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従騎士時代から親友だったマイクロトフとカミューが恋人、という関係になって1ヶ月が経った。カミューがマイクロトフに想いを告げ、「俺の『好き』とカミューの『好き』の違いがわからない」と答えたマイクロトフをカミューが強引にまるめ込んだのがきっかけ。 しかし、マイクロトフにはその違いがいまいちよくわかっていない。暇ができれば一緒にいる、というのは前もそうだったし、2人で話す内容が変わったわけでもない。ただ、変わったことといえばカミューがキスをしてくるようになったぐらいか。 最初は驚いた。カミューの端正な顔を近づいてきたとき、思わず「何をするんだ?」と聞いてしまった。カミューにため息まじりに「恋人同士になった自覚ある?」と言われて、ようやく思い当たる。しかし、男同士でキス、ということはあまりにも自分の中では理解を超えていて。おそるおそる「俺に……キスしたいのか?」と聞くと「したいよ」とあっさり答えられて、慌てて目を閉じたのだ。 カミューとのキスは思っていたより抵抗がなかった。柔らかい感触を唇に感じたとき、背筋を何かが駆け抜けたがそれは不快なものではなく。唇が離れてからそっと目を開けたとき、間近で微笑むカミューの顔がとても幸せそうだったから、こんな表情が見られるならキスも悪くないな、と思った。 そうしてキスを交わすようになり、今に至る。 これは……恋人同士だというのだろうか……? 最近カミューの様子がおかしい、とマイクロトフは思う。 それはたぶん自分に対してだけ。表向きは変わらないよう振る舞っている。しかし、長年一緒にいた自分にはわかる。 夜、2人で過ごす時間を減らしてきた。視線が合うとさりげなくそらすようになった。……あまりキスをしてこなくなった。 前は自分が「そろそろ寝る。もう帰れ」と言うまで部屋に居座っていたのに。ふと目が合うと、こちらが恥ずかしくなってそらすまで、艶やかな瞳でじっと見つめていたのに。……朝晩問わず、隙をみつけてはキスを仕掛けてきていたのに。 それがなくなりつつある……。 いまもこうして2人で酒を片手に雑談しているというのに。カミューの視線は落ちつきなくテーブルのあたりをさまよっている。いつ「帰る」と切り出そうかタイミングを計っているふうだった。 マイクロトフはその様子にちりり、と胸が痛む。 自分と居るのがそんなに楽しくないのだろうか……。 自分は前と何ら変わらないはずなのに。いや、それが原因なのだろうか。『恋人』となったのに、全然それらしい振る舞いをしない自分に呆れてしまったのか……。 マイクロトフはちょっと唇を噛んでうつむいた。いつものカミューなら様子におかしいことに気づき、「どうした?」と気遣ってくれるはずなのに。 「マイク? 眠いのかい? ああ、もうこんな時間だしね……。そろそろ帰るとするよ……」 「カミュー」 立ち上がろうとしたカミューの手をマイクロトフは掴んだ。 「マイク?」 カミューの怪訝そうな声にマイクロトフはうつむいたまま口を開く。 「カミュー……。はっきり言ってほしい。俺を恋人にしたことを後悔しているのなら、元に戻ろう」 「え?」 カミューは驚いて目を見開いた。マイクロトフは思い切って顔を上げる。 「キ、キスをするようになったこと以外を除けば俺たちは親友だったときと何ら変わらないだろう。だったら恋人、なんてわけのわからない枠に閉じこもる必要はないんじゃないのか?」 「……別れたいの?」 すっと無表情になったカミューにマイクロトフはカッとなった。 「俺が、じゃなくて、おまえが、だろう! 最近のおまえは俺と居てもちっとも楽しそうじゃないじゃな……っ」 言葉の途中ですごい力で抱き寄せられたかと思うといきなり唇を塞がれた。それはいつもの触れるだけの優しいキスではなかった。深く合わされた唇からカミューの舌が入りこんできたかと思うと、マイクロトフの口腔をまさぐりはじめる。 