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マイクロトフは布団の中で、丸くなっていた。 まだ夢うつつな頭で、もうそろそろ起きる時間だなぁと思いつつ、布団のぬくもりを甘受する。そして二度寝をしないよう、考え事をして……大抵は本日の予定などだが、ほぼまとまると気合いを入れて起き上がるのが日課。寒い季節はこのひとときがささやかな幸せだった。 さっきまで布団から出ていた顔の冷たさで今朝の冷え込みの厳しさを知った。今は顔も布団の中。胎児のように丸くなって、さすがに今日は起きるのがつらいなぁ……と布団の暖かさにすがる。 と、 「マイク、起きて! マーイク!」 ゆさゆさと布団の上から揺すられた。その声は聞き慣れた同室の少年のもの。しかし、この時間に起きていることなど数えるほどもない。 ……これは夢だ。じゃなければ何かの間違いだ。 マイクロトフはかなり強引に自分に言い聞かせて、無視を決め込むことにした。朝の一分一秒は貴重なのだ。 「マイク! 起きてよ!」 またも揺すられる。しかし、また無視してやった。いつも逆の立場で苦労させられてるから、少し自分の気持ちを味わらせてやろう、というささやかな子供じみた復讐心もわいてきていた。 ところが、少年の方が一枚も二枚も上手だった。 「…………起きないの? そう。じゃあ、キスしちゃおうっと」 声とともにがばっと布団の上から抱きついてこられて、マイクロトフは「うわあっ」と叫びながら、慌てて布団ごと押しやる。そんなマイクロトフの行動はお見通しだった少年はベッドから転げ落ちることもなく布団を手にしたまま着地した。 「あ。なんだ起きてたの?」 さも残念そうにかきあげる髪はマチルダではめずらしい亜麻色。マイクロトフは寝起きに激しく動いたせいでぜいぜい言いながら相手を睨みつけた。 「あ、朝っぱらから何をする気だ?!」 「何って……。お姫様はおはようのキスがないと起きられないのかなーと思って」 しれっと応える少年にマイクロトフはからかわれてる、と知りつつもムキになってしまう。 「誰がお姫様だっ!!」 マイクロトフは顔を真っ赤にして手近にあった枕を投げつけた。少年はひょいっと軽くよけると、にっこり笑った。 「おはよう、マイクロトフ。いい朝だね」 「……おはよう、カミュー。最低な朝だ」 どんなに頭にきてても挨拶は律儀に返す。そんなマイクロトフにカミューはくすくす笑った。これだから彼をからかうのはやめられない。 「……めずらしいじゃないか。おまえがこんなに早く起きるなんて」 カミューと同室になって約半年。カミューが自分より早く起きたことなど、自分が体調が悪くて起きられなかったとき以外ない。それどころか、最近では自分が起こさないと起きなくなってきた。 それなのに今日は。先に起きたばかりか(自分も目は覚めていたが)、朝からいいようにからかわれた。いつもいつも自分のことをからかってばかりいるのだ、この男は! だいたいこんな時間にカミューが起きていること自体おかしい。 「雪でも降るんじゃないのか?」 マイクロトフは精一杯の皮肉のつもりで言った。が、カミューはとたん、ぱあっと顔を輝かせて、 「そう! そうなんだよ! 雪が降ったんだ!!」 と、めずらしく興奮した口調で言うと、マイクロトフの手をぐいっと引っ張った。 「わ!」 ベッドの上であぐらをかいていたマイクロトフは上半身から床に落ちそうになる。カミューはそれをやすやす受け止めて、マイクロトフが床に足をつけたのを確認すると窓際まで引きずるように連れていった。 「ほら!」 カミューに促されて窓の外を見れば、なるほど、うっすらとだが雪が積もっていた。 「冷えると思ったら……どうりで」 マイクロトフはため息まじりに言った。マチルダの冬は長くて厳しい。