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カミューはマイクロトフの部屋に向かう廊下を肩を抱いて歩いていた。 とはいえ、色気のあるシチュエーションからはほど遠い。マイクロトフは一人で真っ直ぐ歩けないほど泥酔していたのだ。先程までレオナの酒場で飲んでいたのだが、今夜のマイクロトフはいやに酒がすすんでいた。ただ、あまりきつく止めなかったのは楽しそうに飲んでいたから。しかし、ちょっと……いや、かなり失敗したかもしれない、とカミューは後悔していた。 「ほら。しっかり歩け」 「うう……、まだ飲めるぞうー……」 「もう飲まなくていいから。ほら、階段上るぞ」 階段を上ろうと1歩足を上げたとたん、マイクロトフがふらふらとバランスを崩す。 「わっ!!」 咄嗟にマイクロトフを支えようとしたカミューは、自分より体格のいいマイクロトフをうまく支えきれず、庇って彼に押しつぶされて倒れるのがやっとだった。 「い、たたたた……。大丈夫か? マイク……」 「しっかりしてくれよ、元赤騎士団長殿」 「おまえな……」 転んだことなどまったく意に介せず、へらへらと笑うマイクロトフに、カミューは誰のせいでこんな目にあったんだ、と心の中で毒づく。しかし、酔っ払いを相手にしていてもしかたがない。ため息とともに立ち上がって、床に座ったまま笑っているマイクロトフを引っ張り起こした。またもふらつくマイクロトフを支えてやりながら、カミューは顔を覗き込む。 「俺は途中で止めたよな。飲み過ぎてるからそろそろやめろって」 「うん」 「俺だって相当飲んでるんだぞ?」 「うん」 説教のつもりで言っているのに、なんとも可愛らしく頷いてみせるマイクロトフにほだされそうになりながら、カミューは怒っていることをアピールしようとする。 「なのに、なんでこんな目にあってるんだ?」 「うーん?」 無防備に首を傾げるマイクロトフ。カミューはちょっとくらり、としながら、マイクロトフの返事を待つ。酔っ払いの答えなど支離滅裂に違いないのだが。マイクロトフはしばし考えたのち、合点がいったように、にこっと笑った。 「俺の恋人だからだろう? あきらめろ」 「へ?」 思いもしない答えにカミューがぽかん、と口を開けると、マイクロトフはするり、とカミューの腕から逃れて階段を上りはじめる。カミューは我に返ると慌てて後を追った。心の中は、さっきのマイクロトフの言葉がぐるぐると回っている。 肝心なときは言ってくれないのに、こんなときに言うのは反則だ……。 でも、冗談では絶対口にできないようなセリフ。カミューの胸に嬉しさが込み上げてきた。そこに無粋な一言。 「早くしろ、酔っ払い」 「おまえが言うな!」 甘い想いを一瞬でぶち壊す声にカミューは憤然としながら、鍵のかかっている部屋のドアノブを無意味にがちゃがちゃと回しているマイクロトフの元に駆け寄った。 部屋に入ると、カミューはふらつくマイクロトフをベッドに横たえる。マイクロトフは素直に仰向けになり、大きく息をついた。腕で顔を覆うと、その合間からカミューをじっと見つめる。その、上気した頬に、かすかに潤んだ漆黒の瞳に、どくん、とカミューの鼓動が跳ねた。カミューにとってはなんともいえない艶姿。 「カミュー」 かすかに甘えを含んだ声に、カミューの身体の熱が一気に上昇する。カミューとてかなりの量を飲んでいたため、理性の箍は脆かった。そっと覆い被さると顔を寄せ、唇が触れるか触れないかの距離で囁く。 「ん? なに?」 「暑い……」 「…………はいはい」 色気の欠片もないセリフにカミューは大きくため息を吐いた。