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「まったく……。本当におまえは馬鹿だな」 ぶつぶつと文句を言い続けるマイクロトフの声は限りなく怒っているが、手は慎重な手付きで包帯を巻いていく。右腕を差し出しているカミューは苦笑いした。 「しょうがないだろう。とっさに身体が動いたんだ」 「どう考えても俺のほうが頑丈だろう! 体力だってあるし」 「夜の体力は俺のほうがあ……いたたたた!!」 傷口をぎゅうっと掴まれてカミューは思わず涙目になる。 「ひどいよ、マイク……」 「おまえがへんなことを言うからだ!」 怒鳴り返すマイクロトフの顔は真っ赤になっていた。カミューはくすくす笑う。 「でも、おまえに怪我がなくてよかったよ」 「俺はおまえが怪我してよくないぞ!」 ふてくされたように言うマイクロトフが可愛くて、カミューは空いてる左手で包帯を巻いているマイクロトフの手を取り、指先にキスした。 「ごめんね。マイクが怪我するの嫌だったから」 「……俺だってカミューが怪我するのは嫌だ」 「うん。ごめん」 カミューはもう一度指先に唇を落とす。マイクロトフはそれ以上反論ができなくなり、口を閉ざすと、包帯を巻く作業を再開した。 今日は久しぶりに2人の休日が重なった。 カミューはマイクロトフを見回りと称してデートに誘うことに成功し、2人で遠乗りに出かけた。だが、途中、モンスターの群れと遭遇し戦闘となり、カミューが負傷したのだ。……マイクロトフを庇って。 マイクロトフは包帯を巻き終えるとぎゅ、と端を結んだ。 「応急処置はこれでいいだろう。あとは城に帰って軍医に診てもらわないと」 「ありがとう、マイク。まあ、指先は動くから神経とかは大丈夫だと思うよ」 「そういう問題じゃないだろう! たくさん血が出たのだぞ!!」 止血するのも一苦労だったマイクロトフはのんきなことを言うカミューを叱りつける。カミューは、心配性だなぁ、と笑った。マイクロトフはその態度にかちん、とくる。 「そうか。では軍医に縫合の際には麻酔はいらないと言っておこう」 「ちょっ、マイク〜」 右腕の肘のあたりからざっくりと斬られたカミューの傷は深かった。縫合は間違いないだろう。本来であれば痛みでこんな軽口も聞けるはずがなかった。マイクロトフは怒った態度を崩さないまま、内心、カミューの精神力に舌を巻く。 おそらくは自分を心配させないための強がり。 マイクロトフはため息をついて立ち上がると、戦闘のごたごたで逃げてしまった馬を呼びにいった。よく訓練され、主人に忠実な馬たちはほどなく戻ってくる。 マイクロトフはカミューに手綱を渡そうとして、ふと思った。 いかにカミューが乗馬の名人とはいえ、片手で騎乗するのは難しいのではないか。 「マイクロトフ?」 手綱を受け取ろうとしたカミューは動きを止めてしまったマイクロトフに首を傾げた。マイクロトフはカミューを見つめ、眉間に皺を寄せて問う。 「その傷では……無理か?」 「え?」 今日は遠乗りということで、気性のおとなしい馬に乗ってきた。だから、片手でも充分御せる自信はある。反射的に「大丈夫だよ」と答えそうになって、カミューはまてまて、と思いとどまった。 ひょっとして、これはおもしろい展開になるかもしれない。 「うん……、ちょっと無理かもね」 苦笑して答えると、マイクロトフは、むう、と難しい顔をして考え込む。カミューは、さて、どうでるかな、と結論を待ってるとマイクロトフは自分たちが乗ってきた馬を交互に見た。そして、自分の馬に目を止めると、 「……悪いが、頑張ってくれるか?」 と、鬣を撫でながら首を傾げる。馬が気持ちよさそうに目を細めるのを了承としたのか、今度はカミューの馬の首を撫でてやり、 「少し窮屈だろうがおとなしくついてきてくれ」 と、話しかけ、手綱を自分の馬の鞍に縛った。そして、身軽に馬上の人となるとカミューを振り返ると、 「じゃあ、帰ろう」 と、手を差し出す。