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カミューには最近、面白くて仕方ない遊びがある。 それは、 「好きだよ」 「っ!!」 自分にできるかぎりのとびきり甘い声で囁けば、息を呑んで顔を真っ赤にする友人。カミューはそんな反応を内心笑いながら、わざと気付かないふりをして首をひねる。 そして、 「うーん。もう少し感情込めたほうがいいかなぁ」 独り言のようにそんなことを言いながら、心なしか潤んでいるように見える黒い瞳をじっと見つめ、 「君のことが、ずっと好きだった……」 と、吐息混じりに囁いてみた。とたん、瞳は大きく揺れ、ぎゅっとかたちのいい眉が寄せられる。 「カ、カミュー!」 「何? 今、大事なところなんだから邪魔しないで」 「か、勘弁してくれ……」 力ない言葉とともに必要以上に近づけてみた顔を押しのけられ、カミューは吹き出しそうになるのをこらえながら、顔は不満そうな表情を作った。 「マイクロトフ! やる気あるの?!」 「だ、だが……」 おろおろと目を逸らす友人・マイクロトフにカミューは追い討ちとばかりに言葉で責め立てる。 「俺のために協力してくれるって言ったのは嘘だったの?」 「う……」 彼が嘘をつく、という行為を一番嫌っていることを知っていながらわざと口にすれば、マイクロトフは言葉に詰まってうつむいてしまった。そんな様子を楽しそうに眺めながらカミューは呆れたような声を出す。 「だいたいさ、毎日やってるんだから、いいかげん慣れてよ」 「……慣れるか」 憮然と言い返してくるその態度は普段の彼に似つかわしくないほど頼りない姿で。カミューは顔が笑わないように細心の注意を払って、むくれたように言う。 「練習相手がそんなんだと、俺、いつまでたっても告白できないよ」 そう。ひょんなことから、彼は居もしないカミューの『想い人』の代わりとして、日々カミューの告白を受けることになっていた。もう何日も続いているというのに、マイクロトフはまるで自分が告白されているかのように真っ赤になってうろたえる。その反応があまりにもおもしろくて、カミューはこんな奇妙な遊びを繰り返しているのだ。 「そうだ。たまにはおまえも練習してみたらいいんじゃない?」 「え?!」 カミューの提案にマイクロトフは仰天したように目を剥いた。そんな態度がカミューをますます調子づかせているということに、いつになったら気付くのだろうか。 カミューは自分の案に満足しながら、 「俺ばっかり協力してもらっていたんじゃ、不公平だもんね。さあ、遠慮せずにどうぞ」 と、まるで口付けを待つみたいに目を閉じて、心持ち顎を上げた。 ………………………… しばらく沈黙が続いた後、マイクロトフの困り切った声がカミューの耳に届いた。 「お、俺は、本当に好きな人にしかそういうことは言えない……」 そんなセリフにカミューはカチンとくる。目を開け、目の前で真っ赤になってうつむいているマイクロトフを睨みつけた。 「ふーん。そんなこと言って、本番で失敗しても知らないからね」 こんな唐変木がどんなことを言うのか楽しみにしていたカミューは、憮然としながら嫌味ったらしく言ってやった。 しかし、そんな独りよがりの遊びには後でばっちりと罰が下ることとなる。 「おまえのこと、好きなんだ」 「ああ、はいはい」 「え、ちょっとまって。俺、本気だよ?」 「わかったわかった」 「……………………………」 ようやく自分の気持ちに気付いたカミューが決死の覚悟で告白したというのに、まったく取り合ってもらえなかった……。 |