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それはどこかの世界のどこかの国のお話。 この国の王子様の名前はカミューといいます。カミュー王子は27歳。容姿端麗、頭脳明晰、おまけにフェミニストと、女性にモテる条件を満たしていたので、花嫁候補があとをたちませんでした。しかし、一見穏やかで人当たりのいいこの青年、心の中はけっこう冷めていて、したたかな打算のもとに計算し相手を選んでいたため、まだ相手が決まってなかったのです。心惹かれる女性と一緒になりたいと思うこともあったのですが、そんな相手とめぐり逢うこともなく、淡々とお妃候補を選んでいく日々でした。 そんなある日、隣の国の主催で船上パーティに招待されました。隣の国の王女をはじめ、何人かお妃候補に名を連ねている女性がいたので、カミュー王子は参加することにしました。 そしてパーティがはじまってすぐ、船は突然の嵐に襲われたのです。 沈みかけた船内はあちこちで悲鳴と怒号が響き渡ってました。カミュー王子はどうすれば生き残れるのか最後まで考え、手を尽くしましたが、けっきょくどうすることもできず、沈む船と運命を共にすることになってしまったのです。 カミュー王子は海に沈んでいく自分の身体をどこか他人事のように感じていました。 カミュー王子はこの世に生まれたときから、将来の王としての運命が決まっていたため、自由というものを感じたことがありませんでした。やっと開放されるとどこかほっとしてもいたのです……。 しかし、そんなカミュー王子に白い人影が近づいてきました。水の中とは思えない身のこなしです。カミュー王子はその人影に引っ張られて浮上する感覚と、その白い肌を薄れゆく意識の中でぼんやりと覚えていました……。 一命をとりとめたカミュー王子は命の恩人を探すよう、国中におふれを出しました。どうしてもあの白い肌が気になったのです。お妃様になる方かもしれないと、国中が躍起になって探しました。そして、王子自身も毎日、自分が打ち上げられていた海岸へと足を運んだのです。しかし、一度、白くて丸い珍獣を拾いましたが、それ以外の収穫はありませんでした。 そんなある日、ついにカミュー王子を助けたと名乗り出た者が現れました。それは、なんと隣国の王女だったのです。カミュー王子は喜んで会いに行きました。 王女は漆黒の髪と瞳、そして透きとおるような白い肌の持ち主でした。青いドレスに身を包んだその姿はやたら背が高かったのですが、カミュー王子はその姿を見、全身に電流が流れるような衝撃を受けました。そう、一目惚れしてしまったのです。 2人っきりになったとたん、プロポーズしました。色男モード、全開です。 「私はあなたと出会う運命だったのです。どうか、私と結婚してください」 「そ、それは……」 とまどったような少しハスキーな声がまたカミュー王子を魅了します。カミュー王子は王女の手を取り、口付けました。 「必ず幸せにしてみせます。どうか、私の国にきてください」 「あ、あの……」 頬を赤らめてうつむく王女にカミュー王子はたまらない、とばかりに抱きしめました。やたら筋肉質な身体でしたが、そんなことはどうでもよかったのです。そして、どんな女性も虜にしてきた魅惑の笑みを浮かべ、唇を寄せました。 「まっ、待ってくれ!!」 いきなり突っぱねた腕はどう考えても女性の力ではありません。しかし、カミュー王子は平然と微笑んで抵抗を封じようとしました。 「照れなくてもいいんだよ、可愛い人……」 「お、俺は女ではないんだ! その、俺の兄弟に色白は俺しかいなくて……、それで……父上が……す、すまない!!」 真っ赤になって事情を説明する王女……いや、王子に、カミュー王子はにっこり笑います。 「うん。全然OKだよ」 「は?」 目を丸くした隣国の王子にカミュー王子はちょっと冷たい笑みを浮かべました。 「王が君をよこしたってことは俺を騙してでも俺と結婚させたいってことなんだろ? いいよ」 「い、いや、その……」 思いもしない展開にとまどう隣国の王子にカミュー王子は今度は柔らかい笑みを浮かべます。 「結婚しよう。子供はどこからか拾ってくるから」 「ま、待て……」 早過ぎる展開に隣国の王子はパニック状態に陥りました。カミュー王子はそんな彼も可愛い、とうっとりしながら、彼の顎を軽く持ち上げて、顔を覗き込みます。 「愛しい人、名前は?」 「え? あ、あの、マイクロトフ……」 「マイクロトフか。素敵な名前だね」 カミュー王子は目を細めてマイクロトフ王子に口付けました。マイクロトフ王子は理解を越えた展開に、ただただ呆然としています。カミュー王子は抵抗がないことをいいことに、唇を割り、口内に舌を忍ばせ、思うさま蹂躙しました。マイクロトフ王子の舌に自分のを絡めて強く吸うと、くたん、とマイクロトフ王子の身体の力が抜けます。カミュー王子は彼の腰を抱き寄せて支えてやりながら、このままいただいてしまおうか、と思いましたが、どうせなら初夜というものを楽しもうと思いとどまりました。 唇を離し、あまりの刺激に肩をはずませ、涙ぐんでいるマイクロトフ王子に、にっこりと笑いかけます。 「さあ、帰ったら、さっそく式を挙げよう!!」 「まっ、待ってくれーっ!!」 マイクロトフ王子の叫びも虚しく、強引にカミュー王子の国へと連れて行かれました。冷めていると思われたカミュー王子、実はかなりの情熱家だったようです。 そして国に帰るとすぐさま準備が整えられ、婚礼の儀と相成りました。 国中の祝福を受けて行われた式の間中、花嫁の目には美しい涙が止まることはありませんでした。その姿は国民たちに感動を与え、後々まで語り継がれる婚礼の儀となったのです。 そして、城の片隅では。 とある金ダライに張られた水に、大きな泡だけが浮いていました。それはカミュー王子が海岸で見つけ、気まぐれに拾ってきた白い珍獣が入っていた金ダライでした。 そう、彼女こそがカミュー王子を助けた人魚姫・ゴルドーだったのです。 想いが届かなかったゴルドーは憐れ、海の……いや、金ダライの水の藻屑となってしまったのでした。 しかし、真相は泡の中。カミュー王子とマイクロトフ姫(?)は末永く幸せに暮らしたらしいです。 おわり(逃走!) |