「んっ……ぅんっ……っ」 初めて味わう強烈な刺激にマイクロトフはくぐもった声を上げたが、カミューはかまわずキスを続ける。顎をくすぐり、歯茎をなぞり、舌を絡める。そして、強く吸い上げられたとき、マイクロトフの背筋に電流のようなものが走った。それは初めてキスを交わしたときに感じたものに似ていたが、比べ物にならないくらいの強さだった。 マイクロトフはその感覚の正体がわからないことに恐怖を覚え、何とかカミューを引き剥がそうとした。しかし、全然力が入らず、ただすがるようにカミューの腕を掴むのが精一杯だった。息苦しさと強い刺激で思考がぼうっとしてきた頃、ようやく唇が離れる。マイクロトフはすっかり力が抜けて、椅子の背もたれに倒れてしまった。その背もたれにカミューが片腕をおいてマイクロトフを覗き込む。その顔はどこか苦しげだった。 「ごめん、マイク……。俺はこういうことをしたいって思っているんだよ……。でも、おまえにはまだそういう気持ちはないだろう? だから、少し距離をおこうとしてたんだ」 言いながら唇を人差し指でなぞられて、マイクロトフはぞくり、とする。思考がまとまらないまま問い返していた。 「こういうこと……?」 「おまえを……抱きたい」 低い声で囁かれてマイクロトフは目を見開く。 「俺は……男だぞ……?」 呆然と口にした言葉にカミューはちょっと苦笑いした。わかってるよ、と額を軽くはじく。 「最近のおまえはキスしてもはじめのように身体を強張らせることもなくなっただろう? そう思ったら自分の中で欲が抑えきれなくなってきて……。おまえを傷つけたくなかったから離れようとしたんだ。それが却っておまえを傷つけていたなんて……」 ごめん……とカミューは小声で謝った。そして、身体を離すと、 「そういうわけで、おまえを嫌いだとか、別れたい、なんて微塵も思ってないんだよ。もう少し時間をくれるかい? そうすれば……」 「いいぞ……」 ぼそり、と呟かれた言葉に今度はカミューが目を見開く。 「マイク?」 「我慢、する必要はない……。こ、恋人同士なのだから……」 顔を真っ赤にして見上げてくるマイクロトフにカミューは理性の箍が外れそうになった。しかし、それをぐっとこらえて最後の確認をとる。情けないことに声が震えた。 「いいの……? あんなことやこんなことしちゃうよ?」 「わっ、わけのわからんことを言うな! したくないならっ……」 マイクロトフが更に真っ赤になってどなりかけると、ぎゅっと強い、けれども優しい力で抱きしめられた。 「ありがとう、マイク……。好きだよ……」 そのせつない響きに、マイクロトフはおずおずと背中に腕を回した……。 俺の部屋に行こう、と言い出したカミューに、マイクロトフはそのためだけにわざわざ場所を変えるなんて恥ずかしすぎると思い、何か不都合でもあるのか? と問うた。カミューはちょっと苦笑して、あとでマイクが困ると思うんだけど……と言葉を濁してしまい、わけのわからなかったマイクロトフは子供扱いされたようでムキになって、かまわないと応えた。 そして。 マイクロトフは少し震える手で部屋の明かりを消した。とたん部屋は闇に包まれ、窓から差すわずかな月明かりだけが頼りとなる。 明かりを消したままの体勢で、これからどうしようと考えていたマイクロトフはそっと後ろから抱きしめられる。 「マイク……」 耳元で艶やかな声で囁かれてマイクロトフの鼓動がどくん、と跳ねた。そのまま耳の裏から首筋に唇が這っていく。そして首の付け根あたりで止まると、強く吸われた。 「……ぁっ……」 マイクロトフはちり、とした痛みに思わず声が漏れた。そして、自分の声にハッとして真っ赤になる。カミューはその反応に少し目を細め、抱きしめていた腕を片方伸ばして顎を捉え、後ろを向かせる。そして、そのまま口付けた。 最初は触れるだけのキスを繰り返し、マイクロトフの唇が導かれるように薄く開かれると、今度は深く重ねる。奥に縮こまっていたマイクロトフの舌を器用に絡め取り、思うさま蹂躪した。