シャツをつまむマイクロトフの手をどけて、シャツのボタンを2、3外してやる。露わになった胸元は頬と同じく、かすかに色付いていた。カミューはその色香に気を取り直し、そっと指を忍ばせる。鎖骨を辿ろうとすると、おもむろに腕を掴まれた。 「マイク……?」 「喉が渇いた」 「…………マイク」 怒りを含めて声のトーンを下げてみたが、相手は酔っ払い。そんな微妙なニュアンスなど気づくはずもなく。へらっと笑う。 「水。水飲みたい」 「………………」 カミューは身を起こすと、足音も荒く水を汲みにいった。頭からかけてやろうか、などと物騒な考えもよぎる。コップになみなみ水を汲んでベッドに戻ると、マイクロトフが嬉しそうに笑って手を伸ばしてきた。自力で起きる気は毛頭ないようだ。 甘えてくれるのは可愛いけどね……。 この状態じゃ、とてもじゃないが手を出せない。 カミューは複雑なため息をついてコップを一旦サイドボードに置くと、マイクロトフを引っ張り起こす。倒れそうな背中を支えてやって、コップを持たせた。マイクロトフはこくこくと半分くらい飲むと、ぷはぁ、とさっきまで酒を飲んでいたときのような満足げな息をつく。 「うまい」 「はいはい。よかったね」 この酔っ払いをとっとと寝かしつけて、シャワーでも浴びて自分の熱を逃さなくては、などとかなり情けないことを思っているカミューは適当に返事して、頭をぽんぽん叩いてやった。マイクロトフは上機嫌に笑うと、もう一口、口に含む。 と、 カミューの頭がぐいっと引き寄せられたかと思うと、いきなり唇が合わさってきた。突然の事態にカミューが反射的に引こうとすると、顎をがっちりと押さえられてそれもかなわない。マイクロトフの唇から冷たい水とともに暖かい舌が入り込んできて、口腔内をまさぐりはじめた。舌が絡まり、合わさった唇の合間から水が零れ落ちる。きついアルコールの臭いが鼻についた。 なっ、なんだ?! カミューが思わず口内の水を飲み下すと、マイクロトフは唇を離した。飲みきれなかった水や唾液が雫となって2人の顎を伝う。 「な。うまいだろう?」 無邪気に笑うマイクロトフに、嬉しさより怒りが先に立った。 人がめずらしく我慢してやろうと思えば、こいつは……! カミューはマイクロトフの手のコップを引ったくり、水を口に含む。そして、お返し、とばかりに噛みつくように口付けた。水を流し込んでやれば素直に嚥下する。カミューはますます腹立たしくなって、そのまま口内を思う存分貪った。マイクロトフも寧ろ積極的に応えてくる。 やがて、息苦しくなったのか、マイクロトフが抗議するように「んーっ」と唸るがそれを無視してますます深く重ね合わせた。そして、限界を訴えてどんどんと背中を叩く手にようやく解放してやる。 「っ、はっ……」 カミューは、ようやく得た酸素を肺いっぱいに吸い込んでいるマイクロトフの顎を掴み、苦しさのためか潤んだ瞳を覗き込んだ。琥珀色の瞳は笑っていたが、どこか物騒な光がちらついていた。 「マイク……、責任はとってくれるんだろうね?」 「せき……にん……?」 問い返してくる瞳は憎たらしいほど無邪気で。全然酔いから醒めてないことを伺わせる。しかし、カミューはもう止める気はなかった。 「せっかく人が寝かしつけてやろうと思ったのに、それを無にしたばかりか、煽ってきておいて。これで、はい、おやすみ、とはいかないからね」 マイクロトフは、むう、と考える素振りをしてみせるが、カミューの言っていることがまったく理解できていないことは明らかだった。カミューは、にや、と笑う。 「男なら責任とってみせろってことだよ。俺をその気にさせた責任を、ね」 「責任……」 「そう。