぶや否や、マイクロトフはどどどどどっと物凄い勢いで廊下を駆けていく。カミューは「あーあー」と、可愛い小動物が必死に駆けていく姿を見送るがごとく、うっとりと後ろ姿を見送ると、くるり、と茫然と成り行きを見守っていた姉弟に向き直った。
「もうしわけありませんが、マイクロトフを頼みます」
 と、惜しげもなく、無敵スマイル(自前)を浮かべてみせた……。



 ミューズに到着したマイクロトフはどっと疲れていた。道のりが長かったせいもあるが、誰に会っても「カミュー様が……」という単語が出てきたのが主な原因だった。一体、どこまで手を回していたのか、まったくもって恐ろしい。
「逃げたい……」
 ぽつん、と望みが口に出た。そう、逃げ出したい。カミューが自分を想っていてくれてるのは痛いほど、本当に痛いほどよぉーっくわかるのだが、ちょっと度が過ぎている。ときどきついていけないことがあるのだ(ちょっと、とか、ときどき、と言ってる時点で既にかなり感化されてます)。
 しかし。このまま逃走するわけにはいかない。騎士団がどうなることか。いや、青騎士団のことは心配いらない。みんなしっかりしているし、よくまとまっている。問題はあの男がどうでるか、だ。たぶん、いや、必ずといっていいほど周りに迷惑をかけるだろう。しかも莫大に。
 何かいい手はないものか、とマイクロトフはため息をついた。
「あ。いたいた。マイクロトフさーん」
 背後から声をかけられ、振り返ると、そこには同盟軍のリーダーたちご一行がいた。
「あなたがたは……! どうして、ここに?」
「うん。カミューさんにマイクロトフさんのことを頼まれちゃって」
 えへ、と無邪気に笑うリーダーのセリフにマイクロトフは打ちのめされる。騎士たちだけではなく、こんな年端もいかない少年たちまでカミューの名を口にするとは。
「じゃあ、さっそくいってみようか」
 と、ミューズの街に入っていくリーダーたちの後ろを、マイクロトフは力なくついていった。



「それにしてもあの炎、なんだったんだろうね〜?」
 ミューズからの帰り道、ナナミが首を傾げた。

 あの炎、とはミューズの街でハイランドの狂皇子の手によって獣の紋章から目覚めた金色の獣に襲われたとき、突如現れた猛火のことである。炎は一行を、厳密にいえばマイクロトフを守るがごとく、金色の獣を焼き尽くしたのだ。リーダーたち同盟軍の面々はさっぱりわけがわからず首をひねっていた。……マイクロトフはひとり青ざめていたが。マイクロトフの耳にははっきり聞こえたのだ。「最後の炎ぉぉ!!」というそれはもう気合いの入った声が。

 マイクロトフは曖昧に笑いながら、一大決心をする。

 同盟軍に入ろう!

 同盟軍に入ればカミューと離れられる。騎士団を裏切るのは心が痛むが、これ以上は我慢できない。カミューが普段はああでも騎士団をとても大事に思っているのは知っている。彼は思慮深いし、勝ち目の薄い同盟軍に身を投じることなどありえないだろう。みんなの前で謀反を口にすればカミューとて追ってはこられないはずだ。
 マイクロトフはそう結論づくと、急に目の前が開けたような明るい気持ちになった。
「さあ、リーダー殿、早く帰りましょう!」
「そうだね。きっとカミューさんがとても心配してるよ」
 リーダーの無邪気な言葉に、マイクロトフは挫けそうになる心を必死に叱咤した……。



 城に着くと、門のところで思っていたとおりの人物が待ち構えていた。マイクロトフの姿を確認するや否や、紫のマントを翻して物凄いスピードで駆け寄ってくると、避ける間もなくマイクロトフにがばっと抱きつく。
「ああ、マイクロトフ!! よかった! 無事だったんだね! 俺はもう、心配で心配で……!」
 汗をかくどころか、髪の一筋も乱れていないのが却って恐ろしい。しかし、いまのマイクロトフはそんなことぐらいでは怯まなかった。
「カミュー! ゴルドー様はどこだ?!」
 ほっぺにちゅーしようとしていたカミューはいきなり怒鳴られて目をぱちくりさせる。
「……ゴルドー様なら謁見の間にいらっしゃるよ」
「そうか!」
 マイクロトフは応えるなり、カミューをぽいっと投げ捨てると、謁見の間に向かって走っていった。しかし、何を思ったか途中で立ち止まると、再びカミューの元へ戻ってくる。
「カミュー!」
「なんだい?」
「カミューは何があっても騎士団を裏切らないよな?!」
 いきなりの問いにカミューは「?」と思ったが、とりあえずはマイクロトフがいちばん喜びそうな答えを満面の笑みと共に口にする。
「ああ、もちろんだとも。そんなことするはずがないだろう?」
「そうか。絶対だぞ!!」
 マイクロトフはそう言い残してまた走り去っていった。残されたカミューは茫然と後ろ姿を見送っていたが、姿が見えなくなると頬に手をあてる。
「もう。マイクったら照れ屋なんだから」
 幸い、離れた位置にいた同盟軍の一行の耳には届かなかった。