カミューがキスに夢中になっていると、マイクロトフの両腕がマイクロトフを抱きしめていたカミューの腕にかかり、我に返る。そっと口付けを解いた。 「……は、ぁ……」 息苦しかったのか荒い息をつくマイクロトフをカミューは艶然と微笑んでみつめる。そして、少し身体をずらすとマイクロトフをベッドにゆっくり押し倒した。抵抗がほとんどなかったのは腰が立たなくなっていたのか。 「夢みたいだ……」 カミューはうっとりと囁くとまだ息の整わないマイクロトフに口付ける。今度は触れるだけで離れ、額に、瞼に、頬に、とキスを降らせていく。マイクロトフはその優しいキスに陶然となり、目を閉じていた。 しかし。カミューの手が自分の服にかかると慌てて目を開けて身体を起こそうとした。が、すでにカミューにがっちり抑えこまれていてそれはかなわない。 これから行なわれることは頭では何となくわかっていても、実際には未知の世界だ。少し脅えたように目を見開くマイクロトフにカミューは優しく微笑む。 「大丈夫だよ……」 安心させるように瞼にキスを落として目を閉じらせる。そしておとなしくなったのを確認すると、再びシャツのボタンを外していった。その手がかすかに震えていたことにマイクロトフは気づいただろうか。 すべて外し終えるとカミューはマイクロトフの首筋にそっと唇を寄せる。 マイクロトフを安心させるため「大丈夫だ」とは言ったものの、自分とて同性を抱くすべは知らない。いや、知識としてはあるのだが、実際に、となると不安がないわけではない。 唇が触れると、ぴく、とマイクロトフが身じろぎする。そのまま鎖骨まで辿りながら手はシャツをはだけていった。鎖骨に辿りつくと窪みを強く吸う。マイクロトフが息を詰めるのがわかった。唇を離すと雪国特有の白い肌にくっきりと痕が残る。カミューはそれを見て自分の中の餓えが少し満たされたのを感じた。そう、餓えていたのだ。心が。マイクロトフを欲して。 これで……2つ……。 本当は身体中に所有印を刻みたい。でもそれは自分が満足するだけだ。簡単に抑えがきかなくなるであろう自分は容易に予測がつく。だから正気でいられるうちはマイクロトフにできるだけ優しくしたい……。 カミューは掌を逞しい胸板に滑らせた。突起を軽く擦るとびくっとマイクロトフが硬直する。その反応があまりにも過剰だったため、カミューは思わず手を止めてマイクロトフの顔を見た。真っ赤になりながらこちらを見つめる瞳は、男でも胸を触るのか?! と思っているらしいことがありありとわかるもので、カミューはちょっと笑った。そして手を再び動かしはじめると、もう片方の突起を口に含む。 「ちょっ……、カ、カミュっ……!」 初めての刺激にマイクロトフは慌てたような声を出す。しかしそれは上擦っていて、カミューの耳には甘く聞こえた。 カミューはそっと舌で舐め上げ、唇ではさみ、軽く噛んで刺激を与える。手の方も掌から指先に変え、摘んでは指の腹で押し、撫でさすった。 「……あっ……」 マイクロトフは思わず漏れた自分の声に真っ赤になり、これ以上は漏らすまい、と必死に噛み殺す。カミューは胸の尖りが反応して堅くなるのが嬉しくてしばし遊戯に夢中になった。 そして、頃合をみて、あいていた手を腰に滑らせる。とたん、びくり、と震える身体を宥めるようにわき腹のあたりを優しく撫で上げる。それをゆっくり繰り返しているとマイクロトフはぎゅっと目を瞑ったまま、苦しそうに息を吐き出した。カミューは声が聞きたいと思ったが、いまでもかなり我慢しているであろうマイクロトフをこれ以上追い詰めることもできず、手に集中する。 そして、カミューの手はゆっくりとさらに下へと降りていき、ベルトに手がかかった。 硬質な金属音にはっとするマイクロトフにカミューは間髪いれず深く口付ける。マイクロトフの意識を口付けに引きつけた隙に手際よくズボンと下着を剥ぎ取っていった。ぱさ、とかすかな布擦れの音とともにベッドの下に剥ぎ取られた服が落ちると、貪るような口付けを受けていたマイクロトフがカミューの胸板を押して抵抗をはじめた。