騎士の名にかけてね」 この状況のどのへんが騎士の名にかけないといけないのかはまったく意味不明だが、所詮、相手は酔っ払い。一番大事にしている単語を出されて、マイクロトフは拳を握る。 「騎士の名にかけて! わかったぞ、カミュー!」 妙にはりきっている姿をカミューは、しめしめ、と満足げに見やり、腕を伸ばす。そして、艶やかに微笑んだ。 今日はおまえが誘うんだからね。おまえからキスしておいで……。 さすがに長年の付き合いからか、マイクロトフはその腕を取るとそっと引き寄せ、自分から唇を重ねてくる。薄く唇を開くとためらいもなく忍び込んでくる熱い舌先にカミューは自分のをそっと触れさせた。ゆっくり絡まってくるマイクロトフの舌に、カミューは少々じれったさを感じながらも、したいようにさせてやる。 マイクもキスがうまくなったな……。 自分の指導の賜物だ、などとカミューは満足げに思いながらも、ともすれば溺れそうになる自分にブレーキをかけた。さすがに夢中になるのは些かプライドが許さない。しかし、普段は多少ぎこちないのにアルコールのせいか、だんだん大胆になってきた舌使いに理性がぐらつきはじめる。 ぞろり、と自分でも知らなかった敏感なところを舐め上げられて、思わず背筋が震えた。と、 どさり。 背中が柔らかいものに押しつけられてカミューは慌てて目を開けた。倒れ込んだカミューにマイクロトフは乗り上げるような格好でキスを続けている。 ちょ、ちょっと待て! なんだ? この体勢は……! どう考えても押し倒されている状態にカミューは焦って引き離そうとした。しかし、マイクロトフの方が体格はいいし、力もある。しかも、悔しいが、マイクロトフのキスで多少力が抜けている。 お、おい……。冗談だろ……? カミューが血の気の引く思いで思考をめぐらせていると、マイクロトフはようやく唇を離した。最後にぺろり、とカミューの唇を舐めるおまけつきだ。カミューは背中にぞくぞく、と快感が走るのを必死に殺しながら、口を開く。 「マ、マイク……? な、何をする気だ?!」 「ん? 騎士の名にかけて責任を取れ、と言ったのはカミューだろう。 命を賭けても成し遂げてみせるぞ」 にっこりとやる気まんまんな笑みを浮かべるマイクロトフ。それは明らかにいつもの抱かれるときの顔とは違っていて……。 「な、成し遂げるって……」 ひくり、と顔を引き攣らせるカミューにかまわず、マイクロトフはカミューの服に手をかけると、シャツのボタンを外しはじめた。 「まっ、待て! おまえ、本気か?!」 「あたりまえだろう」 「だっ、だって、わかるのか?! 知らないだろう、いろいろと!」 「なんとかなるさ」 「なるかっ! とにかく少し落ちつ……」 ぎゃーぎゃーとうるさいカミューの口を再びマイクロトフの唇が塞ぐ。暴れようと試みても、がっちり押さえ込まれていてそれもかなわない。カミューは本格的にあせりはじめる。 恋人になって、はや数年。幾度となく肌を重ねてきたが、逆はもちろん一度もない。最初に主導権を握ったのがカミューだった、ということもあるが、第一、マイクロトフが望んだことがない。それがこんなことになろうとは。 愛する人に抱かれるのだからいいかな、と思う反面、器用とは言いがたい恋人が繋がるときにちゃんとしてくれるかどうかが非常に不安だ。自分だって、できうるかぎり気を遣って慣らしてやるのに、それでも苦痛の色は消えない。それが……。 いきなり挿れられたりしたら死ぬぞ……。 想像しただけで、ざあっと血の気が引いた。 自分がどれだけ優しくされているかわかっているのだろうか。愛撫を受けている最中の記憶がちゃんとあって、ノウハウはわかっているのだろうか。 どちらもあやしい……とカミューは思う。