また嫌な季節がきた、と嘆息せずにはいられなかった。 「嬉しくない? 初雪だよ?」 うきうきした様子で聞いてくるカミューの表情にマイクロトフは昔を思い出す。確かに小さい頃は雪が降ると、顰め面をしていた大人を尻目に大喜びしてはしゃいでいた。しかし、この歳になると、雪はやっかいなもの、という認識しかない。大人が嫌な顔をしていた心境が今ならわかる。 「ああ、降ってるところも見たかったなぁ」 そんなマイクロトフの感慨には気づかず、カミューは窓枠に手をあてて外の雪に魅入っている。普段は自分より一つ上とは思えないくらい大人びているカミューが、こんなことにはしゃいでいるのが意外だった。 「初雪が嬉しいだなんて、カミューも案外子供っぽいところがあるんだな」 いつもからかわれている仕返しとばかりにマイクロトフが言うと、カミューは振り返って少しはにかむように笑った。 「マチルダの冬は寒くて嫌だけどね。でも、初雪だけは好きだよ」 てっきりいつもの調子で言い返してくると思ったのに。素直に肯定されて、マイクロトフは拍子抜けしたかたちになる。返す言葉が見つからなくて、しょうがなく、自分もカミューに並んで外をもう一度見た。カミューがぽつりと言う。 「すぐ消えてしまうだろうね」 雪は夜のうちに降ったのか、東の空が明るくなってきた。冬は晴れると明け方に気温がぐっと下がるが、これくらいの雪では日が差してしまえばたちまち溶けてしまう。 「そうだな。だが、すぐまた降るだろう」 「そうだね」 外を見ているカミューの姿は淡い朝日を浴びて、亜麻色の髪が柔らかい蜂蜜色に、琥珀色の瞳も透き通った金色にみえた。まるで光の化身のようで。マイクロトフはその美しさに思わず見惚れる。 そんなマイクロトフには気づかず、カミューは口を開いた。 「……『初』がつくものって淡く消えるものが多いよね」 「え?」 いきなり何を言い出すのか、とマイクロトフがカミューの方を見ると、カミューもマイクロトフの方を見て、にこ、と笑った。 「初雪とか、初夢とか」 「夢も淡いのか?」 マイクロトフが首を傾げると、カミューはひょい、と顔を覗き込んできた。 「淡いよ。起きたばかりの頃は覚えていても、すぐ忘れてしまうだろう? 例えば、マイクは今年の初夢は覚えてる?」 「……忘れた」 憮然とした顔で答えるマイクロトフにカミューはくすくす笑う。 「だろ? 淡く消える……。あとは……初恋、とか」 カミューの言葉にマイクロトフは驚いた。彼の口からおおよそ似つかわしくない単語が出たような気がして、自分の顔を覗き込んでいるカミューを見つめ返す。するとカミューの表情が心なしか真剣味を帯びた。 ちょっとした沈黙が流れる。マイクロトフは何やらただならぬ雰囲気を感じたが、好奇心の方が勝った。 「カミューの……、その、初、恋も……淡かったのか?」 「そうだね……。実は現在進行形なんだけど、淡く消える可能性の方が高いかな……」 カミューは応えながら、なぜか真っ直ぐ目を捉えてきて。マイクロトフは居心地の悪さを感じつつも、視線を外せない。こんな質問をしたことを早くも後悔していた。 「そ、そうなのか……」 「相手、聞きたい?」 意味ありげに微笑まれて、マイクロトフの鼓動が跳ねる。なぜか聞いてはいけないような気がした。 知らなかった、とマイクロトフは思う。仲良くなる前は彼女をとっかえひっかえしていた、という噂が絶えなかったし、今は同室になって、いろいろな話しをしてきたが、そういうことは聞いたこともなかった。 カミューが好きな人とはどんな人なんだろう…… そうは思ってもさすがに聞けない。カミューは自分のプライベートにはずかずかと入りこんでくるくせに、彼の領域には他人を入れさせない。さりげなく見えない壁を作って、はぐらかしてしまう。 不公平だと思っても、向こうの話術にはまる自分が悪いんだし、誘導尋問できない自分が悪い。 