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室内は荒い呼吸音と熱気に包まれていた。カミューの抽出する動きに合わせてぎしぎしと安物のベッドが軋む。マイクロトフは朦朧とした意識の中で壊れないだろうか、とちらりと思った。 部屋に入ったとたん背後から襲われ、床で1回交わった。そのあと、身体が痛い、と抗議してベッドに場所を移したのだが、安い宿の寝具が大の男が2人でこんな使い方をするようにできているはずもなく、なんとも頼りない音を立てている。 獣のように四つんばいで腰を高く持ち上げられた体勢で受け入れさせられているマイクロトフは振り返ってカミューを仰ぎ見た。 「カ、ミュー……っ、壊すなよ……」 「なに? そんなにイイ?」 目を細めるカミューにマイクロトフは真っ赤になる。 「ば、かっ! ベッドだ!」 「ふうん。まだベッドのことを心配するだけの余裕があるんだ?」 からかうような笑い声が上がったかと思うと、 「っ……!」 深く抉られマイクロトフは顎を仰け反らせながら白濁の液を吐き出した。身体を支えていた肘から力が抜けるとカミューが背中から覆い被さってくる。 カミューは魔物ゆえ、達するという感覚がない。マイクロトフが達すると繋がった部分から『精』と呼ばれる力がカミューの中に流れ込んでくる、とはカミューの説明だった。 「マイクロトフ……」 囁いた後、ぺろり、と耳の裏を舐められ、マイクロトフの背筋がぞくぞくっと震えた。 「まだいけそうだね」 わずかに力を取り戻した中心を握り込まれ、マイクロトフはくっと眉を寄せる。 「まだするのか……?」 「だって足りないし」 今日は頑張ったからねー、と、どこか楽しげに言うカミューにマイクロトフはあきらめのため息を吐く。確かに今日も相当な力を使ったのだから、足りないと言われれば与えるしかないのだ。これがカミューの『食事』となるのだから。 しかし、仕方ない、と思う一方で、心底拒めずにいる自分に気付いていた。 淫魔ゆえか、行為によってもたらされる快楽は並大抵のものではなかった。はっきりいって悦すぎるくらいに悦いのだ。中毒性のある薬でも使ったかのように行為を重ねるたびに頭の中を真っ白にするまでの快楽に溺れていく。 それを怖い、と思いつつも止められない自分がいた。だが、やはり限度というものがある。受け入れる身体の負担は大きく、カミューに好き勝手させると必ずといっていいほど次の日に響く。 マイクロトフは無駄とは思いつつ、抵抗を試みた。 「ベッドが壊れる……」 「だから下でやったんじゃないか」 からかうような笑みを浮かべたカミューにマイクロトフは、我慢できなかっただけだろう、と心の中で毒づく。ドアはそんなに厚い造りではなく、廊下を歩く足音や人の声が聞こえたりした。その傍での激しい行為に、心臓に悪いことといったらなかった。 「床は身体が痛いと言っただろう」 「じゃあ、上になればいいじゃん」 「絶対に嫌だ」 上になれ、とは受け入れる側を交代するということではない。カミューに跨れと言っているのである。いわゆる騎乗位という体勢は前に無理矢理やらされたのだが、顔は間近で見られるわ、自分で動かなくてはいけないわで、その恥ずかしさといったらなかった。それ以来、二度とやるものか、と固く心に誓っている。……理性が飛んだ頃に無理矢理体勢を入れ替えられ、やらされたことはあるが。 「………………………」 「………………………」 2人はしばし無言で睨み合った。 「どうしてもやらせないつもり?」 「そ、そうは言っていない。だが、ベッドが壊れるのは困ると言っているんだ」 「……そう。じゃあ、ベッドを使わなくて床の上じゃなければいいんでしょ?」 マイクロトフは思わず頷いた自分を後で激しく後悔するはめになった……。 普段は噛み締められるマイクロトフの唇から断続的に声が上がった。いつもカミューに声を聞かせろ、とせがまれても、そんな恥ずかしい真似ができるか、と拒んでいるというのに、今はとても堪えられる状況ではなかった。 マイクロトフの身体は宙に浮いていた。それを支えているのは足を抱えているカミューの腕とカミューと繋がった部分のみ。あとは必死にカミューの背中にすがりついている己の腕だけである。そんな不安定な体勢だというのにカミューの攻めは容赦なく、しかも重力がカミューの中心をより深く飲み込んでしまい、普段はあたらないような奥まで突き上げられた。堪える間もなくあっけなく達すると、柔らかくなった秘所がカミューの中心を更に深く迎え入れてしまう。おそろしいまでの悪循環だった。 まさか、成人男性としてもかなり体格のいい部類の自分がこんな体勢をとらされるとは思っていなかったマイクロトフは、相手が魔物だったことを失念していた自分に舌打ちしたい思いである。 「さい……っ、ていだ、おまえっ……!」 切れ切れに悪態をつくと、 「どうして? 床でもベッドでもないのに?」 楽しげに返された。状況が状況でなかったら2、3発殴ってやりたい、と思いつつ、マイクロトフは悔しそうに唇を噛む。そんなマイクロトフを間近で見つめたカミューは、笑みを深めると更に深く抉った。とたん、噛み締められた唇が耐えられないというように開き、吐息というには荒い呼吸が声とともに漏れる。真っ赤になって、ぎっと睨みつけてくるマイクロトフにカミューは余裕たっぷりに目を細めた。 「おまえの我侭を聞いてやったというのにな」 「だま、れ……っ!」 「やれやれ。これ以上、何をお望みかな?」 あやすように言われ、マイクロトフは他でもない原因そのものに救いを乞わねばならない事態に屈辱を感じたが、他にどうすることもできないこともわかっていた。そして、おそらくはカミューも何を言われるのかわかっているくせにおもしろがって聞いてくるのだ。 言葉を交わしている間も止まることのない律動、そして、それによってもたらされる悦楽にマイクロトフは理性のかけらをかき集め、息も絶え絶えに乞うしかない。 「声を……」 上げたくない、という望みは重なってきた唇によって叶えられた……。 |