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マイクロトフの朝は早い。 夜明けと共に起き、日が昇りきってしまう前に朝練を行なう。騎士団に入団してから約10年、青騎士団長となった今もその習慣は変わらなかった。 朝練は強制ではない。実際、マイクロトフが入団した当初は数人しか参加していなかったものだが、マイクロトフが昇進するにつれ、部下たちが参加するようになり、つられるように赤騎士からも参加する者が増えてきた。 マイクロトフは鍛錬を怠らないのは大変喜ばしいことだと思う。心身共に鍛えた身体に健全な魂は宿るのだから。 しかし、喜ばしくない男が1人いた……。 「おい! カミュー! いいかげんに起きろ!!」 マイクロトフは布団の塊を揺すっていた。毎度毎度のこととはいえ、よくまあこうも寝ていられるものだ、と思う。 自分でいうのもなんだが、声量はかなりあるほうだ。その自分に遠慮なく怒鳴られ、力いっぱい揺すられているというのに、それでも寝汚いカミューは根性があると思った。 いや、へんな感心をしている場合ではない。 「カミュー!」 もう一度名前を怒鳴ると塊はわずかに動いた。 「う、ん……。今日は休みなんだからもう少し寝かせてくれよ……」 「馬鹿者! ゆっくり寝るにも限度があるだろう!! もうすぐ昼だぞ!!」 マイクロトフは仕事中である。だが、カミューは放っておくと何時まででも寝ているため、時間を作っては起こしにきていた。これで今日は4回目だ。 「だってー……」 むにゃむにゃ、となにやら寝惚けたようなことを呟いて再び眠りにつきそうなカミューにマイクロトフはため息を吐く。 「……俺を飢え死にさせる気か?」 その声は怒鳴っていたときと比べれば随分小さい呟きだった。しかし、カミューはがばりっと起き上がる。 「え? 何? 朝ご飯食べてないの?!」 花より団子。何より三度のメシが好き、という健康優良児(児という歳ではないが)の見本のような男が朝食を摂っていないなんて。 「どこか身体の具合でも悪いのかい?!」 腕立て伏せをするような格好で上半身だけ起こしたカミューは心配そうにマイクロトフを見上げた。するとマイクロトフは仏頂面で応える。 「……おまえが毎朝、一緒に食べようと言ったのではないか」 「えっ? で、でも、たまに置いていくじゃないか……」 起こしにきてもカミューがあまりにもぐずぐずしていると、マイクロトフは「朝飯を食いっぱぐれる!」とさっさといってしまうのだ。 とまどっているふうのカミューにマイクロトフは真面目な顔を崩さず、ひとつ頷いた。 「俺は反省したのだ。そうやって置いていくときもあるから、おまえはなかなか起きないのだろうと。だから、これからはおまえが起きるまでは俺も食事を摂らないことにした」 マイクロトフの言葉にカミューは口をあんぐりと開けた。なんて強引な作戦なのだろう。しかし……。 「さあ、どうする? 空腹の俺は置いといて、まだ惰眠を貪るか?」 どこか挑発的な笑みを浮かべて聞いてくるマイクロトフにカミューは、やられた、と思いながらも笑い出したい衝動に駆られた。 「まさか。愛しい恋人が腹を空かしているというのに、放っておけるわけがないだろう」 これはカミューがマイクロトフを何よりも優先している、という自信がなければできないであろう作戦。だが、一番効果がある作戦だった。 愛されてる自覚はあるわけだ。 カミューはくすぐったいような幸福感が胸を満たすのを感じながら、くしゃくしゃになった髪をかきあげた。 「ブランチになってしまったお詫びに、美味しくて量も多い店を案内するよ。もちろん奢りで」 片目を瞑ってみせるとマイクロトフは当然のように頷く。カミューが起き上がるために手を差し伸べると、マイクロトフはあたりまえのようにその手を取り、引っ張り起こした。ベッドに腰掛けたカミューはマイクロトフを見上げ、とびきりの笑顔を浮かべる。 「おはよう」 |