そこまで夢中にさせているのが他ならぬ自分だから、自業自得といえばそうなのだが。 不意に、かり、と唇が軽く噛まれた。その刺激に思考が一旦、中断し、正面を見るとマイクロトフが少し不満げな顔をして見つめている。2人の服はすでに取り払われていた。 「カミュー。俺以外のことを考えるな」 おまえのことだけを考えているんだよ……。 普段、言われたのなら、きっと有頂天になるようなセリフにときめかない自分に、カミューは内心ため息をついた。 しかし、なんだかんだ言っても相手は愛しい恋人なのだ。けっきょくはほだされてしまう自分に苦笑いが浮かぶ。そっとマイクロトフの頬に手を伸ばした。 「その……マイク……、俺の言うとおりにできるか?」 「何がだ?」 「俺を抱くといってもいろいろわからないだろう?」 「? 挿れるだけだろう?」 こともなげに答えるマイクロトフに、カミューは青ざめる。胸に最大級の不安がよぎった。 「……その前だ。おまえ、まさか、いきなり挿れる気じゃないだろうな?」 「違うのか?」 「……………………」 みるみる顔を強張らせていくカミューに、マイクロトフは首を傾げて、わかんにゃーい、というような笑みを浮かべる。そして、カミューの足に手をかけると、 「まあ、難しいことは言いっこなしだ」 と、おもむろに左右に開かせようとする。 「やっ、やめろ、ばか!! やっぱりイヤだ! 死ぬ! 絶対死ぬ!!」 前戯もなしかい、とかなんの脈絡もないことが頭をよぎっているあたり、カミューも相当混乱しているのだが、マイクロトフは天下無敵の酔っ払い。 「往生際が悪いぞ、カミュー。騎士の誇りを持て」 「持てるか!」 じたばたとあがこうとしてもマイクロトフの万力のような力には対抗できるわけもなく、足と足の間に身体を挟まれてどうしようもなくなった。 「カミュー……」 熱っぽく囁いてマイクロトフが口付けてくる。それだけで、じん、と頭が痺れた。 ああ、もう! なるようになれ! 愛してるぞ、ちくしょー!! これから襲うであろう衝撃に、カミューはぎゅっと目を瞑る。 『酒は飲んでも飲まれるな』byカミュー辞世の句 ……と。 「あれ?」 マイクロトフの、きょとん、とした声。カミューは、まさか、挿れるところがわからないのか? と、思いながらも恐くて目を開けなかった。しかし、一向に触れてこないマイクロトフに恐る恐る目を開けてみる。目の前には困った顔をしたマイクロトフ。 「……どうしたの?」 「勃たない……」 「は?」 2、3瞬きして、ようやく言葉を理解すると、カミューは視線を下ろした。確かに完全に萎えているわけではないが、挿れるだけの硬度はなさそうだ。 カミューは、ははあ、と思う。酒を飲みすぎると機能しないということを聞いたことがあった。自分はまだ経験がないが。 かなりの安堵とかすかに残念な思いとが混ざりつつ、カミューは、内心にやっと笑う。反撃開始だ。 「なんだよ! 俺ってそんなに魅力ないわけ?!」 「なっ……! さっきまでぎゃーぎゃーと嫌がっていたくせに、その言いぐさはなんだ!」 「ひどいよ、マイク。俺のこと、愛してないんだね……」 「あ、愛してもいない男を抱こうとするほど俺は酔狂じゃないぞっ! ……って、うわっ」 普段なら絶対言わないようなことをまんまと聞き出すことに成功したカミューは、にっこり微笑んでマイクロトフをひっくり返し、体勢を入れ替えた。 「酔狂じゃないなんてよく言うよ、この酔っ払い。 まあ、いいや。愛しているよ」 カミューはちゅ、と唇に軽いキスを落とす。そして、マイクロトフの手を自分自身に導いた。 「俺だったら、おまえを抱けると思っただけでこうなるんだけどね」 カミューが悪戯っぽく笑うと、さっきまでの勢いはどこへやら、マイクロトフは真っ赤になってカミューを見上げてくる。