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今年のクリスマスは二人で過ごそう。 そう言い出したのは、当然というかなんというかカミューのほうだった。だが、マイクロトフもあっさりと了承したのだから、案外同じ気持ちでいたのかもしれない。 恋人になって初めて迎える聖夜。ゆっくりとした時間を二人で過ごすために、仕事と規律に縛られた石造りの城を出、暖かく迎えてくれるマイクロトフの実家を遠慮し、カミューが借りている一軒家で過ごすことにした。 グラスランド出身のカミューには城以外に帰るところがなく、従騎士の頃から何度か不便な思いをしてきた。そのため、ある程度役職がついてからは一軒家を手に入れたのだ。普段はあまり使っていないが、たまに仕事から離れたいときや、城に帰るのが面倒なときに泊まったりしていた。使用人を雇い、定期的に掃除を依頼してもらっている。 しかし、クリスマスの前に年末前でもある。赤・青騎士団を束ねる立場の二人は仕事納めをひかえ、デスクワークはいつもより格段に増えてしまった。そのため二人は一緒に帰るのをあきらめ、デクスワークを得意としているカミューが先に帰り、マイクロトフが後から訪ねることとなった。 なんとか仕事を終わらせたマイクロトフは、自分の役目とされた酒をいきつけの酒屋で店主と相談しながら何本か買い、ついでに勧められるがままにつまみにとチーズを買う。食べ物はカミューが用意しているはずだが、どうも空腹のときに食料を見ると、つい買ってしまうようだ。 店を出たマイクロトフは両手に荷物を持ち、カミューの家に向かった。カミューの家には友人の頃も、恋人になってからも訪れたことがあるため、道に不安はない。 今夜は夕方あたりから雪が降りはじめ、すでに随分と積もっていた。ざくざくと雪を踏みしめて歩きながら、明日は城に戻ったらまず雪かきだな、と仕事のことを考え、それからあたりまえのようにカミューの家に泊まるつもりでいる自分に気付き、ひとり赤面する。とはいえ、辺りは暗いし、断続的に降る雪で人々はうつむきがちに歩くため、それを誰かに気付かれることはなかった。マイクロトフは、もし、ここに彼がいたらなぜか彼だけは気付いただろう、とどこか確信めいたことを憮然と思いながら活気に溢れている街中を足早に歩き、カミューの家を目指した。 「やあ、ずいぶん降っているみたいだな」 玄関を開けたカミューはマイクロトフの頭に降り積もった雪を見て笑った。マイクロトフが買ってきた荷物を受け取りながら家の中へ促す。マイクロトフは上着を脱いで雪を払い、頭の雪をほろって家に上がった。家の中の暖かみはどこかホッとさせる。 「もう少し待ってくれる? 肉屋の店主がはずんでくれてさ……」 「え?」 言いながらキッチンに向かうカミューの後をついていったマイクロトフが見たものは、まだ羽のついた七面鳥だった。さすがに息絶えていたが、これを解体して調理となるとなるほど時間がかかりそうである。 「料理できるのか?」 「まあ、丸焼きくらいなら」 「とりあえずとりかかるか」 二人は手を洗い、七面鳥に軽く手を合わせる。二人とも動物は好きだが、こうして食料となる動物には安い同情などせずに敬意を表してありがたくいただくことにしている。戦場に出ればそんな甘ったるいことなどしていられないからだ。 カミューは早速、羽をむしりにかかる。 「……手際がいいな」 背後からその様を覗いたマイクロトフが言うと、カミューはニヤリ、と笑ってみせた。 「そりゃあ、毎日イノシシの皮を剥いでいるからね」 「は?」 そんな話、聞いたこともない、と首を捻りかけたマイクロトフだったが、はた、と気付く。自分の直情的な性格を揶揄して猪と言われることがあるではないか……? 「ほお……、その猪は青いのか?」 「そうそう。よくわかったね。青くて大きくてとびきり美味いイノシシさ」 遠回しな言い方にはあまり気付かない彼だが、さすがにわかったらしい。上機嫌に応えたカミューだったが……、 「うわっ、なんだ? その包丁は?!」 殺気を感じて振り返れば能面のような無表情で包丁を構えるマイクロトフがいた。 「いや、俺もよくしゃべる極楽鳥をさばいてやろうと思ってな……」 「い、いや、さばくのは七面鳥だけにしてくれ……」 軽い冗談のつもりが彼の怒りの琴線に触れてしまったらしい。カミューは手と首を必死に振って許しを請う。マイクロトフはぎろり、とひと睨みしてから包丁を下ろした。怒ったものの、確かにあの複雑なつくりになっている制服をいとも簡単に脱がしていく手先は器用である。だが、まさかこんな場面でそれが発揮されるとは思わなかった。複雑に思いながらマイクロトフも料理にとりかかった……。 結局、料理にありつけたのは随分と遅くなったが、それでも自分たちで用意したごちそうは満足のいくものだった。少々、豪快な調理となった七面鳥も味付けは申し分なく、子供のようにかぶりついては、肉汁をすすり、旨味を味わう。マイクロトフが買ってきた酒はすぐ空になり、カミューが買い置きしていた酒も何本か空けた。 そして、酒と料理に満足したマイクロトフがソファに身を沈めていると、後片付けもしないうちにカミューがのしかかってくる。さっきまでの穏やかな時間から一瞬で豹変する空気にマイクロトフは慌てた。 「おいっ! 後片付けを……!」 「そんなの、明日やってもらうよ」 そのためにお金を払っているんだから、とカミューは笑いながら、マイクロトフの首筋に唇を落とす。息を呑み、首をすくめたマイクロトフだったが、それならなおさらここでコトに及ぶわけにはいかない。 「だったらここではやめろ! ソファを汚す気か……!」 シーツをなんとかしてしまえばなんとかなるベッドとは違う。焦ってそう叫んだマイクロトフだったが、カミューは身を起こすと嬉しそうに笑った。 「なんだ。マイクロトフもその気だったんだ」 よかったよかった、と普段からは考えられないような馬鹿力でマイクロトフを引きずるように寝室へと移動する。引きずられるように連れていかれたマイクロトフだったが、どさり、とベッドに押し倒される頃には、まあ、いいか、とあきらめ半分の境地だった。 今日は聖夜。 恋人たちが暖かい夜を過ごす日なのだから……。 |