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「カミュー、今日も図書館に来ていたのか」 頭上から声をかけられ、カミューは顔を上げた。そこには同室の少年・マイクロトフが立っている。その顔にはどこか嬉しそうな笑みが浮かんでいて、カミューをひっそりと喜ばせた。 「向かいに座っていいか?」 「ああ、もちろん。 そういうおまえこそ、今日も来たじゃないか」 『今日も』というのはお互い様だ、とカミューは笑う。すると、向かい側に座ったマイクロトフはどこか恥ずかしそうに頭を掻いた。 「昨日、読み終わらなかったのだ」 「借りていけばよかったのに」 昨日、ここで一心不乱に読みふけっていた姿を思い出し、カミューは、くすり、と笑う。あんなに夢中になって読んでいたのだから今日はさぞかし続きが気になっていたことだろう。 しかし、なぜかマイクロトフは怒ったように眉を寄せた。 「……部屋では読む気がしない」 「どうして?」 「部屋では他の勉強もできるし……おまえと話しているほうが楽しい」 ぼそっと呟かれたセリフにカミューは目を見開く。前半はともかく、後半の理由はあまりにも予想外だった。驚きが去ると、くすぐったいような暖かいような不思議な気持ちが込み上げてきて、自然と笑みが浮かぶ。 「そうだったんだ? 嬉しいな」 「う、うるさい。今は本を読むぞ!」 マイクロトフは顔を隠すように本を立てた。そこから覗く耳が真っ赤である。カミューは笑いを噛み殺して読書を再開することにした。 カミューは授業が終わると毎日のように図書館に足を運んでいた。だが、本を読むのがそんなに好きではない。嫌いなわけではないが、まだまだ遊び盛り。天気のいい日は馬に乗って草原を駆け回りたいし、街の中もいろいろ見て回りたい。だけど、異国の知識を得るには様々な本を読むのがてっとりばやかったし、そして何より……。 カミューは、ちらり、と視線を上げた。向かい側ではマイクロトフが真剣な顔をして活字を追っている。そのきりりとした眉や、伏せられた睫毛、引き締められた唇に視線が吸い込まれるかのように外せなかった。 ふと、視線を感じたのかマイクロトフが顔を上げ、二人の視線がかち合う。 「どうかしたのか?」 「……いや、なんでもないよ」 「そうか」 カミューが笑って首を振ると、マイクロトフは再び視線を本に戻そうとした。しかし、気を取り直したようにカミューをもう一度見つめ、口を開く。 「その……、そろそろ飽きてこないか?」 ためらいがちに聞いてくるのは否定されるのを怖がっているふうだった。カミューはマイクロトフの意図を悟り、心が躍るのを感じながら、わざとからかうような笑みを浮かべる。 「今日も読み終わらないよ?」 「明日読めばいい」 ためらいなく返ってきた返答にカミューは微笑んだ。 「そうだね」 頷きながら本を閉じて立ち上がる。 「じゃあ、天気もいいしデートと洒落こもうか」 「なっ、何がデートだ!!」 真っ赤になって後を追いかけてくるマイクロトフから逃げるようにカミューは足を速めた。その顔には嬉しそうな笑みが浮かぶ。 明日もここで会える……。 |