カミューはにやけそうになるのを我慢して、 「すまないね」 と、その手を取った。ぐい、と力強く引っ張り上げられて、後ろに乗せられる。視界いっぱいにマイクロトフの広い背中。 いいなぁ……。こういうシチュエーションも……。 思わず後ろから頬ずりしようとすると、マイクロトフが振り返った。 「痛むだろうが、走るぞ。早く医者に診てもらったほうがいい。少し我慢してくれ」 「了解」 あまりのタイミングの良さに、カミューは日頃の行いの悪さを指摘されたようで苦笑する。マイクロトフは前を向いて 「しっかり掴まっていろよ」 と、馬をゆっくり歩かせはじめた。徐々にスピードを上げていくのだろう。カミューは無事な左手をマイクロトフの腰に回した。 さわさわ 「!! カミュー!! なっ、何をする?!!」 「あ。ごめん。つい……」 恐ろしいまでの条件反射でわき腹を撫で上げてしまったカミューは悪びれず応える。マイクロトフは顔を真っ赤にして睨みつけてきた。 「今度やったら蹴り落としてやるからな!!」 「怒らないでよ。条件反射なんだから」 「なんの条件反射だ?!」 「マイクに密着してる、と思ったら手が勝手に。ああ、恐ろしい」 「恐ろしいのはおまえの頭だ!!」 マイクロトフは憤然と怒鳴り返すと、鐙を蹴って一気に馬を走らせた。カミューは後ろにのけぞりそうになって慌ててマイクロトフにしがみつく。 「マイク! 落ちるよ!」 「落ちろ、馬鹿!!」 かなり本気で言い放ちつつ、それでもマイクロトフは振動が少なくなるように馬の足並みを整えてやる。ちらり、と隣を見ればカミューの馬もおとなしくついてきていた。ふう、と気を緩めたとき、 すりすり 背中に何かがすり寄ってきた。確認するまでもない。カミューの頬だ。しがみついた体勢のまま頬をすり寄せているらしい。マイクロトフは口を開きかけて、やめた。したいようにさせてやろうと思う。 自分も……好きな人の体温は心地良かったから……。 自室で汚れた服を着替え、どこか落ち着かない自分をごまかすように本をめくっていたマイクロトフは、ノックの音にすぐ立ち上がってドアを開けた。そこには、右腕に痛々しいまでの白い包帯を巻かれたカミューが笑みを浮かべて立っている。 「どうだった?」 「うん。やっぱり神経とかは大丈夫だったよ。何針か縫われたけどね。 軍医が褒めてたよ。応急手当がうまいって」 「そんなの褒められても嬉しくない。それより、たいしたことなくてよかった……」 かすかに眉を寄せるマイクロトフにカミューはにっこりと微笑んで、眉間に人差し指をあてた。皺になるよ、といつものセリフをつけて。そして、マイクロトフを押すように自分共々部屋に入った。ドアを閉めると左手をマイクロトフの肩に回して肩口あたりに額をつける。 「せっかくのデートがだいなしになっちゃったね」 「……デートっていうな」 頭上の憮然とした声がおかしくて、カミューはくすくす笑った。 「だって、デートじゃん。恋人同士が2人で出かけたんだから」 「ばかもの……」 カミューは顔を上げて、肩に回していた手を首の後ろに移動した。そして、わずかに目を見開くマイクロトフに艶然と微笑みかけて、頭を軽く引き寄せる。 「ばか、はもう聞き飽きたよ。少しは甘い言葉を囁いてよ……」 「な、何ばかなことを言って……んっ……」 柔らかく唇を塞がれ、マイクロトフの身体が強張った。振り払われるかと思ったが、自分の怪我を考慮してかおとなしくしてるため、カミューは気を良くして口内に舌を忍ばせ、口付けを深めていく。思うさま貪ってからそっと唇を離した。目を閉じたまま、苦しそうに、どこか恥らうように、深い息をつくマイクロトフが可愛くて艶っぽくて、カミューはもう一度軽く口付ける。 「甘いのは唇だけで充分かな。これ以上甘いのをもらったら溶けてしまいそうだ」 「ばか……」 かすかに潤んだ瞳で睨みつけてくるのが可愛くて、カミューはくす、と笑うと、 「また、ばかって言う」 と、もう1回キスした。 「まあ、マイクの、ばか、は、愛してる、の意味として受け取っておくよ」 「……ば……勝手にしろ」 マイクロトフは目元を赤らめてうつむく。