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マチルダ騎士団は白・赤・青の3つの団で構成されている。団にはそれぞれ特色があり、厳しい訓練をくぐり抜けた従騎士たちは騎士に昇格する際に、上司たちの判断によってむいていると思われる団に配属される。 その中で、白騎士団はいわゆるエリートたちで構成されている団だった。優れた技能、才能を持つ騎士たちが配属されている。家柄がいい、というだけで所属する者もいたが、それは権力社会の世の中では決してなくなることのない歪のようなものだろう。 だが、そんな一部の歪など知る由もない若き従騎士たちは、当然、白騎士団に配属されるのを目指し、日々訓練を重ねる。しかし、年端のいかない少年たちが従騎士の期間のうちに才能を存分にアピールできることは稀で、年に数人程度配属されるのが通例だった。大抵は他の団に何年か所属し、才能を開花させ、白騎士団に異動するのだ。 そんな狭き門の白騎士団に、今年は2人の少年が配属された。 その少年たちの名は、1人はマイクロトフ、そして、もう1人はカミューという。 2人は周りが18歳前後に入団する中、マイクロトフが15歳、カミューが16歳という年少での入団となった。しかし、年上相手に群を抜く才能を見せ、その実力は誰もが認めるところであり、白騎士団への配属が決まっても異論を唱える者などいなかった。 「やったな、カミュー! 2人とも白騎士団に配属されたぞ!」 漆黒の瞳を輝かせ、嬉しそうに話すマイクロトフにカミューは琥珀色の瞳を細めた。 「よかったね。日頃の訓練の賜物かな」 と、少々おどけた口調で応えると、マイクロトフは唇を尖らせて反論する。 「おまえが言うな」 カミューが努力している姿など見たことがない。朝練にだって誘ってもこないし、私室で予習復習をするわけでもない。それなのに、剣技も知識もトップクラスだったのだ。 カミューが天才肌なのは知っているが、もう少し自分の剣の相手をしてほしかったマイクロトフの拗ねた表情に、カミューは、ふふ、と笑うとマイクロトフの唇に、ちょん、と人差し指を押し当てた。 「言ったでしょ。俺たち2人を引き離せるものなんてないんだって」 「カ、カミュー……」 カミューのからかいの中に色を含んだ視線に、マイクロトフが恥ずかしそうに頬を染めて俯いてしまう。と、後ろから、ゴホン、と咳払いする声が聞こえた。2人が振り返ると、どこか居心地が悪そうな表情の教官が立っている。 そう。2人がいたのは従騎士の配属先が公表された掲示板の前だった。周りには当然、他の従騎士たちもいる。しかし、悲しいかな、同期たちは2人のこんな姿にすっかり慣れていた。今となっては視界に入れないように避けて通ることなど朝飯前である。そんな周りをカミューは気にしていなかったし、マイクロトフは気付いていなかった。 「ありがとうございました。俺たち、白騎士団に配属されました!」 マイクロトフが嬉しそうに、ぺこり、と頭を下げた。その隣ではカミューが柔らかい笑みを浮かべて軽く会釈する。 「う、うむ。そうだな。おめでとう。おまえたちの実力なら白騎士団でも立派に勤まるだろう。これからも精進を怠らないようにな」 少々ぎこちない励ましの言葉だったがマイクロトフはそんなことを気にする性質ではなく、元気良く頷いた。 「はい!! これからも諸先輩方からいろいろなことを学び、頑張ります!! なっ、カミュー!」 「うん。2人で頑張ろうね、マイクロトフ」 「……………………」 顔を見合わせて頷き合う2人を見て、なんともいえない顔で沈黙する教官に、カミューが感情を読ませない笑みを浮かべてわずかに首を傾げる。 「どうかしましたか?」 「い、いや、では、2人とも、これからの活躍を楽しみにしてるぞ……」 教官は励ましにしては力なく2人に告げると、とぼとぼとその場を去った。その後ろ姿は厳しい訓練の最中、くじけそうになる従騎士たちを叱咤激励し続けた教官の姿からは程遠い、戦いに敗れた者のようなどこかもの寂しい。