〜最強呪文〜




 マイクロトフは最悪の気分で目が覚めた。

 昨夜、カミューとケンカした。理由は些細な事。
 いつものごとく、カミューの軽口に自分が怒りだして、言ってはいけない一言を口にしてしまった。しまった! と思ったときにはすでに遅く、カミューは琥珀色の瞳にぞっとするような冷たい光を宿らせて、無言で部屋を出ていった……。
 どんなに後悔しても口にした言葉は消えるはずがなく、謝ろうと思ってカミューの部屋まで行ったが、幾度ノックしても返事がなかった。
 カミューを怒らせるとどんなひどい目に合うかは何度か体験していたため、かなりの勇気をだして足を運んだのに。無視された、ということに理不尽だとはわかっていたが怒りを覚えた。
 悔しくて、悔しくて。部屋に戻ると、さっきまで一緒に飲んでいたワインを残り全部……まだ半分以上残っていたが、飲み干して、そのままテーブルに突っ伏して寝入ってしまったのだ……。

 テーブルに頭を預けた状態で目が覚めたマイクロトフは重いため息をついて、身体を起こそうとした。不自然な体勢で寝ていたため、身体が軋む。マイクロトフはかすかに眉をひそめ、立ち上がった。ふらり、と目眩がしてテーブルに手をつく。頭が重い。

 飲みすぎたか……

 苦い思いで、だるい身体をひきずってシャワールームに向かった。


 みんなカミューのせいだ。

 マイクロトフは熱いシャワーを頭から浴びて、意識が覚醒してくると、子供じみたやつあたりをはじめた。

 だいたいあいつが俺を怒らせるから。
 せっかく謝りに行ったのに無視するから。
 飲みすぎたのも、みんな、みんな。
 カミューが悪い。

 シャワーを止め、ぶるん、と頭をひとつ振ると、鈍痛がつきまとう。マイクロトフは忌々しげに舌打ちした。
 最悪だ……と、マイクロトフはそれすらカミューのせいにする。そして、怒りにまかせてがしがしと頭を拭くと、クローゼットを少々乱暴に開けて騎士服を取り出した。なぜか指先が思うように動かなくて、ボタンやベルトがうまくはめられない。それもやっぱりカミューのせい。
 いつもより倍ぐらい時間がかかってようやく着替えが終わった。愛剣を手に、部屋を出る。気のせいか、ダンスニーがいつもより重く感じた……。


 道場に行くと訓練はすでに始まっていた。驚いて時計を見ると確かに開始時間を過ぎている。何をぼうっとしていたのか、全然気づかなかった自分を心の中で叱咤した。
 マイクロトフに気づいた何人かの騎士たちが手を止めてこちらを見る。マイクロトフはちょっと手を上げて、
「続けてくれ」
 と、口にした。……自分でも驚くくらい掠れた声。思わず喉に手をあてる。近くで声を聞いた騎士たちが驚いて駆け寄ってきた。離れたところにいる騎士たちも手を止めてこちらの様子を見ている。
「団長! どうしたんですか?! その声……」
「風邪ですか?」
 心配そうに聞いてくる騎士たちに、なんでもない、と言おうとしたが、うまく声が出ない。しゃがれたような声がわずかに出ただけだった。そのせいで、騎士たちはますます心配顔になる。
 それを困ったように見返して、マイクロトフは原因を考える。たまに酒を飲みすぎた次の日に声が嗄れたことがあったのを思い出し、そのせいか、と納得した。
 しかし、まさか二日酔いで、と言うわけにもいかず、どう説明しようか悩んでいると、前の方で訓練の指揮をしていた青騎士団の副団長が騒ぎに気づいて近づいてきた。
「……団長?」
 何事か、と、聞いてくる副団長に「声が……」と、かろうじて聞き取れる声を出す。その声を聞いて副団長は眉をひそめた。
「ひどい声だな。風邪か?」
 問いかけに首を横に振る。副団長はちょっと息をつくと、マイクロトフの周りを囲んでいた騎士たちに訓練を続けろ、と指示した。騎士たちは渋々持ち場に戻っていく。
 マイクロトフは安堵の息をついて、出ない声を必死に振り絞って話しかけた。
「すまないが……指揮を頼めるか?」
「かまわんが……。具合が悪いなら休め」
 ぶっきらぼうだが、気遣うような口調に、こいつもなんだかんだ言って心配性だよな、とマイクロトフはちょっと笑って首を横に振る。団長の自分にもぞんざいな口調で話しかける青騎士団副団長・アドヴァン。年長者は眉をひそめる人も多いが、マイクロトフはまったく気にしていない。
「声だけだ」
 言って自分も訓練に参加すべく剣を抜いて後ろの方に歩いていく。アドヴァンはその後ろ姿を無言で眺めていたが、あきらめたように肩をすくめると、号令を出すべく前の方に戻っていった。