カミューは、ああ、もう、犯罪的だな……とまた顔を近づけようとする。さすがにぎょっとしたマイクロトフは慌ててカミューの顔を押しやった。 「そ、そうだ、カミュー! 腹減ってないか?!」 「マイク……色気ない……」 「う、うるさい!」 顔を真っ赤にして怒鳴るマイクロトフにカミューは軽く肩をすくめる。 「まあ、しょうがないからのってあげるけど。確かに昼間は思わぬ運動をしたしね。さすがに空いてきたかな」 「そ、そうだろう、そうだろう。食堂に行くか?」 九死に一生を得た、とばかりに話してくるマイクロトフに、カミューは内心苦笑いしつつ頷こうとしてちょっと考えた。 「いや。さすがにこの姿ではみんなに心配かけるだろうし。明日ばれるのはしょうがないけどね」 上に立つ者としての心遣いをみせるカミューにマイクロトフは目を細める。 「そうだな。では、もらってこよう。部屋で待っていてくれ」 「ああ、すまないね」 「軍医に食事については何か言われたか?」 「いや、特に何も。ああ、血を作るために体力のつくものを食べろって言われたっけ」 カミューの言葉にマイクロトフはぱっと破顔すると、 「じゃあ、肉がいちばんだな! よし、とびきりでかいステーキを焼いてもらってくるからな!」 と、勢いよく部屋を出ていこうとする。カミューは慌ててその背中に「果物も頼むよ」と言った。返事が聞こえるか聞こえないうちにドアが閉まるとカミューはやれやれと苦笑いする。そして、マイクロトフを迎えるべく、自分の部屋に向かった。 「カミュー、入るぞ」 声と共に入ってきたマイクロトフの手には大きな荷物が抱えられていた。 「マ、マイク? なんだい、その荷物は……」 「俺のせいで怪我をさせてしまったからな。身の回りの世話をしようと思って」 そう答えながらマイクロトフは部屋の隅に持ってきた荷物を降ろしはじめる。その中に毛布があるのを見て取って、カミューは首を傾げた。 「……ここに泊まるの?」 「軍医に聞いたぞ。今夜あたり傷口が化膿して熱を出すかもしれないそうじゃないか。なぜ言わなかったんだ」 真剣な顔で言うマイクロトフにカミューはわざわざ聞きにいったのか、とちょっと感動する。けっこう愛されているかもしれない。 他の人間だったら、「大丈夫、心配ないよ」と追い返すところだが、他ならぬ最愛の恋人の申し出を断るはずがあろうか。 カミューはにへら、とだらしなく笑み崩れて、口を開いた。 「ありがとう。でも、毛布はいらなかったのに。一緒にベッドに……」 ばふっ 「怪我人はおとなしくしてろ!!」 顔面に枕が命中した。 カミューは幸せをかみしめていた。 目の前ではマイクロトフが真剣な顔つきで肉を切り分けている。そして、一口大になるとフォークに突き刺して、 「ほら」 と、差し出してきた。カミューは満面の笑みを浮かべて口を開ける。少しぶっきらぼうな手付きで口内に肉が押し込まれた。 ああ、幸せだなぁ……。 何度か繰り返されたこの作業。カミューには堪らなく幸せだった。最初は「世話をする」という義務感でいっぱいで、余計なことなど考えていなかったらしいマイクロトフも、カミューのあまりに幸せそうな顔に、自分のしていることが急に恥ずかしくなったらしく、先程からほとんど無言だった。その頬はほんのり赤い。 「マイクも食べなよ。お腹空いてるだろう?」 「う、うむ。しかし……」 カミューの分だから、と遠慮しようとするマイクロトフにカミューは宥めるように笑いかける。 「この量じゃどう考えても俺1人じゃ多いよ。だいたい、一緒に夕食を取りたかったのに、俺の分しか持ってこないんだから」 「う……、すまない……」 ひとつのことに気を取られると他のことには目がいかなくなる性格。不器用だがそれがまた愛しい。カミューは再度食べるよう促した。マイクロトフはやっと「すまない……」と小声で謝って肉を口にする。 「おいしい?」 「ああ」 「ふふ。間接キスだね」 「!!!」 瞬時に真っ赤になるマイクロトフ。