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ときどき言い様のない不安に襲われることがある。彼はちゃんと……わかっているのだろうか……。 「好きだよ」 綺麗に微笑んでカミューが言う。マイクロトフは恥ずかしいのと居たたまれないのとで固く目を閉じるのが精一杯だった。カミューはかまわず、「好き」と「愛してる」を繰り返しながら次々と身体のあちこちに朱を散らしていく。カミューの唇が触れた箇所が、じわり、と熱を持つ感覚にマイクロトフは身体を震わせた。 カミューは簡単に、好きだ、愛してる、と睦言を口にする。だが、その言葉に気持ちがこもっていないかといえば、己の反応からいって否定できそうもない。ただ、なぜ、そんなに何回も言わなくてはいけないのだろう、と思う……。 俺が……あまりにも応えないから不安になっているのか? ときどき不満そうにねだられる愛の言葉。口下手な自分が応えられるわけもなく、大抵は怒って曖昧にしてしまうのだが。しかし、ちゃんと肝心なときには言っていると思う。……年に1回とか。 「…………………………」 自分のこととはいえ改めて考えると、それはちょっと酷いかもしれない、と思った。それでは1000対1、いや、2000対1ではないか。 だけど……。 込めてる気持ちは負けていないつもりなんだが……。 マイクロトフはちょっと悔しく思う。カミューと違ってそういうことを口にするのは物凄く勇気と覚悟がいるのだ。 「何考えているの?」 問いかけと同時に中心をやんわりと握られ、マイクロトフは、びくり、と身体を強張らせた。 こういうときのカミューはマイクロトフが少しでも気を散らしていると鋭く感知し、機嫌を悪くしてしまう。普段から人一倍やきもち焼きだが、抱き合っているときはなおさらだった。機嫌が悪くなる、といっても怒ってくるのなら、マイクロトフにも謝罪のしようがあるからまだいい。だが、カミューは「他のことなんか考えられないようにしてやる」などとムキになってしまうため、始末が悪かった。 しかも今はカミューの手に急所が文字通り握られているため下手な真似はできない。愛し合うのに急所を使う、というのも変な気がするが、心を許している恋人にだからこそ委ねられるといえばそうだ。 などと、脈絡のない思考に再び沈みかけたマイクロトフだったが、怪訝そうに名を呼ばれ、ハッと我に返る。カミューを見れば不機嫌そうに、だが、どこか不安そうに形のいい眉を顰めていた。 「不安か?」 「え?」 ぽろり、と思っていることを口にしてしまい、マイクロトフは、しまった、と思った。だが、いつかは話さなければ、と思っていたことであり、腹をくくる。 「俺がおまえにあまり気持ちを伝えないのが不安なのか?」 カミューは目をぱちくりさせた。そして、 「……おまえほど感情がストレートに顔に表れる男もいないと思うけど?」 どこか呆れたように応えるカミューにマイクロトフは顔を赤くして、違う! と怒鳴る。 「そういうことではない! そっ、その、す、好きだ、とかそういう類のことだ」 マイクロトフの言葉にカミューは再び目を瞬いた。 「どうしたの……? 急に」 いつもは聡いカミューが意図が掴めていない様子にマイクロトフは痺れを切らし、仕方なく補足する。 「おまえが……何度も好きだとか、あ、愛してるとか言うのは、俺が言わないから……不安なのではないか……?」 カミューは三たび目を見開いた。そのまましばし沈黙が流れたが、ようやく状況を理解したらしく、ふっと視線を緩める。 「なるほど。そういうことか。それなら違うよ」 「え?」 聞き返すマイクロトフにカミューは笑みを向け、手にしたままのマイクロトフの花芯にそっと愛撫を施しはじめた。思わず息を飲むマイクロトフの額にカミューの唇が柔らかく触れる。 「俺の中でね、マイクロトフを好きだ、という気持ちが溢れないように、言葉にして逃がしているんだ」 愛撫していないほうの手でマイクロトフの頬をなぞるように触れたカミューの顔に苦笑が浮かんだ。 「なんだ……? それは……」 「好きすぎて、暴走しそうになるんだよ。いつも優しくしたいと思っているのに……」 言いながら、かり、と先端に爪を立てられ、マイクロトフの顎がわずかにのけぞる。感じるところを的確に突いた愛撫に握られた中心はすでに固くなり、形を変えはじめていた。 「いつか……めちゃめちゃにしてしまうんじゃないかって、ときどき不安になる……」 カミューは痛みをこらえるように目を眇め、漆黒の瞳を真正面から見据えると、そのままゆっくりと口付ける。啄ばむように何度か角度を変えて口付け、柔らかく重ね合わせるとマイクロトフのほうから舌を絡めてきた。激しく、ときには緩やかにぬくもりを与え合い、気の済むまで貪り合う。 「馬鹿だな……」 口付けを解いて、今度はマイクロトフがカミューの頬に手を伸ばした。 「今更なんの遠慮があるというのだ。おまえが独占欲が強くて嫉妬深くて、とりあえず今は俺しか見ていないらしい、酔狂な男だというのはわかっているぞ」 「とりあえず今はってなんだよ……。ずっと、だよ」 不満そうに唇を尖らすカミューにマイクロトフはちょっと笑った。 「本当に酔狂なヤツだな。こんな、愛の言葉もまともに囁けないような男のどこがいいんだ」 「おまえの傍に居られるなら酔狂でけっこう」 それにね、とカミューは、にやり、と笑う。 「誰かさんはすぐ顔に出るから、なかなか言葉にしてくれなくても想いはわかってるつもりなんだけど?」 「なっ……!」 とたん、真っ赤になるマイクロトフの隙をついて、カミューは中心への愛撫を再開させた。マイクロトフは突然襲い来る刺激に完全に無防備になっていて、咄嗟に唇を噛んで声をこらえるのが精一杯だった。与えられる快楽に身体をわななかせたかと思うとほどなく精を吐き出した。カミューは白濁の液が絡んだ手を見せつけるようにかざしながら満足げに目を細める。 「ほら。こういう反応を返してくれるのって俺だからでしょ?」 余裕たっぷりに聞いてくるカミューをマイクロトフは、ぎり、と歯噛みしながら睨みつけた。どうしてこの男は少しでも優位になると、こうも憎たらしい態度に出るのか。 マイクロトフは悔しく思ったが、やけくそ半分、カミューの後頭部に手を回し引き寄せると乱暴に唇を重ねた。 「そのとおりだ!!」 何を不安に思っていたのか。こんなにも、彼は自分のことを愛してくれている……。 |