 何かおかしい……と気づいたのは素振りをはじめてしばらくしてから。
 不自然な格好で寝ていたせいだと思った、軋んだ身体はほぐれず、逆にますますだるくなってきた。二日酔いのせいだと思っていた頭痛もどんどんひどくなっていく。そして、なんというか……ふわふわしてきた。身体は重いのに、頭は痛いのに、どことなくふわふわしているのだ。
 身体が軽くなったような感覚。それはそれでなんとなく楽しい。
 マイクロトフはくすくす笑いだしたい衝動を、訓練中だから、と抑えて素振りを続ける。
 と、その腕を掴まれた。きょとんとしてとられた腕の先を見ると、いつのまにそばにきていたのか、副団長の仏頂面とぶつかる。
「団長……。ふらふらしてるぞ」
「ふわふわしてるんだ」
「……それをふらふらというんだ」
 声を抑えて、アドヴァンが唸るように言う。他の騎士たちはいちばん後ろにいるマイクロトフの様子に気づかないが、前から見ていたアドヴァンは今にも倒れそうなほどふらついているマイクロトフを見兼ねて、周りに気づかれないようにさりげなく後ろまできたのだ。
 アドヴァンの言葉にマイクロトフは小首を傾げた。いつもの厳格さはどこへやら。幼さを残すしぐさは、言ってることがよくわからない、という感じだ。アドヴァンはため息をつく。
「……いいから。今日は一日寝ていろ」
「なんでだ?」
 まったくわけがわからない、と、顔に書いて聞いてくるマイクロトフにアドヴァンは睨み返す。
「頭が痛くないか?」
「うん。痛い」
 いつもなら、「ああ」とか返すのに。言葉づかいまであやしくなってきているマイクロトフにアドヴァンは舌打ちする。
「関節は痛くないか?」
「身体がぎしぎしする」
「寒気は?」
「んー。暑くて、寒い」
 無邪気に答えるマイクロトフに、アドヴァンは「それを寒気と言うんだ」と、冷たく言い放って、有無を言わせず強制退場させるべく腕を引く。その声、その症状、どっからどう見ても風邪。しかもかなり重症らしいのに。『あの男』はこんな状態の団長をほっといて何をしてるんだ、と心の中で毒づく。
「アドヴァン?」
 どこにつれていくつもりだ? という含みの問いかけをアドヴァンは無視する。これ以上ここで話しを続けると、他の騎士たちが気づいてしまう。そうなったときの騒ぎようを想像して、アドヴァンはうんざりする。なにしろここにいる連中は『団長、命!』といった輩ばかりなのだから。