それにしても、と思う。 カミューがかなわない恋をするタイプには到底みえない。彼の要領の良さは傍にいるようになって嫌というほど見てきた。それに、彼に告白されても断る可能性がある女性とはどんな人なのだろう。柔らかい物腰、巧みな話術、端正な顔……ときどき自分にみせる人の悪いところを抜かせば、同性の自分が見てもかなり魅力的だと思う。 カミューの琥珀色の瞳をみつめながらいろいろ考えをめぐらせていると、カミューがふっと視線を和らげた。 「ああ、そうそう。もう一つ淡いものがあったね」 「……なんだ?」 「初給料」 …………………… しばしの沈黙のあと、2人同時に吹き出した。 「言われてみれば……」 「最初は何に使ったらいいのだろう、なんて思っていたのに、気がつくとあっという間に消えてたよね」 「そうだな」 ひとしきり笑いあうとマイクロトフは時計を見た。朝練に行く時間がせまってきていた。 「っ、遅れる!」 マイクロトフが慌てて着替えを開始するのを尻目に、カミューはいまさらのようにあくびをしてベッドに向かう。マイクロトフはきょとんとした。 「おい、カミュー?」 「ん?」 「おまえも朝練に行くんだろう?」 早く起きたのだから。そう目で問いかけると、カミューは肩をすくめる。 「まさか。こんなに寒いのに。俺はもう一眠りするよ」 「?! カミュー! おまえ、人を起こしておいて、自分だけ二度寝する気か?!」 「寒いの苦手なんだ。知ってるだろう?」 「お、おまえというやつはっ……」 「ほら、急がないと遅刻だよ。頑張ってね」 ひらひらと手を振られて。実際時計に目をやったらもう走っていかないと間に合わない時間。マイクロトフは歯噛みして準備を終えると、足音も荒く部屋を出ていった。カミューはそれをくすくす笑いながら見送ると、有言実行にうつる。 そして1時間後、いつもより乱暴に同室者に起こされるのである……。 それから1週間後、外はすっかり銀世界となった。 「このあいだ初雪が降ったばかりだったのに、あっというまに積もっちゃったね」 「………………」 カミューが話しかけてもマイクロトフから戻ってきたのは沈黙だった。カミューは軽く肩をすくめる。 まだ夜が明けきらない早朝、カミューとマイクロトフは訓練場に向かって歩いていた。参加自由の朝練が始まるまでまだ1時間弱ある。今朝、カミューはマイクロトフに問答無用で叩き起こされた。しかし、それは昨夜、ひょんなことからマイクロトフを怒らせてしまったカミューが、ごきげんとりのために最終手段である、『手合わせをする』という約束を交わしたためであり、カミューも素直に起きて、こうしてつきあっている。 マイクロトフは強い相手と剣の稽古をするのが好きで、カミューとしょっちゅう手合わせをしたがっている。しかし、カミューはそれを承知の上で、めったに相手しない。それはしつこく誘って欲しかったし、たまに承諾したときのとても嬉しそうな顔が自分の昏い満足感を満たしてくれるから。我ながら性格が悪い、とは思っているが、一度覚えてしまった味は忘れられそうにない。 2人は昨夜降ったらしい新雪をざくざくと踏みしめて歩いていた。ただし、マイクロトフはかなり歩幅を大きくとって、カミューと並んで歩くつもりはない、という意思表示をしていた。さっきから口もろくにきかない。カミューはといえば、無理に並ぼうとはせずに、後ろからついていっていた。そして、マイクロトフの足元をそれとなく見て歩いていると、とあることに気づき、口を開いた。 「マイクってさ」 「……なんだ?」 怒ったような口調。でも、返事をしてくれたことに気をよくしてカミューは続ける。 「誰も踏んでない雪に足跡つけるの、好きでしょ?」 「!!!」 図星だったらしい。足を止め、振り返った顔がみるみる赤く染まっていった。