「俺は騎士である前に人間だ!!」
 マイクロトフは騎士の証であるエンブレムを床に投げ捨て、ゴルドーに向かって激昂する。本当はカミューの所有物じゃない! と叫びたかったが、さすがにそれはあまりにも情けなくてやめた。
 マイクロトフの言葉にゴルドーは、こうきたか……と、内心ため息をつく。逃げ出したい気持ちはわかる。しかし、アレを置いていかれても非常に困るのだ。
「カミュー! マイクロトフを捕らえろ!」
 ゴルドーの命令にカミューは即座に従うだろうとマイクロトフは思った。マイクロトフはここが正念場だ、と身構える。
 しかし。
「マイクロトフを捕らえる? それはできませんね」
 カミューは涼しい顔をして言ってのけた。は? と周りが目が点になっているのにもかまわず、優雅な足取りで1歩前に進み出る。そして、胸のエンブレムに手をかけると、一気に引き千切り、ゴルドーに投げつけた。そのエンブレムはカミューの烈火の紋章によって加熱され、焼印のごとく熱かった。
「あちゃちゃちゃっ!!!」
 額に命中したゴルドーが悲鳴を上げると、カミューは芝居がかったしぐさで両手を広げた。
「ほら。私とマイクの愛はこんなに燃えているのですよ。二人を引き裂くなんて誰にもできないのです」
 と、なんの臆面もなく言い放つと、マイクロトフに向き直る。ゆっくりと近づいてくるカミューにマイクロトフはざあっと青ざめた。
「まっ、待て!! おまえ、騎士団を裏切ることはないって言っただろうがっ!!」
「ああ、あれは『マイクがいる騎士団なら』っていう前提付き♪」
「ふざけるな!! おまえにとって騎士団とはその程度の存在なのか?!」
「騎士団がその程度、なんじゃなくて、おまえがそれ以上、なんだよ」
 さらりと嬉しいことを言われ、マイクロトフは一瞬反応が遅れた。それが命取りになる。
「俺たちはどこまでも一緒だよ……」
 囁きと共に、あっと思う間もなく唇を塞がれた。なんとか離れようと暴れるマイクロトフをやすやすと押えつけてひととおり堪能すると、カミューは唇を離す。腰に力が入らなくなってしまったマイクロトフはカミューにすがるような格好のまま睨みつけた。
「ばっ、ばかもの!! こ、こんな公衆の面前で……っ!」
「ふふ。照れなくていいんだよ。いまさらだろう?」
 ほんとにな。ゴルドーや周りに待機している騎士たちはうんざりと思った。
「だっ、だが、俺たちが離反したら、騎士団はどうなるんだ?!」
「心配いらないよ。……ごらん」
 ぎろり。
 カミューの視線を受け、待機していた赤・青騎士たちは慌てて胸のエンブレムを外し、投げ捨てた。……外さなきゃ殺られる。
「ほら。彼らも我々と行動を共にしてくれるって。さすがマイクの人徳のおかげだね」
「何を言っている……。カミューの人徳だろう……」
 カミューの笑みに照れたように視線を逸らすマイクロトフ。なんだかんだいってもけっきょくはいちゃついている二人にゴルドーは、早く出ていってくれ、と心底祈った。そして、同盟軍の面々はこれから先が限りなく不安になったのは言うまでもない。


 そして、同盟軍の本拠地で部屋数の関係で相部屋を余儀なくされたマイクロトフはマチルダを離れたことを心底後悔したという……。その隣ではカミューが文字通り狂喜乱舞していた。



 おしまい(汗)




アホでーす。すみませんー。
祭から帰ってきていきなりこれですか。全然ダメっぽいですね。
朝、犬の散歩にいってるときに思いつきました。
書いてる本人だけおもしろかったです〜。ははは。
カミューファンですよ?(笑)


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