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「ねえ!」 マイクロトフは背後から声をかけられて振り返った。 そこには。 先程、剣を交えた異国の少年が立っていた。 今日はマチルダ騎士団の入団試験だった。 最後の試験である剣の実技でマイクロトフと対戦したのは見たこともない色の髪と瞳の持ち主だった。整った顔は少女のようで、強い相手とやりたかったマイクロトフを内心落胆させた。だが、剣を交えるとその強さに舌を巻くことになる。その少年は自分とは異なった型だったが、相当な剣の使い手だったのだ。 結局、決着がつかないまま、時間切れと判断した試験官によって止められた。試験官が感心したように「試験の最長記録だ」と褒めてくれたが、マイクロトフはそれどころではなかった。街の道場に通っていたときも同年代でここまでマイクロトフと互角にやりあえた者はいない。剣の型が違おうとも、要は強ければいいのだ。 試合後の握手を交わしたとき、少年の手の皮が歳に似合わないほど硬くなっていることに気付いた。マイクロトフは、睨むように真っ直ぐ見つめてくる少年の不思議な色合いの瞳を見つめ返しながら、この少年となら競い合って強くなれるのではないかと思う。 異国から来た少年に深い興味を覚えた……。 「なんだ?」 まさか向こうから声をかけてくるとは思わず、マイクロトフは少し驚く。先程まで激しく動いていた身体はまだあちこちが震え、呼吸もわずかに荒い。しかし、それは目の前の少年も同じようで、息は弾み、額には汗が浮いていた。 「名前……」 「え?」 「名前、おしえて」 少年のいきなりの問いかけにマイクロトフは目を瞬かせた。その反応をどう取ったのか、少年は慌てた様子で、 「あ、ごめん。俺はカミューというんだ」 と付け加える。 「カミュー……」 初めて口にする異国の響きを持つ名前は不思議な感じがした。マイクロトフはなんとなく気に入ってひとつ頷いて自分も名乗る。 「俺はマイクロトフだ」 「マイク……ロトフ」 やはりカミューのほうも異国の発音は慣れないらしく、少々ぎこちなく呟いた。口の中で何回か繰り返し、なんとか上手く言えるようになると顔を上げる。 「マイクロトフ、俺と友達になってほしい」 マイクロトフは驚いて目を見開いた。真っ直ぐに見つめてくる瞳には強い意志が現れていたが、同時にどこか不安そうでもあった。飴色に似た瞳は日を受けて透き通るような色に見える。マイクロトフは吸い込まれるようにじっとカミューの瞳を見つめていたが、自然と笑みが浮かんだ。きゅ、と緊張したように唇を結ぶカミューにマイクロトフは手を差し伸べる。 「気が合うな」 「え?」 今度はカミューが目を見開く番だった。マイクロトフはなんとなく心が弾むのを感じながらゆっくりと笑う。 「俺もそう思っていたんだ」 差し伸べた手をカミューは恐る恐る握り返してきた。 固い握手を交わすと、カミューがどこか照れたように笑う。 「マイクロトフが初めてだったんだ」 「え?」 「俺のことを真っ直ぐ見てくれたの」 だから友達になりたかった、と打ち明けた。異国から来たカミューはその容貌で試験中も完全に浮いた存在になっていたのだ。だが、それはマイクロトフも同じだった。周りはほとんどが2、3歳は上で、ちょっとした休憩時間にも1人で人気のない場所で時間をつぶすくらいしかできなかったのだ。 マイクロトフは嬉しくなりながら自分も打ち明けた。 「俺もカミューが初めてだった」 「え?」 「剣を交えて、あんなにどきどきしたのは」 街の道場で剣を習っていたときは年上や師範とやれば怖かったし、弱い相手とやればどこかつまらなかった。だけど、カミューと剣を合わせたときはなぜか気持ちが高揚し、楽しかったのだ。 「じゃあ、互いに初めての友達だな」 「そうだね」 「これからよろしくな、カミュー」 「こちらこそよろしく。マイクロトフ」 2人は顔を見合わせて笑った。 |