そのただならぬ様子にカミューは口付けを解く。 「マイク……? やっぱり嫌、かい?」 優しく問いかけて、そっと漆黒の瞳を覗き込む。すると羞恥のあまりか少し潤んだ瞳が真っ直ぐカミューの琥珀色の瞳を捉えた。 「そ、そうじゃ……ない。ただ……俺だけ、裸なのが……」 言ってて更に恥ずかしくなったのか、腕で顔を隠してしまう。カミューは一瞬きょとん、としたが、マイクロトフの言葉を心の中で反芻すると笑い出したい衝動を必死にこらえねばならなかった。 「わかった。ごめん。俺も脱ぐからちょっと待ってね」 ちゅ、と鼻先にキスを落として上半身を起こすとマイクロトフにまたいだ格好のまま、自分のシャツのボタンを2、3外すと頭からがばりと豪快に脱ぎ捨てた。そしてベルトを一気に引き抜き、マイクロトフの顔の脇に片手をついて上半身を少し倒す。もう片方の手で自分のズボンを剥ぎ取りながら、マイクロトフの耳元に顔を寄せて囁いた。 「本当に可愛いね、おまえは」 「なっ……! だ、誰が……ぁっ!」 反論しかけたマイクロトフの耳に噛りつくとびくん、と首をすくめる。こんな反応までいちいち可愛い、とカミューは暴走しそうになる心を必死に抑えながら自分も一糸纏わぬ姿となった。 「これでいいかな?」 カミューは自分の足をマイクロトフの足に軽く絡ませた。これでお互いの間を隔てるものは何もない、とおしえる。マイクロトフは素肌と素肌が触れ合う感触にますます心拍数が上がるのを感じる。さっきから心臓が止まるのではないか、と思うくらい鼓動が激しかった。しかし、それは決して嫌なものではなく。 「マイク?」 返事を待つカミューにまさか「続けていい」と言えるはずもないマイクロトフはぎゅっと目を閉じてかすかに頷いた。カミューにはそれで充分で。 カミューは嬉しそうに微笑むと、そっとマイクロトフの中心に触れた。 「っ、やっ……」 自分でもそんなに触ることのないところをやんわりと掴まれて、マイクロトフは思わず身体を起こしそうになる。それを柔らかく抑え込んで、カミューは緩く扱きだした。自分でもしたことがない行為からもたらされる未知の快感に、マイクロトフは声を上げそうになって両手で口を塞ぐ。それでもこらえきれない吐息が指の間から漏れた。それはカミューの官能を刺激するのに充分で……。質量を増したそれにうっとりと唇を寄せた。 熱い吐息を思いもしないところに感じたマイクロトフは慌ててカミューの頭を押し返そうとしたが、一瞬早くカミューの方が早かった。 「やっ、やめ、ろっ、……かみゅっ、ぅ……」 口に含まれて息が詰まる。制止しようとした手は全然力が入らなかった。こんなことをされるとは、マイクロトフの理解を完全に越えていた。恥ずかしくて恥ずかしくて憤死しそうだった。そんなマイクロトフにかまわず、カミューは口内で舌を動かしはじめる。とたん、マイクロトフの身体に恐ろしいまでの快感が駆け巡った。ぴちゃ、と濡れた音がマイクロトフの耳を打つ。 「や、あっ……」 上擦った声はあまりにも恥ずかしく、またも両手で口を塞ぐ。しかし、断続的に聞こえてきた粘着質な音に耳も塞ぎたい。慣れない快楽に花芯はあっというまに張り詰めていった。 「やっ、かみゅぅ、はな、せ……、も、もう……」 「いいよ。イって」 わずかに口を離してカミューが上目遣いにマイクロトフを見る。快感のあまりに滲んだ涙で視界がぼやけているマイクロトフの瞳にカミューの口元の白い糸が写って、それが己から出たものだ、とわかると、かあぁっと頭に血が昇る。カミューはそんなマイクロトフに優しく微笑みかけると、再び口に含み、強く吸い上げた。 「っ、ああああっ……!」 マイクロトフはひときわ強い刺激にあっけなく果てた。カミューはためらうことなく嚥下する。 荒い息をつくマイクロトフにカミューはそっと顔を覗き込みにいく。マイクロトフは片手で顔を覆っていた。 「マイク……?」 