|
「おまえはさ、好きな人と想いが通じたら何がしたい?」 そう問いかけると精悍な頬をわずかに朱に染めて彼は答えた。 「俺は……あまりそういうことはわからない……。だから、特にしたいこともない」 彼らしい答えに「それじゃあ、相手はつまらないよ」と俺は笑った。 「そういうおまえはどうなんだ?」 そう問い返すと、優美な笑みを浮かべた彼は答える。 「俺は本気で人を好きになるタイプじゃないからね。相手が不満を抱かない程度にはあたりさわりなくお相手するよ」 彼らしい答えに「それはあまり誠実とは言えないだろう」と俺は渋面を作る。 「……と、おまえは言わなかったか?」 「んー? そうだっけ?」 とぼけた口調で応えたカミューはマイクロトフの唇にもう一度口付けた。何度目になるかわからないキスはすぐに深まり、マイクロトフは甘い疼きを必死に受け止める。また息が上がるまでいいように貪られた。 「これのどこがあたりさわりないんだ……」 散々吸われた舌がいいかげん痺れてきた。唇は熱っぽく感じ、腫れているのかもれしない。これで明日、うまく呂律が回らなかったらどうしてくれる、とマイクロトフは少し本気で思った。 怒っている、というよりはどこか呆れているような口調で言いながら睨みつけてくるマイクロトフに、カミューは艶を含んだ笑みを返す。 「そう言うおまえだって……」 カミューはマイクロトフの髪に指を潜り込ませて軽く引き寄せると、鼻先を摺り合わせて間近にある漆黒の瞳を見つめた。 「キスをすれば応える、触れれば触れ返してくる。したいことがない、なんて言っていたのに立派にいろいろとしているじゃないか」 「なっ……!」 瞬時に赤く染まった頬にカミューは笑って口付け、そのまま額、眉間、目元、鼻先、とキスを降らせていく。そして、やはり最後は唇へ。先程までのしつこいまでの口付けではなく、軽く啄ばむようにして離れた唇にマイクロトフの舌先が空を切った。 「ほら。充分やる気だし」 「っ!」 無意識に口付けに応えようとしていたマイクロトフは今度は首筋まで真っ赤になる。くるり、とカミューに背を向け、足元でぐしゃぐしゃになっていたシーツを引っ張り上げると頭から被ろうとした。それを笑いながら制したカミューは引き締まった背中に軽く口付ける。 「恥ずかしがることはないよ。俺たちは今、一番楽しいときを過ごしているんだから」 「し、しかし、あまりにも節操がない……」 さっきまでの積極的な態度はどこへやら。一転して、シーツで顔を隠して恥らうマイクロトフにカミューは背中から抱きしめる。 「節操、なんて言葉は明日の朝、思い出せばいいのさ」 だから、もう一回。とカミューはマイクロトフの顎を捉え、唇を寄せた。 だって、知らなかった。好きな人と触れ合うのがこんなに楽しいだなんて。 だって、知らなかった。好きな人と触れ合うのがこんなに幸せだなんて。 この恋に落ちるまで2人は知らなかったのだ……。 |