というのも、教官はある目的があって2人に声をかけた。だが、それを果たすことができなかったのである。 確かにこの2人の実力は誰もが認めるところであり、これからの活躍はおおいに期待できるものであった。しかし、ただひとつ。2人の素行に非常に問題があったのだ……。 個々にはなんら問題はない。個性は違えど、2人の優秀ぶりは後輩たちの手本にしてもいいくらいだ。 カミューは頭の回転が早く、いろいろと機転が利いたし、なんでも器用にこなしてみせた。剣技も戦略の立て方も申し分なく、常にトップクラスに存在した。そして、人付き合いも上手かったため、異国出身、というハンデも、ずば抜けた能力を妬まれるという危惧も、ほとんど背負わずに済んだ。 一方のマイクロトフは、常に鍛錬を怠らず、入団当初はいちばん背が低く成長が遅かったのが、今では同期の中でも1、2を争う立派な体躯の持ち主となっていた。剣技に関しては右に出る者はおらず、多少融通のきかない堅苦しいところはあったが、潔いほど真っ直ぐな性格はその不器用なところすら美点とした。 そんな正反対の2人は入団当初、ことあるごとに衝突した。どうやらカミューのほうは周りと同じようにマイクロトフと接しようとしたが、真っ直ぐな性格ゆえか、本能的に本質を見抜いてしまうマイクロトフはそのうわべだけの態度が気に入らなかったらしい。奇しくも同室となってしまった2人の険悪ぶりは大人である教官たちの目から見ても心配するほどであったのだが、どういうわけかある日を境にそれはぱたっとなくなった。それどころか、ことあるごとに行動を共にするようになった。それに伴い、互いにいいほうに影響を受けたらしく、カミューは夜の外出が減り、マイクロトフは少し柔らかくなった。 それに周りがほっとしたのも束の間。 今度は今までの反対のことを心配することとなった。つまり、2人はどうやら「できあがって」しまったらしいのだ。 いや、仮定はするまでもない。どうみても完全にできていた。 そういうことには疎くなっているはずの中年の教官たちですら「おまえらデキてるだろう」とわかるくらいあからさまだったのだ。 手を握る、見つめ合ってピンク色の空気を醸し出す、口付けんばかりの至近距離で囁き合っては笑い合う、など日常茶飯事。物陰でキスはするわ、人目を盗んではカミューがマイクロトフにセクハラするわ。やりたい放題であった。 カミューは人目をまったく気にすることなく、四六時中べったりとくっついているし、マイクロトフはそれを気にも留めないのか、振り解くことをしない。しかし、キスやらセクハラはマイクロトフが怒って止めさせるため、一応は人の目につきそうなところでやることではない、という自覚はあるのだろう。だが、それ以外のスキンシップには無反応だったことから、おそらくは自分たちが回りから見ればどうなっているのかわかっていないようだ。友情に毛が生えたくらいの感覚なのかもしれない。それは間違いなくカミューの手によってマイクロトフの感覚が麻痺してしまっているとしか思えなかった。 先程、教官がわざわざ咳払いをしてみせたのも警告のつもりだった。仮にもエリート集団と言われる白騎士に配属になったのだから、2人の関係を少し忠告しようと思っていたのだ。だが、カミューはまったく悪びれないし、マイクロトフはまったく無頓着である。せめてどちらかが恥らってくれれば注意のしようもあるのだが……。 きっかけが掴めず退散するしかなかった教官は、あきらめ半分、正直なところ自分の手から離れるのを喜んでもいた。周りへの悪影響を懸念してなんとかしようと思ったのも一度や二度ではなかったが、それはとうとう一度も成功することはなかった。疎いまでに純真なマイクロトフと、すべてを承知のうえで振る舞うカミュー。両極端の2人に手を焼いていたのも事実である。 ま、騎士になれば四六時中一緒にいることもできなくなるだろうしな……。 