 アドヴァンはマイクロトフを道場の外に連れ出すと、
「部屋に帰って寝ろ」
 と、もう一度言った。マイクロトフはまたも「なんで?」と問い返す。
「風邪だろう、どうみても」
「風邪じゃない。二日酔いだ」
「二日酔いで寒気がするか」
 ぴしゃり、と言い切るとマイクロトフは、むう、と拗ねたように唇と尖らせた。そのしぐさは、他の青騎士たちだったら、かわいい……とか涙モノなのだろうが、あいにくアドヴァンにはそんな感銘はかけらも受けない。
「せっかくふわふわして気持ちいいのに」
「熱でぼうっとしてるだけだ」
 熱が高くて気分が高揚するなんて、子供か! と内心つっこみつつ、アドヴァンはマイクロトフの額に手を乗せる。
「あ。アドヴァンの手、冷たくて気持ちいい」
 気持ちよさに目を閉じたとたん、ふらり、とバランスを崩した。アドヴァンはそれを受け止め、
「俺の手が冷たいんじゃない。団長の額が熱いんだ」
 予想以上の熱さに眉をしかめつつ答える。こうなれば部屋まで送るしかないだろう。そのあと『あの男』に押しつけてしまえばいい。
 やれやれ、と嘆息して、マイクロトフの肩を支えようとしたとき、
「どうしたんですか?」
 背後から涼やかな声がした。振り返るとそこには赤騎士団の副団長がいた。
「レイブリック」
「おはよう、レイブリック。いい朝だな」
 アドヴァンに肩を支えられた格好で、にこり、と上機嫌で挨拶するマイクロトフに、レイブリックは様子がおかしいことに気づく。
「おはようございます、マイクロトフ様。……アドヴァン殿?」
 とりあえずにこやかに返事を返して、これは一体……と視線で問いかけるとアドヴァンは肩をすくめてみせた。
「みてのとおりだ。レイブリック、悪いが、団長を部屋まで連れていってくれ」
「え?」
「俺は訓練をみなくちゃいけないからな」
 厄介払いができた、と、にやっと笑うアドヴァンにレイブリックは「あなたって人は……」とため息まじりに言う。
「大丈夫だぞ、レイブリック。俺はなんともないんだからな」
 マイクロトフが言いながらアドヴァンに支えてもらっていた腕から離れる。と、ふらふら、とまた倒れそうになって、今度はレイブリックに受け止められた。
「マイクロトフ様?」
 顔を覗き込むとマイクロトフの頬が紅潮している。さらに熱が上がったらしい。目がとろん、として今にも眠りそうだ。
「じゃあな、レイブリック。あとは頼んだ」
 そんなマイクロトフにはおかまいなしで、ひらひらと手を振って道場に戻っていくアドヴァンに、マイクロトフを支えているレイブリックはどうすることもできなく、低い声でつぶやいた。
「あとで覚えていろよ、アドヴァン……」


 よいしょ、とレイブリックはマイクロトフをベッドの上に降ろす。マイクロトフは部屋に戻る途中で意識が朦朧としてきたらしく、半ば引きずるように連れてきた。いくら鍛えているとはいえ、大の男をここまで運ぶのは本当に重労働だった。すでに汗だくである。
「マイクロトフ様? 大丈夫ですか?」
「んー……」
 生返事が返る。レイブリックはため息をついて、あとのことは『あの人』に押しつけてしまおう、と、心に決めて耳元に優しく囁く。
「いま、カミュー様を呼んできますからね」
 とたん、
「カミューは呼ぶな!」
 と、急に起き上がる。が、すぐ反動がきたらしく、また、ぱたっと布団に倒れ込んだ。
「マイクロトフ様?」
 そんな反応に驚いてレイブリックがマイクロトフの顔を覗き込むと、マイクロトフは熱のせいか目を少し潤ませてとぎれとぎれに言葉を紡ぐ。
「俺が……、こんな……ことになったのも、……カミューのせい、だから。……会いたくない……。カミュー……が、わる、い……んだ……」
 言ってるうちに意識が遠のいてきたらしく、語尾があやしくなる。レイブリックは口元に耳を寄せた。
「か、みゅーの………か………で、も……」
 聞き取れるかどうかの最後の一言。レイブリックはマイクロトフが完全に寝入ってしまったのを確認すると、目を閉じた拍子に零れた一筋の涙を指先で拭ってやる。やれやれ、とベッドを離れ、部屋を出た。


 やだなぁ……と、レイブリックはドアの前でため息をついた。ここは赤騎士団長の私室。今の時間はまだ寝ているはずだ。いつも起こしてくれる人はいまはベッドの中。ただでさえ寝起きが悪いのに、マイクロトフの言動から察するに、二人はなにやら揉めているらしい。と、なると当然こちらの機嫌も悪いだろう。
 私って、本当に苦労性だ……と、心にもないことを思いつつ、覚悟を決めてドアをノックする。