カミューはその反応にかわいいなぁ、なんて思いつつ、じっと見つめる。 「こっ、子供っぽいとか思っているのだろう!」 「いや、べつに」 「……カミュー、声が笑っているぞ……」 「え? そう? ごめん、ごめん」 「っ、おまえなんか、しらん!!」 くるり、と踵を返してますます歩調を速めるマイクロトフに、カミューは今度こそ走って追いかけた。歩調にあわせるように勢いよく振られている腕をそっと掴む。 「ごめんってば。わかるよ、そういうの」 少し弾んだ息でそう言うと、マイクロトフは、嘘つけ、といった顔で睨みつけてくる。しかし、カミューはひるむことなくにっこりと笑った。 「誰も踏み入れてないところにいちばんのりって思うと嬉しくなるよね。征服欲っていうのかな」 「……そんな大げさなものじゃないだろう」 欲、という単語を口にしたせいか、マイクロトフは少し眉をひそめる。 「そうかな? まっさらなところに自分が踏み込みたいって思うのは小さくても征服欲というものだと思うよ」 「そう、なのだろうか……?」 真剣に考え込むマイクロトフにカミューは、ふふ、と意味ありげに笑う。 俺がまっさらなマイクロトフを手に入れたいって思うのは小さくない征服欲だけどね……。 彼は自分がこんなことを思っているなんて思いもしていないのだろうか。言葉の端々にそれとなく含んできたつもりだけど。向こうは色恋沙汰にはとんと疎いし、たまに気づいたとしてもからかわれていると思い、すぐむくれる。その姿がまたかわいくて、「本当だよ」といまだ言えないでいたりする。 でも、想いを寄せるようになってからもうすぐ1年……。そろそろ限界が近づいてきているのかもしれない。正直にこの想いを打ち明けてしまいたい、と焦がれる気持ちと、この、生ぬるくも心地良い関係に留まっていたい、と願う気持ち。微妙なバランスに狂いが生じてきた。 夜中、隣のベッドに眠る彼に何度口づけたことか。あらぬ夢を見て何度飛び起きたことか。 その頻度が増してきたことを認めざるをえない。 そろそろ言ってしまおうか……。 「カミューは本当にいろんな見方ができるのだな。傍にいるといろいろとためになる……」 マイクロトフに感嘆まじりに言われてカミューは自分の思考から浮上する。慌てて笑みを作った。 「そうかな? ひねくれているだけだよ」 適当に答えた言葉に、マイクロトフは 「それはそうだろうがな」 と、にやっとからかうように笑う。彼にしてはめずらしい表情。きっと見せるのは自分だけだ、とカミューは思う。そう思うだけで優越感に浸る自分がいる。 ああ、もう重症だ。 「ひどいな」 苦笑いしてみせると一本取ったとでも思ったのだろうか、今度は嬉しそうに笑う。こちらはさらにめずらしい表情だった。 カミューは鼓動が速まるのを感じる。しかし、それはおくびにも出さず、ずいっとマイクロトフに詰め寄った。 「マイク」 「ん? うわっ!!」 マイクロトフの身体が宙を舞った。そのまままだ誰も足跡をつけていない道脇に尻餅をつく。雪がクッションになったため、そう痛くはないはずだ。 「年上にそういうかわいくないことを言うやつはこうだよ」 見事に転んだマイクロトフを見下ろしてカミューは、ふふん、と笑う。マイクロトフは一瞬状況がわからず目をぱちくりとさせたが、カミューに足払いをされたのだ、ということがわかると、顔を真っ赤にする。 「なっ、何が年上だ! いつも俺に起こされているくせに!」 「おや、そんなことを言っていいのかな? もう、おまえの好きな肉料理が出ても分けてあげないよ?」 ん? と顔を覗き込まれて、マイクロトフはぐ、と言葉に詰まる。もうすぐ16になるマイクロトフはまだまだ花より団子。色気より、食い気優先なのだ。 「まあ、あれだけ食べているわりにはちっとも大きくならないけどね」 にやにやと笑って手を差し伸べるカミューはマイクロトフより一足早く成長期に突入し、いまは170を越えた。