若気の至りでそんな関係になってしまったのだろう、すぐ熱は冷める、と思っていた周りの予想に反してさらにエスカレートしていったのにはまいったが、それもこれから大人になるにつれ、自分たちの不毛な関係に目が覚めるだろう。 それに、と教官は思う。 白騎士団のもうひとつの『顔』を知ったらどうなるだろうか……。 2人の白騎士団配属が決まったとき、教官は反対した。まさかあの2人は恋人同士だから、とは言えなかったが、自分が反対したところで、上からの命令が覆るわけもなかった。反対したのには、同じ団に配属するのはよくない、というのもあったが、もうひとつ理由がある。白騎士団でなければ反対しなかったかもしれない。 白騎士団は表向きエリートと一部の育ちのいい騎士の集まりとなっている。だが、その実は……。 私は反対したからな……。 後は知らないぞ、と教官は厄を払うように首を振った……。 「ぐ〜ふっふ〜。今年も美形が入ったぞい」 不気味な声で笑い声を漏らしているのは白騎士団第一部隊隊長・ゴルドーであった。彼は、いずれはマチルダ騎士団の頂点である白騎士団長に就任するだろうと言われている男である。それは騎士としての素質ではなく、家柄と欲深い性格ゆえ、であった。権力がものをいうのは世の常。誇り高い騎士の世界といえども例外ではない。 そして、このゴルドーには困った性癖があった。 「カミューにマイクロトフか。楽しみじゃのぅ〜」 ……無類の美少年好きだったのである。 人事もある程度自分の思い通りになるゴルドーは、従騎士の中から選りすぐりの美少年を自分の元に置いた。顔が基準なため、それほど実力がない者は盛りが過ぎた頃に他の団に異動させればいい。そして、赤・青の優秀な者を適当にこちらに異動させれば、自分の隊の能力も問題ない。 「2人ともかなり優秀だと言うし……。一生、ワシの元に置いておいてもいいのぅ」 ゴルドーは先程、少々緊張した面持ちで挨拶にきた2人の顔を思い出し、ぐひひ、と下卑た笑い声を上げた。 陰では私利私欲の偏った配属が行なわれているとは知らない従騎士たちは純粋に白騎士団に憧れていたのである……。 カミューとマイクロトフはロックアックス城内の廊下を並んで歩いていた。隣を歩きながら大きく息をつくマイクロトフを見て、カミューは、ひょい、と顔を覗き込む。 「緊張した?」 2人は、これから上司になる白騎士団第一部隊隊長・ゴルドーの元に挨拶に行った後だった。 「ああ。おまえはしなかったのか?」 白騎士団の筆頭部隊である第一部隊の隊長など、マイクロトフたちにしてみれば雲の上の存在である。頭が真っ白になって何を言ったのかすら覚えていない様だ。 だが、カミューは違ったらしい。 「隣にマイクがいたからね」 片目を瞑って見せるカミューにマイクロトフは呆れたように眉を寄せた。謁見の際、2人は並んで起立していたのだが、カミューの手がわずかに動き、自分の手に触れてきたのを思い出す。カミューの手が戯れるように触れてくるせいで、妙に落ち着かなかったのだ。偶然かと思ったが、この様子では……。 「おまえ、あれはわざとだったな!」 「えー? だって緊張したんだもん」 「緊張したら俺に触るのか?!」 「うん。マイクに触るとなんか落ち着くんだよね」 まったく悪びれない態度にマイクロトフの眉が吊り上がった。 「おまえな……」 「なんか、ゴルドー様って思っていたのと違ったなぁ。ね、そう思わない?」 カミューは旗色悪し、と判断したのかすばやく話題を変える。マイクロトフは突っ込みたいことがまだあったが、律儀な性格ゆえか、つられやすいのか、つい付き合ってしまう。 「まあ、そうだな……。もっと厳しそうなお方だと思っていたが」 対面したゴルドーは思いのほか、優しげに励ましの言葉をかけてくれたのだ。 「ね、人は見かけじゃないよねぇ」 ゴルドーの顔には刀傷と思われる傷跡がある。それにより凄みが増し、厳つい人物のように見せていたのだが、実際に会ってみると武人というよりは政治家のような雰囲気だった。