「か、みゅ……、すまな、い……」 「何を謝っているの? 俺はこんなに幸せなのに」 顔を覆っている手を優しく掴むと、たいした抵抗もなく顔からどけることができた。マイクロトフは目元を赤くしたままカミューを潤んだ瞳で脅えたように見る。カミューはその瞳にぞくり、とするのを感じながら、額にキスをひとつ落とす。 「……どうしたの?」 「俺を……」 「うん?」 「軽蔑しただろう……? 浅ましいって……」 カミューは思わぬ言葉に目を見開いた。いまにも泣きそうに顔を歪めているマイクロトフを見つめて、柔らかく微笑む。 「浅ましいのは俺の方だよ……。ほら、マイクのイった顔を見ただけでこんなになってる……」 カミューはそっとマイクロトフの手を取ると己の劣情に触れさせた。嫌がるだろうとは思ったが、へたな言葉を並び立てるより伝わるかと思ったからだ。マイクロトフはカミュー自身に触れたとたん、びくっと目を見開いたが、嫌がりはしなかった。カミューはその手を両手で包み込むように握ると、 「マイクは免疫がなかっただけのことだよ。別に恥ずかしいことでもなんでもない……。マイクは……綺麗だよ……」 と、言って神聖なものにするように恭しく手の甲に口づける。そしてマイクロトフの目をじっと見つめて……ふ、と気まずそうにそらした。 そう。おそらくは自慰すらもしたことのないであろうマイクロトフ。17歳にもなればそういう性的な興味を持ってもおかしくないものだが、純情で色恋沙汰より剣を握るのが好き、という実直な男だから。何も知らないマイクロトフにつけ込んでいる自分はなんて卑劣で浅ましいんだろう、と思う。彼の無垢な瞳を見ていると、彼を汚しているのだ、と改めて思い知らされる。 「カミュー……?」 「マイク……、その、これ以上続けると……おまえの負担はかなりなものになる。ここで……、やめようか?」 目を合わさずに言うカミューの表情はつらそうで、それはマイクロトフを気遣っているようにも、自分の劣情を持て余しているようにも見えた。おそらく両方なのだろう。 マイクロトフはゆっくり口を開いた。 「俺は……綺麗なんかじゃない。無知なだけだ。だから……」 おまえがおしえてくれ……と、そっと腕をカミューの首に回す。カミューは信じられない、といったふうにマイクロトフを見つめていたが、そんなにみるなっと真っ赤な顔で抗議されて慌ててマイクロトフを抱きしめる。幸福感で涙が出そうだった。 「本当にいいの? もう、我慢がきかないよ……?」 「お、俺だって我慢ができなかった……。だから、お互いさまだろう……」 最後のほうは消えいるような声でつぶやくマイクロトフに、カミューは口にすると怒られそうなので心の中で「可愛い! 可愛すぎる!」と10回くらい絶叫する。そして、艶やかに微笑んで、 「ありがとう……マイク……」 万感の想いを込めて口付けた。 唇を離すと人差し指と中指を自分の口に含み唾液を絡めて濡らす。何をしているんだ? というふうな顔をしているマイクロトフに安心させるようにキスをひとつ落とし、指は双丘を割り秘所に触れる。びくっと身を強張らせるマイクロトフにカミューは「ごめんね」とつぶやくと、もう一度キスを仕掛け、意識をこちらに逸らさせた。唇を深く貪りながら中指を蕾に差し入れる。いままで感じたことのない異物感に身を捩りそうになるマイクロトフの腰を抱きしめ、更に指を深く埋めていく。そして解きほぐすように中でぐり、と動かすと合わせてた唇からうめき声にも似た声が漏れる。カミューは唇を離して苦しそうに眉を寄せている眉間に口付けた。固く、狭いマイクロトフのそこをゆっくり丹念にほぐしていく。そうしてようやく中でいくらか動かせるようになると人差し指も侵入させ、さらにほぐしていく。 「っあ……っ……」 とある一点に触れたとき、マイクロトフが思わず声を上げた。解きほぐすことに集中していたカミューはその声で我に返る。もう一度同じところを引っかくとマイクロトフはびくっと首をすくめてカミューの腕を掴む。