〜ウソツキ〜




 昔からその手の勘は冴えているほうだった。女の子にしろ、男にしろ、自分に向けられる視線が色恋を含んでいるかどうかということに敏かった。
 だから、どことなく確信していた。
 驚いたように漆黒の瞳を見開き、やがて困ったように顔を伏せ、だが、嘘がつけない性格が災いして、最後には小さく頷くだろうと。
 だから、言ったのだ。

「俺のこと、好きだろう?」って……。

 どうしてこんなことを言ってしまったのだろう。もちろん、同性に興味などまったくなかった。騎士団に入ってから女顔が災いしたのか、そういう輩がちらほらといたが、完全に無視するか、こっぴどく突っぱねてきた。
 だが、彼は大事な親友で。彼の想いに気付いたときには嫌悪より先に動揺してしまった。彼の傍に居られなくなるなんて最早考えられないこと。繋がりが切れないためにはどんなこともしなくてはいけなかった。だからといって彼の想いに応えるか、といえばやはりためらいがある。どうにかして、彼を傷つけずに解決しないといけないと思った。
 とりあえず彼の出方を待とうと思った。向こうの出方によって、いくらでも対処法を考えるのが一番の良策だと思ったから。なにせ、彼は恋愛沙汰を苦手としていたから、想いを秘めたところで、すぐに行動に出てくるとは考えにくい。だから、その間にいろいろと作戦を練ろうと思っていた。

 それなのに。
 どうして自分から暴いてしまったのか……。

 彼は予想したとおり、大きく目を見開いたかと思うと、気まずそうに顔を伏せた。しかし、うつむいたまま紡がれた言葉は、

「……違う」

 おおよそ彼らしくない小声で呟いたかと思うと、彼は突然駆け出していってしまった。ちらりと見えたその頬は熟れたトマトのように真っ赤だった。
 1人その場に取り残され、茫然と後ろ姿を見送りながらぽつりと呟く。

「ウソツキ」






短いけど萌えなお題でした

2004/3/17


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