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二人はベッドの上で互いの熱を分かち合い、ぬくもりとまどろみの狭間に身を置く甘い時間を過ごしていた。 「予想外だったなぁ……」 突然そんなことを口にしたカミューを、胸に顔を埋めるような体勢で眠りに就こうとしていたマイクロトフは、何事か、と視線を上げた。 「何がだ?」 マイクロトフの問いにカミューは苦笑を返す。そして、マイクロトフの頬に手を添えると、 「こんなにハマる予定じゃなかった。1年もすれば冷めるだろうと思っていたのに……」 と、漆黒の瞳を覗き込む。マイクロトフは眉を寄せた。 「なんだ? それは……」 「マイクロトフが予想以上に魅力的だったからね。ちょっと誤算だったかな」 ふふ、とからかうように笑うカミューに、マイクロトフは憮然とした顔つきになる。そして、無言のまま、胸を押しやろうと腕を突っ張らせはじめた。 「ごめん! 怒らないで!」 笑いながら抱きしめようとしてくるカミューから逃れようとマイクロトフは身を捩る。 カミューの強引な告白ではじまった恋人という関係。それをカミューのほうからこんなことを言われ、マイクロトフは傷ついた。はじめはカミューの気持ちに応えようと努力していたはずなのに、いつのまにか違和感がなくなり、終いには自分のほうが夢中になっていたみたいで、自分がみじめに思えた。 強引に抱きすくめられて、マイクロトフは、離せ、と、どんどんと胸を叩く。その様子に、冗談のつもりがかなり傷つけてしまったことを感じ取ったカミューは宥めにかかった。 「マイク! ごめんってば。悪いふうにとらないで。俺は幸せなんだよ」 「うるさい! おまえが望むならいつでも別れてやるから安心しろ!」 マイクロトフは言ってしまってから、『別れる』という言葉に胸を抉られるような痛みを感じた。涙が滲みそうになって、ぎゅっと目を閉じる。 カミューはそんなマイクロトフに宥めるように口付けた。何度も、何度も触れるだけのキスを繰り返し、閉じられていた唇が呼吸をするためにわずかに開いた隙に下唇を柔らかく食む。ぴく、と動いた身体をさらに抱きしめ、もう一度口付けた。強情な壁を突き崩すかのように口内を優しく侵す。抵抗らしい抵抗がなくなったのを確認するとゆっくりと唇を離した。 マイクロトフが苦しげに吐息を漏らす。カミューはそれをうっとりと眺めながら口を開いた。 「ね、さっき言ったこと、本当?」 「え……?」 カミューの巧みなキスに意識が朦朧としていたマイクロトフは、カミューの言う『さっき』が自分のセリフを指していることに気付くのに数秒かかった。理解したとたん痛みだした胸を無視して睨みつける。 「ああ、男に二言はないからな。いつだって……」 「じゃあ、一生、一緒だからね!」 別れてやる、というマイクロトフの言葉を遮ってカミューが嬉しそうに笑う。マイクロトフは「は?」というふうに目を瞬かせた。 「俺が、別れよう、と言うまでは恋人同士で居てくれるんでしょ? だったら、マイクの一生はもう俺のものだよ」 「な……!」 「ちなみにマイクから別れたい、と言っても聞かないからね」 「カ、カミュー……!」 「男に二言はないんだよね。愛してるよ、マイク」 カミューは嬉しそうに、ちゅ、と軽く啄ばむようなキスをする。マイクロトフは急な展開に茫然としていたが、あきれたように首を振った。 「おまえな……」 「ごめん。傷つけるつもりは毛頭なかった。こんなに夢中になれる自分がちょっと嬉しかったんだ。俺は幸せだなぁって思った」 マイクのおかげだよ、とカミューはまたひとつキスを落とす。 「欲しいものを手に入れると冷めるっていうけど、それは嘘だね。そうじゃなければ、それは本当に欲しいものではないんだよ。 俺は、1分1秒ごとにマイクに惹かれる。冷める自分が予想もできない。1年前よりずっとずっとマイクが好きだよ」 琥珀色の瞳は紛れもなく真摯な色をたたえていて。その言葉は疑いようもない。マイクロトフは胸が熱くなるのを感じながらカミューの胸に額をこすりつけた。そして顔を上げると、悪戯っぽい笑みを浮かべる。 「俺も、1年前よりはおまえのことが、好き、だぞ」 「よりは、ってちょっと傷つくなぁ……」 「贅沢言うな」 くすくす。 二人は笑いながら額をくっつけた。 「一生離してあげないから。覚悟してね」 「おまえの言葉が真実かどうか、確かめさせてもらうからな」 「うん。ずっと傍で確かめていなよ」 「ああ、そうしよう」 あっさりと応えてくれたマイクロトフにカミューは極上の笑みを浮かべるとゆっくりと唇を寄せた。 「じゃあ、誓いのキスを……」 おわり |