漆黒の瞳がとまどったようにカミューを見上げた。 「か、みゅ……、そ、こ、へん……だ……」 「感じる、の……?」 「かん……っ?!」 カミューに言われてその感覚の正体を知ったマイクロトフは瞬時に首筋まで真っ赤になる。カミューは嬉しそうに微笑んで、指の動きを再開した。 ひとつ……わかった。でもまだ足りない。マイク、全部おしえて……。おまえのイイトコロを……。 丹念に指を動かしていくと何箇所かそれらしいところをみつけた。そのへんを重点的に刺激していくと、やがてマイクロトフは緩やかに首を振りはじめる。しかし、その表情は最初の頃のように苦悶ばかりが浮かんでいるわけではなく、明らかに快楽の色が混じりはじめていて……カミューはぞくり、と欲を煽られる。限界だ……と指を引き抜いた。官能の波に翻弄させていたマイクロトフはせつなげに睫毛を震わせて熱い息を吐いた。その思いがけないほど艶っぽい表情にカミューは少し震えた声で囁く。 「マイク……ちょっと力を抜いて……」 足を押し広げ、自分の欲望を蕾に押し当てる。優しくしたい……と思う反面、早く思うさま蹂躪したいという支配欲が膨れ上がっていくのを止められない。ぐっと押し入るとマイクロトフは苦痛の声を上げた。 「あぁっ、ぅ……」 「力、抜けば……少しは楽になるから……」 ちぎられそうな締め付けにくらくらしながらカミューが苦しそうな声で言う。初めて受け入れるそこはカミューの侵入を拒み、それ以上進むことができなかった。マイクロトフは激痛のあまり流れてきた涙を拭う余裕もないまま助けを求めるようにカミューを見る。カミューは下肢に手を伸ばし、痛みのあまり萎えていたマイクロトフ自身に指を絡めた。 「ん、あっ……」 新たな刺激にマイクロトフの身体から一瞬力が抜けた隙を逃さず、カミューは一気に押し入る。 「あああっ……!」 さっきまでの比ではない苦痛にマイクロトフは喉をのけぞらす。カミューは力強く抱きしめてマイクロトフの涙を唇で拭い、彼が落ち着くのを待った。 「やっと……ひとつになれた……」 これ以上はない、というくらい幸せそうに囁くカミューに、マイクロトフは痛みよりもいいようのない嬉しさがこみあがってくるのを感じた。 これが……恋人同士というものなのだろうか……? 少し、わかった気がする。いままでの自分があまりにも幼かったのだ。カミューが自分を求め、自分がそれを受け入れた……そう思うと充足感のようなものが満たされるのがわかった。と、同時にカミューにどれだけ我慢させてきたのだろう……と、申し訳なくも思う。少し震える両手を伸ばしてカミューの頬を包んだ。 「マイク?」 「カミュー……。俺は……」 おまえが好きだ、という想いを込めて自分から口付ける。初めての自分からのキス。 目を見開いてそれを受けていたカミューは離れていく唇を追い、倍返しする。おずおずと舌が応えてくるようになったのに目を細めて遠慮なく強く吸い上げた。 「んぅ……」 くぐもった声にそっと唇を離せば2人の間を銀糸が伝う。それが切れるのがいやでカミューは糸をたぐりながらマイクロトフの唇を舐める。そのまま至近距離で漆黒の瞳を覗きこんで、 「動いていい?」 とお伺いを立ててみる。無言のまますがるように背中に手が回ったのを確認するとカミューはゆっくりと律動をはじめた。そして先程みつけた性感帯を突き上げる。 「ああっ……!」 指とは比べものにならない刺激にマイクロトフは声を上げる。しかし、それは悲鳴というにはひどく甘くて……。カミューは唇を噛もうとしているマイクロトフの耳元に囁く。 「だめ……。聞かせて……おまえの声を……。おまえが感じているということを俺におしえて……」 無理強いはしないつもりだった。しかし、マイクロトフが拙いとはいえ気持ちを返してくれたことが嬉しくて、カミューにも少し欲がでていた。 「やっ……、そん、な……、んあぁっ……」 できない、と言いかけたマイクロトフはまた違うところを突かれてまた声を上げる。