予想どおりの反応にカミューはくすくす笑う。間接キスどころか、本当のキスだって数え切れないくらいしてるのに、この初々しい反応はどうだ。 「ああ、もう。おまえはほんとに可愛いね」 「かっ、可愛いとか言うな!!」 「じゃあ、愛しい」 「……………………」 マイクロトフが悔しそうに睨みつけてきたが、カミューは余裕の表情で受け止める。マイクロトフは無駄だと悟ったのか、再び肉の解体に取りかかった。 「まだまだ修行がたりないね、マイクロトフくん」 「うるさいっ」 いいようにからかわれてムッとしていても、さすが義理堅いマイクロトフ。途中で役目を放棄することなく、最後までカミューに食事をさせた。……途中、開き直ったかのように自分が食べる割合が多くなっていたが。 「ごちそうさま。で、今日の果物は何かな?」 「グレープフルーツだ」 「そう。濃い料理の後にはいいね」 カミューは爽やかに微笑みつつ、心の中では爽やかとは程遠いことを考えていた。 今度は手から直接食べられるのか。指なんか舐めちゃお♪ しかし、そんなカミューの心を見抜いたわけではないのだろうが、マイクロトフはグレープフルーツを剥き終わると、さっきまで肉を食べていたフォークを突き刺そうとした。 「ちょ、ちょっと待った!! に、肉を刺したフォークで食べるのかい?!」 「? ちゃんとナプキンで拭ったぞ」 「い、いや、そうじゃなくて……、あ、脂が残っているだろう!」 カミューの苦し紛れの言い訳にマイクロトフは眉を寄せる。 「なんだ。神経質なやつだな。そんなことじゃ戦場で生き残れないぞ」 とんちんかんなことを言うマイクロトフにカミューは、マイクが鈍感なんじゃないか……と、がっくしとうなだれながら答えた。 「戦場ではちゃんとそういう心構えをするよ……」 「わかった、わかった。ほら、食え」 と、マイクロトフはグレープフルーツを乗せた皿をカミューに突きつける。カミューは一瞬きょとん、とし、自分で食べろということらしい、ということを理解すると、むう、と唇を尖らせた。 「マイクの手で食べさせてよ」 予想を遥かに越えたカミューの言葉にマイクロトフは一瞬絶句する。 「なっ……! ひ、左手で充分食えるだろう!」 顔を真っ赤にして怒鳴ってくるマイクロトフにカミューも負けじと言い返した。 「マイクから食べさせてもらうことに意味があるんじゃないか!」 「なんの意味だ?!」 「男のロマンだよ!」 「わけわからんこと言ってないで、とっとと食え!!」 「俺の身の回りの世話をしてくれるって言っただろう! 食べさせてよ!」 ばちばちばちっ 低レベルな言い合いの果てに睨み合う2人。 けっきょく根負けしたのはマイクロトフだった。駄々っ子状態で反論するカミューにマイクロトフは大きく息をついてこめかみを押さえる。普段は涼しい顔をして、感情的になりやすい自分を制したりしているくせに、2人きりでいると、とたん子供っぽくなるときがある。舌戦でも勝てないのに、こうなるとさらに手におえない。 「わかった……。食え」 マイクロトフはしぶしぶグレープフルーツを一房つまむとカミューの口元に差し出す。カミューは実に嬉しそうに笑ってぱくり、と口に含んだ。そのあまりに無邪気な様子にマイクロトフの毒気も抜かれる。自然、苦笑いが浮かんだ。 「男の手から食べさせてもらって何が嬉しいんだか……」 「マイクの手からだったらなんでも食べるよ」 「ばか……」 「はいはい。愛しているよ」 カミューはまったく取り合わず、口を開ける。マイクロトフは再び一房つまんで差し出した。カミューの暖かい唇に指が触れるとくすぐったいような痺れが背中を走る。相手がカミューだから感じるであろう、不思議な感覚。これが幸福感というものなのかな、とマイクロトフは漠然と思った。 「どうしたの?」 カミューに言われて、自分の頬が緩んでいたのに気づく。正直に応えたりしたら、何を言われるか、とマイクロトフは咄嗟にごまかした。 「子供みたいだな、と思ってたんだ」 「子供でけっこう。