〜教室〜




 カミューは授業が始まるまでの時間を教室で友人たちと過ごしていた。

「それにしても、おまえ、よくあんな堅物と一緒にいられるな」
 友人の1人が思いついたように言うと、周りが一斉に頷く中、カミューは軽く肩をすくめてみせた。
 堅物、と評された当人はまだ教室に姿を見せていない。カミューと同室である彼は毎朝、朝を苦手としているカミューより早く起きているのだが、かかさず自主朝練に行くため、教室に入るのはカミューより遅いことがある。今日はそのパターンのようだ。

「悪いヤツじゃないんだけどな。ああも真面目だとちょっと疲れるよな」
 疲れるのは自分がそれだけ怠惰なだけ。

「女の子の話をしただけで『不謹慎な!』って怒るし」
 怒る、というより苦手なだけなんだけどね……。

 友人の言葉に周りがどっと笑う。カミューも合わせるように軽く笑っていたが、周りが最初の問いの答えを待っていることに気付くと笑みを浮かべたまま口を開いた。

「まあ、確かにちょっとうるさいところはあるけどね」
 それだって自分のことを真剣に見ていてくれているから。

 そう思ってもおしえてやるつもりはない。なぜ、彼が好かれるようなことをわざわざ聞かせてやらないといけない?
 ……彼を好きなのは自分だけでいいのだから。
 彼の魅力に気付くことなく上辺の堅苦しさを敬遠してるがいい。

 カミューは優越感に似た思いを抱きつつ、人当たりのいい笑みを崩さないで答える。

「でも、ああいう性格だと裏切られる心配がないだろう?」

 おまえたちの中で、間違っている、もしくは間違っていると思う行動を取ったとき、真剣に諭してくれる人間はいるか? そこまで親身になってくれる相手がいるか? よほどのことがないかぎり、見て見ぬふりをするだろう。

 カミューの言葉に友人たちはハッとしたような表情を浮かべた。確かに馬鹿がつくほど真面目で堅苦しいが、それは人を欺くということを知らないということ。だから、自分たちは苦手意識をどこかに持ちつつも、友人として付き合っているのではないか。これほど信用できる男がそうそういるだろうか。
 友人たちが目から鱗が落ちたような顔つきで沈黙していると、そこにようやく当人が現れた。
「マイクロトフ」
 カミューは今まで浮かべていた薄っぺらい笑みとはまったく違う笑みを浮かべて名を呼ぶと、自分のほうへ手招きした。マイクロトフは不思議そうにひとつ瞬きしたが、とりあえずためらいがちに頷いてカミューの傍へと歩み寄る。
 そこに。
「マイクロトフ!」
「俺の親友になってくれ!!」
 現金な友人たちが一斉にマイクロトフに群がろうとした。しかし、一瞬早く攫うように腰を抱き寄せる男がいる。
「だーめ。こいつは不器用だから1人分で精一杯なの」
 カミューは、自分のものだ、と見せ付けるかのようにマイクロトフを背後から抱き締め、勝ち誇った笑みを浮かべた。悔しそうに歯噛みする友人たちを見て、マイクロトフは不思議そうに背後のカミューに問う。

「カミュー、なんの話だ?」
「ん? なんでもないよ。マイクロトフは俺の親友をやっていればいいって話」






親友……?

2004/4/30


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