少々恰幅がよかったのもそう思わせた原因のひとつなのかもしれない。 そして、カミューは敏感にゴルドーの人となりを感じ取っていた。元々、白騎士団のそういった類の噂は聞いていたのだが、半信半疑だったのが確信に変わっただけのこと。 まあ、俺たちの美少年ぶりからいって選ばれるのはわかるけどね。でも、あんな白ブタがマイクロトフに触っていいはずがないだろう。 カミューが物騒な考えにふけっていると、むにっ、と頬を掴まれた。 「ふぁいふほほふ?」 見れば何やら不機嫌な様子。カミューは何か気に障るようなことをしただろうか、と不安になる。 「見かけによらない、なんておまえが言うな」 カミューは一見、少女に間違われそうなほど整った顔立ちをしているが、その実、女性的なところはかけらもない。それどころか、普段は涼しい顔を崩さないくせに、本音を晒すときはどこか野生じみた雰囲気さえ漂わせる。身体の線も細いように見えるが、無駄な肉がないだけできちんと鍛えられていた。そして、いつも……特に夜、自分を翻弄してばかりの彼にマイクロトフはちょっと悔しい気持ちになる。 そんなマイクロトフの心境など、薄く染まった頬を見ればカミューには簡単にわかってしまう。だらしなく笑み崩れたかと思うと、ぐい、とマイクロトフの腕を引き、バランスを崩したところを柱に押し付ける。 「な、に……っ?」 言いかけた口を柔らかいものが塞ぐ。見開いたマイクロトフの視界いっぱいがカミューの顔になった。 「んっ……」 緩く唇を食まれ、マイクロトフは慌てて腕を突っぱねてカミューを引き離す。 楽しげな、それでいて不服そうな表情を浮かべるカミューを赤くなった顔で睨みつけた。 「こんなところでよせ!」 「ごめんごめん。あんまり可愛いこと言うから、さ」 ついね、とカミューはマイクロトフの鼻をちょい、と突っつく。 「かっ、可愛いとか言うな!!」 入団当時は小柄だった身体も、成長期がようやく始まり、遅れた分を取り戻すかのようにぐんぐんと身体つきが逞しくなってきたというのに。一時期は頭ひとつ分の差があったカミューとも今では並びかけている。顔つきも、男らしいとか精悍だとかは言われたことがあるが、可愛いなどとはお世辞にも似合わない。恋愛上は受身であることから女に例えられたようでマイクロトフには屈辱だった。 「顔つきから言ったらおまえの方だろうが!」 可愛い、というよりは綺麗なのだが。マイクロトフはそう思いながらも悔しくて言い返した。 「えっ? 俺のこと、可愛いって思ってくれてたの? 嬉しいなぁ」 しかし、敵は一向に堪えた様子がなく、喜ぶ始末である。攻撃が失敗したどころか、逆効果だったことにマイクロトフは憤然として唇を噛み締めた。すると、からかいすぎた、と思ったカミューが宥めるように笑う。 「もちろん容姿とかじゃないよ。そうやってムキになるところが可愛いんだ」 ムキになる、と言われ、怒っている自分がまさしくそれだと気付くと、マイクロトフは情けないような気持ちになった。 「……おまえは俺をからかってばかりだ」 憮然としているというよりは泣きそうな表情にカミューは苦笑いして自分とさほど変わらない位置にある頭をよしよしと撫でる。 「しょうがないだろ。年上なんだから」 「年上っていったってひとつしか変わらないじゃないか!」 「ほら。またムキになる」 カミューは、しょうがないなぁというふうに笑うと、頭を撫でていた手で前髪をかきあげ、露になった額に口付けた。そのしぐさは母親が子供にするような優しさを感じさせるもので、マイクロトフは真っ赤になって額を押さえる。 何を言ってもまったく勝てない。 無言で睨みつけてくるマイクロトフにカミューは楽しげな笑みを浮かべてみせた。その余裕ぶった態度にマイクロトフは自分がまたムキになっていることに気付くと、ばつの悪そうな表情になる。 「いいんだよ。マイクロトフはそのままで」 可愛いから。 カミューがくすくす笑うと、マイクロトフは耐えかねたように、 「おまえなんか、もう知らん!」 と、どんっと突き飛ばして走り出した。