カミューはその視線に耐えられない、というふうに、瞼に口付けると、マイクロトフ自身に手を伸ばした。マイクロトフがあせったような声を出す。 「か、かみゅっ……」 無理だ、と言おうとしたマイクロトフの鼻を、カミューがちょん、とつついた。 「マイクの身体のことはマイク以上に知ってるよ。まかせて」 カミューは艶やかに微笑むと、首筋に唇を這わせながら花芯を包んだ手をゆっくり上下させる。マイクロトフが与えられた刺激に息を飲む。 「たしかにひとつになるのも大事だけどね。その前の愛撫だって大切なんだよ……」 カミューは熱っぽく囁いて、鎖骨を舌でなぞると、窪みにきつく吸いついた。 「んっ……」 マイクロトフがぎゅっと目を閉じて顎をのけぞらす。カミューはその媚態をうっとりと見つめた。 「ほら。こんなイイ顔を見ないなんてもったいないだろう……」 言いながら、今度は胸の突起を口に含む。手の中では少しずつ、だが、確実にマイクロトフ自身が固くなりはじめていた。 突起を唇で挟み込み、舌で輪郭をなぞると、先端がくくっと固くなる。それに緩やかに歯を立てると、マイクロトフの背中が跳ねた。自身に触れてないほうの手ももう片方の突起に伸ばして指先で器用に愛撫する。 「っ、……ぁ……、かみゅ……ぅ……んっ……」 酒のせいで枷が緩んでいるのか、いつもより声を抑えないマイクロトフの甘ったるい喘ぎにカミューはしばし酔いしれ、遊戯に夢中になった。 しかし、さすがに花芯の反応が普段より鈍い。カミューは1回が限界かな、と判断しながら、徐々に手を下におろしていく。胸元からよく鍛えられた腹筋を辿り、腰骨をなぞって、そのたびに素直に返る反応を楽しみながら蕾に触れた。入り口をそろりと撫でて、濡らすものがないことに気づく。普段であれば花芯から蜜が溢れ出ている頃だが、今日はそれもない。ふと視線を上げるとサイドボードに先程のコップが置いてあるのを見つけた。 滑りはよくないけど……まあ、いいか。 カミューはコップを手に取ると、傾けて中の水を秘所に垂らす。 「んっ……つめ、たい……」 「マイクが熱いからだよ。すぐに慣れるって……」 カミューは、眉をひそめたマイクロトフの額に口付けて微笑むと、ゆっくり指を侵入させて中を解きほぐしはじめた。最初はきつかったが、あちこちを刺激してやるとだんだん滑りがよくなってくる。指を2本、3本と増やし、感じるところをばらばらに突付いて、引っ掻いて、と絶え間なく動かした。 「っふ……ぁ……っ……ぅん……」 与えられる快感にのけぞった白い喉に口付け、カミューはさらに指を奥に侵入させる。指で届くいちばん奥の性感帯を何度も突いた。花芯も張り詰め、先端から透明な液が溢れはじめている。 「わかる? マイク。はじめは指1本でもきついんだよ? だから、最初はこうして慣らしていかないと……」 「んっ……あぁ……っ」 もう聞こえていないのか、愉悦の表情を浮かべて緩く首を振るマイクロトフに、カミューは目を細めた。もう頃合か、と、そっと指を抜くと悩ましげな吐息と共に物足りなげに腰が揺れる。無意識なのだろうが、カミューにはたまらない媚態だ。 「マイク……、あんまり俺を誘惑しないで……」 抑えがきかなくなるよ……と、そっと耳元で囁くと、うっすらと漆黒の瞳を覗かせる。ゆっくりと腕を持ち上げて、カミューの首に巻きつけた。 「かみゅ……、はやく……」 甘えるような声音にカミューは苦笑いする。どうやら自分がいま言った言葉は理解できていないらしい。「了解」ともう一度耳元で囁くと、そのまま耳たぶを甘噛みし、舌を這わせる。