口を塞ごうにもカミューの背中から手を離す余裕などなく、しがみつくように爪を立てるのがやっとだった。カミューはその甘い痛みにさらに煽られて律動を激しくし、再びマイクロトフ自身に指を絡めて扱きはじめる。マイクロトフはあっというまに追いたてられ、のぼりつめていった。 「あぁっ……! かみゅ、ぅ……、も、う……」 切羽詰まったようなマイクロトフの声にカミューも己の限界が近いことを知る。 「マイク……マイクロトフ……愛して、いるよ……」 カミューはいままで己の中に封印していた言葉を口にのせると、想いのたけを込めてひときわ大きく奥を突いた。 「あっ……あああぁぁっっ!!」 マイクロトフはびくびくっと身体を痙攣させて達した。ほぼ同時にカミューもマイクロトフの中に自身を解放する。 荒い息をついているマイクロトフにカミューは触れるだけの口付けを落とす。汗で額にはりついた前髪を優しくかきあげ、そこにもキスを落とした。そして自身を抜き取るとぎゅ、とマイクロトフを抱きしめる。 「マイク……愛してる……。愛しているよ……」 まだマイクロトフには重いだろうと口にしなかった言葉。一度箍が外れたら止まらなかった。愛してる、と繰り返して顔中にキスを降らす。それを目を閉じて甘受していたマイクロトフは、いつか自分も口にすることができるだろうか……と思いながら眠りの淵に落ちていった……。 マイクロトフは朝が早い。早朝の鍛錬を日課としているからなのだが、たまに夜更かししても身体が習慣づいているらしく大抵同じ時間に起きてしまう。 そして。 この日もいつもとあまり変わらない時間に目が覚めた。ぼうっと目を開けると、 「おはよう、マイク」 息がかかるくらい間近で琥珀色の煌きが自分を見つめていた。その瞳は幸福そうに細められていて。マイクロトフは昨夜のことを思い出した。ばっと赤面するのを自覚しながら少し目線をずらして口を開く。 「お、おはよう、カミュー……。起きていたのか……早いな」 「うん……。目が覚めたとき、マイクがいなかったらどうしようって思ったら怖くて眠れなかったんだ……」 「え?」 寝てないのか? と驚くマイクロトフにカミューは苦笑いを浮かべる。 「そういう夢を……何度もみたから……」 「カミュー……」 「夢じゃなくてよかった……」 カミューは嬉しそうに微笑むとマイクロトフの頬を包み込んで口付ける。触れるだけかと思われたキスは角度を変えて何度も繰り返され、息苦しさからうっすら口を開くとするり、と舌が侵入してきて、マイクロトフは慌てた。しかし昨夜、散々味わったカミューのキスはあまりにも心地良くて。抵抗らしい抵抗もできないまま思うさま貪られた。 完全に息が上がったところでようやく解放される。 「今日も……鍛錬に行くの?」 「あ、ああ……。あたりまえだろう……?」 「……やめたほうがいいと思うけど」 カミューは微苦笑した。マイクロトフは言葉の意味がわからず身体を起こそうとする。とたん、鈍痛があちこちに走った。眉をしかめるマイクロトフにカミューは 「ごめん、ね? 今日はもう少し寝たほうがいいよ。一緒に寝よ?」 と、腕を伸ばす。さすがに徹夜はこたえたのか眠そうな目になっていた。マイクロトフは赤面してカミューを睨みつける。しかし、まったく悪びれず、にこ、と微笑まれては怒りもわいてこない。マイクロトフは大仰にため息をついてみせると、もう一度ベッドに沈んだ。カミューはマイクロトフを抱きしめ、髪にキスをひとつ落とすと、すぐ寝息を立てはじめた。マイクロトフもカミューの鼓動を聞きながら再び眠りについた……。 そして、その日の夜。 マイクロトフはカミューが「自分の部屋に行こう」「あとで困ると思うけど……」と言っていた意味を知るのである。 シーツ等は取り替えたとはいえ、昨夜ここで行なわれたことを思い出さないわけがなく。横になっては昨夜の痴態を思い出し、耐えられなくなっては起き上がり、を1時間ほど繰り返したマイクロトフは赤面したまま、カミューの部屋をノックし、部屋の交換を申し出るのである……。 終わり |