 こんこん。
 カチャ。

「失礼しま……」
「ああ、レイ、おはよう。ちょうど君を呼びに行こうと思っていたんだ」
 カミューは言いながら、白い手袋をはめていた。服もすでに騎士服に着替えている。
「団長?」
 様子がおかしい。なにか急いでいるふうだし、どこか……殺気立っている気がする。レイブリックがかすかに眉をひそめて呼びかけると、カミューは愛剣を取りに行きながら応えた。
「君に決闘の立ち会いをお願いしたい」
「は? 決闘? ……誰とです?」
 まさかマイクロトフ様じゃないだろうな、と思いながら問いかけると、剣を手にしたカミューが振り返った。……目が据わっている。
「アドヴァンだ」
「は?!」
「さあ、いくぞ!」
 レイブリックの腕を引いて部屋を出ていこうとするカミューに慌てて足を踏ん張った。
「ちょっ、待ってください! どうしてアドヴァン殿と決闘しなきゃいけないんですか?!」
「……あいつは俺の一番大切な人に手を出した。許すわけにはいかない」
「は?!!」
 何を言ってるんだ、この人は……? と少し近づいたとたん、鼻を掠めたこの臭いは……
「……団長、酒臭くないですか?」
「……うるさい」
 図星だったらしくかすかに頬を赤くするカミューをレイブリックはまじまじと観察した。よくみれば顔色は冴えないし、目の下はくまができているし、髪も少しはねている……。
 レイブリックはあきれたようにため息をついてみせた。
「二日酔いですか? そんな身体ではアドヴァン殿には勝てませんよ」
「うるさい、うるさい! 命と引き換えにしてでもあいつをたたっ斬る!」
 酒も多少残っているのだろうが、まるでだだっこのようにムキになるカミューに、どうしてこの人はあの人がらみになるとこうも冷静でいられなくなるのか……と、レイブリックは内心あきれつつもなんとか思いとどまらせようとする。
「だいたい、なんでアドヴァン殿がマイクロトフ様に手を出すんです?」
 真っ直ぐ目を見て問うと、カミューは興奮した様子で睨みつけてきたが、レイブリックがひるまないのを見てとって、少し冷静になったのか、しょんぼりと肩を落とした。
「この目で見たんだ……。二人が抱き合っているのを……」
「……いつ?」
「さっきだよ」

 カミューは夕べ、マイクロトフの部屋を出ていったあと、酒場に行ってヤケ酒をあおっていた。そのまま酔いつぶれて酒場のテーブルで朝を迎え、部屋に戻ろうとがんがんする頭を抱え、酒場を出た。
 マイクロトフへの怒りはもうおさまっていた。あの一言には確かに傷ついたが、事実だ。過去は消えないが、マイクロトフを好きだという気持ちにはなんの揺らぎもない。
 そう思ったらマイクロトフに無性に会いたくなった。今の時間なら朝練に出てるはず、とカミューの足は道場に向かった。そして……