カミューは笑いながら「待ってよー」と後を追う。 廊下に静寂が戻った。 「……ほんと、こんなところではよしてもらいたいな」 「あれが今年の白騎士か……」 普通に立っていたのにまったく存在に気付かれなかった警備の騎士たちが2人の大物っぷりにため息を吐いた……。 「うーん、やっぱり思ったとおりだ。マイクには白がよく似合うね」 「そ、そうか?」 面と向かって褒められて、マイクロトフは恥ずかしそうに頬を染めた。初めて袖を通した騎士の制服はまだ生地が固く、身体に馴染まない。どこか着心地悪そうに袖を引っ張ったり、背中を見ようとする姿にカミューはくすり、と笑みを零した。小首を傾げ、すい、と手を伸ばすとマイクロトフの襟に触れる。 「俺はね、おまえに白騎士団長になってほしいんだ」 「え?」 突然の話に目を瞬かせるマイクロトフにカミューは優しく目を細めると、少し乱れていた襟を正してやった。マイクロトフはカミューのセリフとそのしぐさにとまどったように視線をさまよわせる。 「そ、そう簡単になれるものではないだろう……」 白騎士団長とはすなわち騎士団のトップ。その地位に就いてほしい、などと大それたことを言われ、マイクロトフはわずかに赤面する。もちろん目指すからには一番上を望みたい。だが、まだ従騎士から正騎士に昇格したばかりだというのに、それはあまりにも先走りすぎだと思った。 そんなマイクロトフの心理などお見通しとばかりにカミューはにっこりと笑う。 「大丈夫。おまえならきっとなれるよ」 「……カミューのほうが実力もあるし、ふさわしいと思うぞ」 カミューは従騎士時代中、剣技をはじめ、何においても、マイクロトフに次ぐ2番手に甘んじることが多かった。だが、それは本気を出していないからだということにマイクロトフは程なく気付く。何事にも真面目なマイクロトフは、最初はムキになって、カミューが実力を出し切らないことを問い詰めたものだが、カミューは「そんなに手を抜いているわけじゃないよ」と苦笑して見せ、それでもマイクロトフが納得しないと知ると、「自分みたいな余所者が一番になったりしたら、いろいろと不都合があるのさ」と飄々とした笑みを浮かべるだけで取り合わなかった。マイクロトフはそれが非常に不満だったが、カミューが本気を出さないまでも、マイクロトフと同等、という位置は他に譲る気がないことを知り、渋々容認している。 「俺はトップじゃなくていいんだよ。おまえの隣に居られれば」 穏やかな笑みを浮かべるカミューにマイクロトフはやはりどこか納得がいかないのと気恥ずかしいのとでいたたまれなくなり、顔を背ける。カミューは、やれやれ、と、あきれているというには優しすぎる笑みを浮かべたまま、マイクロトフの両頬をそっと包み、自分のほうに向けた。ためらいがちに視線を合わせてくる漆黒の瞳を覗き込む。 「おまえが団長になる日が楽しみだよ」 「カミュー……」 そのときはおまえが隣に立っていてくれるんだろう? と続けようとしたマイクロトフだったが、 「俺じゃ似合わないと思うしね」 突然、悪戯っぽい笑みを浮かべ片目を瞑ってみせるカミューに、マイクロトフの目が点になった。 「は?」 「あの、他のヤツらじゃ犯罪もののチラリズム制服もおまえならきっと似合……」 言いながら太ももあたりを撫でてくる手にマイクロトフがようやく我に返る。 「なんの話だ、この馬鹿者!!」 一ヵ月後。 白騎士団に配属された、将来を有望視されていた新人2人が、赤・青騎士団にそれぞれ転属を命じられた。周りは、実力がなかったのか、と、やっかみ半分囁き合ったが、2人はそれぞれの団でめきめきと頭角を現したのだから、その噂もすぐに消えることとなる。 2人の活躍の報告を受けていた元・上司は、 「2人が一緒に居なければ、なんら問題はないんじゃ……」 と、疲れたように語ったという。無類の美少年好きで知られる彼がどうして2人を手放したのかは、一部の人間を除いてまったく知る由もなかった……。 おわっとけ |