感じやすいところを弄られてびくびく震える背中を宥めてやりながら、マイクロトフの蕾に自身をそっとあてがった。一呼吸おいて、ゆっくり侵入する。中がいつもより熱く、眩暈に似た酩酊を覚える。 「熱い……ね、マイク……」 「う、ん……あつぃ……」 うわ言のように返してくるマイクロトフにカミューは口付けをしようと顔を寄せる。すると、マイクロトフのほうから唇を重ねてきた。互いに舌を絡めあって唾液を交換する。マイクロトフがキスに夢中になっている間にカミューはゆっくりと律動を開始した。浅く、深く、抜き挿しを繰り返す。そっと唇を解放すれば、普段は声を漏らすまい、と固く閉じられる唇は開いたままで。そこからあられもない嬌声が零れ落ちた。 「たまらないな……」 熱い吐息と共にカミューが顔中にキスを降らせる。マイクロトフはうっとりとした表情でそれを甘受しながら、さらなる刺激を求めた。 「っあ……、ぅん……っ、かみゅ……ぅ……も……っと……」 「マイク……、俺をこれ以上夢中にさせてどうするの……?」 このままベッドから出してあげないよ? とカミューはくすり、と笑う。ねだるように揺れる腰を片腕で支え、奥を激しく突いた。 「っ……あぁ……んんぅっ!」 歓喜の声が上がる前にカミューは唇を封じる。これ以上声を聞いていたら本当に抑えがきかなくなってしまう。マイクロトフの身体は万全ではないのだから、無茶はできない。 蕩けるようなキスを交わしながらカミューはマイクロトフを追い詰め、自分も追い上げられて、共に絶頂を迎えた。 「……っ……!!」 マイクロトフが大きく背中をのけぞらせたあと、ぐったりと力を失う。カミューはそれを支えてやりながら、マイクロトフの胸にもたれるようにして大きく息をついた。しばらく抱きしめたまま息が整うのを待つ。ようやく幾分落ち着くと、マイクロトフの中から自身をそっと抜きとった。 マイクロトフの隣に寝転がり、意識を飛ばしてしまったマイクロトフの額に優しく口付けて胸に抱き込む。 そして、やれやれ、と苦笑まじりにため息をついた。正直、自分はまだ熱がおさまってなかった。しかし、彼の穏やかな寝顔を見ていると、静かに昇華されていくのを感じる。 それにしても、と思う。 普段の、つれない態度をとりつつ、流されるように自分のわがままにつきあってくれる彼をとるか、積極的で、これ以上はないというほどそそられるが、一度しかできないほど泥酔した彼をとるか。 カミューは真剣に悩んでいた。 「ほら、マイク、いつまで寝てるの? 朝ご飯、食べ損ねるよ?」 「うう……。ほっといてくれ……」 ベッドの上の布団のかたまりからくぐもった声がした。カミューは苦笑いしてかたまりに近づく。 どうやら昨夜のことをおぼろげにだが覚えていたらしい。朝、カミューより遅く目が覚めたマイクロトフは目の前で待ち構えていたカミューのおはようのキスを受けた。そして、琥珀色の瞳にいたずらっぽい笑みをたたえて「昨夜は積極的だったね……」と囁かれた言葉に昨夜の痴態を思い出し、瞬時に真っ赤になってカミューをベッドから蹴り落としてからずっとこの調子なのだ。 カミューは布団の上からぽんぽん叩いた。 「マーイーク。どうしたの? いまさら照れる仲でもないでしょ?」 「う、う、うるさい! あ、あんな姿を晒すなんて、一生の恥だ!」 一生の恥。あまりに彼らしい言い方にカミューはぷっと吹き出す。 「えー? 俺には一生の良き思い出だったけどなぁ」 「わ、忘れろ!」 「んー。そうだなぁ。マイクがたまにあの姿を見せてくれたら忘れる」 「……酒は一生飲まん」 憮然とした声に、カミューはくすくす笑うと、布団のあいだから覗いている黒髪にキスを落とした。 おしまい |