そして、まだ成長が止まる気配はない。一方、まだ成長期ほどの伸びがみえないマイクロトフはようやく165にとどくかどうか。 ひそかに気にしていたマイクロトフは悔しそうにカミューの手を掴んでひっぱり起こしてもらうと、カミューに指を突きつけた。 「っ!、いつかカミューを越してみせるからな!!」 「はいはい。楽しみにしてるよ」 2年後、2人の身長が逆転することなど知るはずもなく、カミューは余裕たっぷりに言い返した。 こんなことでムキになるマイクロトフがかわいくて仕方ない。 やっぱり言ってしまおうか。 また、胸をよぎる想い。 「とりあえずはいまから叩きのめしてやる!」 カミューがそんなことを思っているなど気づくはずもないマイクロトフはいきりたって訓練場に向かって再び歩き出す。カミューは軽く肩をすくめるとその場にしゃがみこんだ。 「マイク」 「……なんだ」 くるり、とマイクロトフが振り返った瞬間、 ばしっ 雪玉が顔面に命中した。カミューがとたん、爆笑する。 「同じ手に何度引っかかる気だい?」 本当におまえは人がいいね、と笑い転げるカミューにマイクロトフの怒りも頂点に達した。 「カミュー……、いいかげんにしろっ!」 雪を蹴ってカミューに飛びかかる。 「わ」 さすがにカミューもマイクロトフの予期せぬ行動に体当たりをまともにくらい、共に雪の絨毯に倒れ込んだ。そのままごろごろと転がる。 カミューは上になったり下になったりしながら、マイクロトフの顔がいつしか笑っているのに気づいて目を細める。どうやら本気で怒っているわけではなくて、じゃれているようだ。 最後にマイクロトフが上になると悪戯っ子のような笑みを浮かべる。 「どうだ。まいったか?」 「まいった、まいった」 カミューも笑って答えるとマイクロトフは上からどけて、カミューの隣に横になる。ふざけていたとはいえ、身体を動かしたことにはかわりなく、火照った身体に雪の冷たさが心地よかった。 「……気持ちいいな」 「そうだね」 カミューは応えて横をちらりと見る。間近にある想い人の横顔にどきり、とした。白い肌が雪に溶け込んでしまいそうな錯覚に陥る。 「マイクは……本当に色が白いね」 「ん? マチルダは雪国だからな。俺だけじゃないぞ」 ちょっと頬を赤くしたのは密かに気にしているからか。いままでは周りも色白な人が多かったので気にとめたこともなかったが、カミューの健康的な小麦色の肌を見たとき、自分の肌の色が随分ひ弱に思えて、急に恥ずかしくなった。実はカミューのような肌の色を羨望していたりする。 口調でそんなマイクロトフの心境に気づいたのか、カミューはちょっと身体を起こしてマイクロトフの顔を覗き込む。 「でも、俺はマイクの肌の色……好きだよ」 琥珀色の瞳が揺らめくと、マイクロトフの鼓動がどくん、と跳ねた。こんなふうに優しく細められると、なぜかどきどきする。魔法にかかったみたいに視線を外せなくなってしまう。 また、カミューもそんなマイクロトフに釘づけになっていた。 そんなに無防備な瞳で見つめ返されたら言ってしまいたくなるよ……。 好きなのは肌の色だけじゃないって。 でも、もう少し……この心地良い、ぬるま湯のような関係に留まっていよう…… せめて、この雪が消えるまでは…… 2人は結局、朝練にぎりぎり駆け込んだ。練習前からびしょびしょの姿は周りから好奇の視線を受けたという……。 「おい! カミュー! 起きろ!!」 「うーん……」 「いいかげんに起きろと言ってる!!」 「……じゃあ、姫に目覚めのキスを」 「なっ……、誰が姫だ!!」 「やだなぁ。姫は王子様のキスがないと起きられないんだよ」 「ふ、ふざけるな!!」 「冷たいな、マイクは。俺だったらしてあげるのに」 「っ! もうしらん!!」 「あ、待ってよ、マイク」 「一生寝てろ!!」 |