男は永遠に少年の心を持っているのさ」 カミューはそらぞらしく応えると、左手でグレープフルーツを一房つまんでマイクロトフに差し出す。 「はい。あーん」 「っ! いらん!」 「まあまあ。そんなこと言わないでさ」 強引に唇に押しつけるとマイクロトフはしかたなしに口を開けた。口に爽やかな酸味が広がる。それなのに、 ……なんか、甘く感じる……。 と、マイクロトフは思った。そこに、 「甘いでしょ?」 というカミューの言葉に、心の中を読まれたのか、と、どきっとする。 「そ、そんなわけないだろう! 酸っぱいぞ!」 「えー? そうなの? 俺にはこのうえなく甘いけどね」 カミューはぺろっと自分の指を舐めた。そのしぐさにマイクロトフの鼓動が跳ねる。情事の最中に己の秘所を濡らすときのしぐさとシンクロしたのだ。 なっ、なにを考えているんだ、俺は……。 マイクロトフはあたふたしながら、カミューの傷が治るまでは肌を合わせることはないのだ、ということにいまさらながら気づく。その事実に、夜、ぐっすり寝られるという安堵と共に一抹の寂しさを感じたことはごまかしようがなかった……。 そして。 食事の後、風呂に入られないカミューの頭を洗ってやり、身体を拭いてやったマイクロトフは今度は寝床の準備をはじめる。実にかいがいしく働いていた。 それを幸せいっぱいの笑顔で見守るカミュー。しかし、見守るだけですむはずもなく……。 マイクロトフは仕上げとばかりに枕をぽんぽんと叩いて振り返った。 「カミュー、準備できたぞ」 「うん。ありがとう」 カミューは微笑んで椅子から立ち上がるとベッドに近づく。一瞬、条件反射的に身構えたマイクロトフをよそに、おとなしくベッドに横になった。内心、拍子抜けしたマイクロトフはカミューの上に掛け布団をかけてやる。 と、 ぐいっ 突然、腕を引っ張られてバランスを崩した。咄嗟に手をつこうとするが、カミューの怪我に気をとられているうちに今度は腰に腕が回って、ベッドに引き摺り上げる。片手とは思えない力だった。 「ちょっ、カミュー!!」 「マイク……一緒に寝よう」 耳元で低く囁かれて、マイクロトフはびくり、と身をすくめる。その「寝る」がただの添い寝でないことはその声の艶でいやというほどわかった。しかし、無理矢理わからないふりをする。 「だ、だめだ! 俺は寝相が悪いから、寝ているあいだにおまえの傷に触ってしまうかもしれない!」 「大丈夫。寝返りも打てないくらい可愛がってあげるから」 ふふふ、と意味ありげに笑うカミューにマイクロトフはざあっと青ざめた。 「なっ、何を言ってるんだ! おまえは怪我人だぞ!」 「うん。さすがに片手じゃきついから、マイクも協力してよ」 「そ、そういう問題じゃないだろ! 安静にしてろ!!」 マイクロトフは身体を起こそうとするが、カミューの片腕が腰に回ったままはずれない。カミューはにっこり笑った。 「怪我の心配より心のケアをしてほしいな」 マイクにしかできないことなんだから……と、また耳元で囁かれてマイクロトフは力が抜けそうになる。 「カ、カミュー……っ」 「マイクロトフ……」 間近に琥珀色の瞳に見つめられて、マイクロトフはもうだめだ、と思う。この瞳に捕われて抵抗できたためしがない。 「ばか……。どうなってもしらないからな……」 「それはこっちのセリフだよ」 何を言っても余裕で返されるのが悔しくて、マイクロトフは挑むように睨みつけると、噛みつくように口付けた……。 「んっ……あぁ……っ」 片手しか使えなくてもやはりカミューはカミューで。巧みな愛撫にマイクロトフはどんどん絶頂へと追いやられていった。何かにすがりたくて無意識にカミューの腕を掴む。 そのとき。 カミューの唇が敏感なところを一際強く吸い上げた。 「っ、ああっ!」 マイクロトフは恐ろしいまでの快感に背中をのけぞらせ、爪を立てた……。 次の日。 「なぜ傷口を開くような真似をした!」と軍医に説教される赤騎士団長と、その隣でなぜか顔を赤らめて小さくなっている青騎士団長の姿があった……。 お、おわり(汗) |