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それは一日の訓練を終え、2人で部屋でくつろいでいたときのこと。 机に向かって明日の予習をしていたマイクロトフが唐突にベッドの上で本を読んでいるカミューに向き直った。 「なあ、カミュー」 「ん? 何?」 「友達の『好き』と恋愛の『好き』って何が違うんだ?」 カミューは分厚い本を膝の上に落とした。 「……どうしたの? 急に」 今時めずらしいくらい純朴な少年であるマイクロトフが色恋沙汰に関した話題を苦手としているのはよく知っている。だから、マイクロトフがこういう話題を持ちかけてくるとは思いもしなかった。しかし、マイクロトフは苦手な話題を口にするときの癖である眉を顰めるようなしぐさも見せず、ただ首を傾げていて、純粋に答えを知りたがっているかのように見える。 「いや、さっきそういう話になったんだが、よくわからなかったのだ」 「そ、そう……」 カミューはなんとなく動揺したように目を伏せた。これが他の人間が聞いてきたのだったら(といっても他の人間がこんなことを聞いてくるとは思えないが)、心の中で笑いつつ適当に答えてやるのに。聞いてきたのが、ここマチルダで今やカミューの一番の心の支えといってもいいほど大事な存在になったマイクロトフだなんて。 どうしよう、とカミューは思った。まるで自分の揺れている気持ちに気付かれているかのようだ。そう、最近、カミューの中で小さな葛藤が起こりはじめている……。 「カミュー? ……ひょっとして、呆れているのか?」 マイクロトフの声にハッと顔を上げる。すると、マイクロトフはどこか不安そうにカミューを見ていた。カミューは慌てて首を振る。 「いや、違うよ。どういう心境の変化なんだろうって思っただけで」 「え?」 「だって、いつも『騎士を志すのに色恋沙汰は必要ない!』って豪語してたおまえが、こんなことを聞いてくるなんて」 いつものように笑ったつもりだったが、少し頬がひきつったような気がした。しかし、それ以上に強張ったのがマイクロトフの顔だった。 「マイクロトフ?」 どこか緊張したように唇を引き結んだマイクロトフの顔をカミューはじっと見つめる。 「……だ」 「え?」 「周りがおまえは経験豊富だから聞いてみたらどうだ、と言ったんだ!」 自棄になったように叫ぶマイクロトフのセリフにカミューの中で何かが傷ついた。普段のカミューならそれがマイクロトフの本心からきた言葉かどうか判断できたかもしれない。だが、マイクロトフの言葉に怒りをおぼえたカミューは気付くことなく、ああ、そうかい、と投げやりに答える。 「同性を好きだと思う気持ちが『友達』で、異性を好きだと思うのが『恋愛』だ。わかったか?」 馬鹿にするように視線を向けると、真剣な漆黒の瞳にぶつかった。 「カミューはそう思うのか?」 「え?」 「俺は……そう思わない」 マイクロトフのセリフにカミューは目を見開く。咽喉が干上がったかのように張り付いて声が出てこなかった。これは、一体……? カミューは混乱したまま無意識に口を開いた。 「俺たちは……親友、だよな?」 「……ああ、そうだな」 2人の間で、何かが傷ついた。 |