「なるほど。そこで見たのですね」
 それなら自分も見た。自分は思わず声をかけたのに、この人は逃げたのか。そう思うとレイブリックは少しおかしかった。普段、あれだけ自信たっぷりなのに。あの人が関わると本当に弱いんだな、と。
 レイブリックはちょっと笑った。
「ああ。あのとき、マイクロトフ様は倒れられたんですよ」
「えっ?!!」
 目を見開くカミューに、レイブリックは安心させるように微笑む。本当はふらついただけだったが、その後の説明が面倒なので割愛させてもらおう。
「私もそのあと居合わせまして。アドヴァン殿は訓練があるから抜けられない、とのことだったので、私が先程、部屋に運びました。どうやら風邪を引かれたようです」
「な、なんで、それを早く言ってくれないんだ?!」
「伝えにきたら、話どころではなかったでしょう?」
 レイブリックがさらりと受け流すと、カミューは自分の失態を思い出したのか、赤面する。
「行ってあげたらどうですか?」
 助け船を出すとカミューはパッと顔を上げた。
「そうする。レイ、すまないけど……」
「はいはい。あとで休暇届を出しておいてくださいね」
「ありがとう。恩に着る」
 やっと「らしい」笑みを見せるカミューにレイブリックも「どういたしまして」と、笑い返した。カミューは愛剣をレイブリックに託し、騎士服をを忙しく脱ぎ捨て軽装になる。部屋を飛び出す勢いでドアに手をかけて、慌てて振り返った。
「俺は優秀な片腕を持って幸せだよ」
 ウィンクしてみせるカミューにレイブリックは、ああ、そういえば、と呼び止める。
「マイクロトフ様からの伝言です。『カミューのばか。でも……』」
 最後の一言は耳元で囁く。カミューはちょっと目を見開いてから満面の笑みを浮かべた。
「おまえは最高の片腕だよ」
 『優秀』から『最高』に格上げされたレイブリックはちょっと肩をすくめて、
「どうでもいいですけどね。風邪をもらわないでくださいよ」
 と言い渡す。カミューは片手を軽く上げて、今度こそ出ていった。


 寒い……

 マイクロトフは眠りの世界をさまよいながら、ぼんやり思った。身じろぎすると、そばにぬくもりがあることを知り、それがなにかわからないまますがる。と、ぬくもりに優しく引き寄せられた。マイクロトフはなぜか安心し、再び深い眠りに落ちていった……。


 どのくらい眠っていたのか。
 マイクロトフが目を覚ますと部屋の中は薄暗かった。
 そして、息がかかるほど近くに。自分を見つめる琥珀色の瞳があった。
「目が覚めた?」
 優しい声。マイクロトフはカミューの腕に包まれて眠っていたことを知る。そっと顔が近づいてきて、思わず目を閉じると額にぬくもりが触れた。
「ん……、まだ熱いね」
「カミュー……」
「ん?」
「……酒臭い」
「ごめん。昨日飲みすぎちゃった。嫌だったら布団から出るよ」
「……いい」
 マイクロトフはちょっと身じろぎしてカミューの胸に顔をうずめる。カミューは嬉しそうに微笑んで頭を優しく引き寄せた。
「……おまえが悪いんだからな」
「うん。ごめんね」
 何が、とも聞きもしないで即答するカミューが憎たらしくて、マイクロトフは顔を上げる。
「何が悪いのかわかっているのか?」
「今日……、いや、昨日の夜からマイクに起こった悪いことは全部俺のせいだよ。ごめんね」
 優しく髪を梳きながら言葉を紡ぐカミューに、マイクロトフは何も言えなくなる。
「……カミューは……、そうやってすぐ俺を甘やかす……」
「しょうがないよ。好きなんだから」
 くすり、と、笑う気配。
 マイクロトフは、ああ、また勝てない……と、どこか悔しく、どこか嬉しく思う。
「それに、マイクは病人なんだから、もっと甘えていいんだよ? 何か欲しいものはある?」
 優しく問われて、マイクロトフはじっとカミューの目を見た。カミューも優しく見返してくれる。マイクロトフはそれだけで幸福感に満たされるのを感じた。そして、唇だけを動かして欲しいものを伝える。カミューは嬉しそうに、奇麗に微笑んで、それを叶えるためにゆっくりと顔を近づけてきた。
 マイクロトフは目を閉じた……。


 最強呪文をもらったから。俺は何でもしてあげるよ。


『カミューのばか。でも……好き』


 次の日、基礎体力がばっちりなマイクロトフは完全回復し、青騎士副団長は面倒ごとから解放された、と、ほっとした。
 そして、風邪をしっかりもらったカミューに、赤騎士副団長は青筋を立てたらしい……。



 おしまい




800HITしてくださったライカM7さまからのリクエストで
「風邪をひいてよれよれの青騎士団長」でした。
オリキャラが出張ってしまってすみません……。
マイクさんが甘えモードなのは熱のせい……ということに(汗)


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