甘い菓子の宵闇

このSSはHありです。というか、それだけです。
なので そういった描写が苦手な方、18才未満の方は
ここからお戻り下さいませ。
読んでしまってからの苦情はナシでお願い致します(^_^;)


 決して受け取らない、と約束した。
 本当のところは「強引に約束させられた」。
 このリヴァイアス内でも恒例となって久しい、もとは地球圏だけの稚い恋祭
の贈り物を。
 誰からも、たったの1つも受け取らないと、昴治は確かに誓ったのだけれど。
そして、大変な苦労をもってそれを果たした筈だったのだ---けれど。


 半分ほどに落としたルームライトに照らされた室内。
 その曖昧な灯りによる独特の陰影が、普段生活している自分の部屋を見知
らぬ他人のもののように思わせるのだろう。
 寝慣れているはずのベッドの上に組み敷かれ、唯一の男の腕の中にいなが
ら何処か心許ないのは、きっとそのせいであるに違いない。
 「・・・ゆう、き・・」
 シャツをはだけた胸の左突起を舌先で弄られ、もう片側を指先で擦られて、
昴治は切ない吐息にも似た声音を洩らす。
 やわやわと扱われ身体の中心で硬く立ち上がったままのものといい、先ほ
どから昴治に施されている祐希の愛撫は気紛れに猫の毛並みを撫でる程度
の、いっそ気のない行為にも思えた。
 自由な片手を兄の脇腹から下肢へと滑らせて、祐希はやはりとうに解れ切
っている昴治の秘蕾にゆっくりと中指を忍び込ませる。
 「っあ、ああ・・・!」
 熱く熟した内部が弟のしなやかな指に絡みつく。祐希はその指で奥までを掻
き回しながら抜き差しを繰り返したが、そんな僅かな刺激では到底、蕩けてひ
くつくそこを満たせはしなかった。
 もっといっぱい。もっと確かな---祐希の、ものが・・・欲しい。
 「ゆうき・・・もう、や・・はや、くぅ・・・っ」
 身体の最奥から湧き上がる疼きに、羞恥は簡単に陥落した。昴治は求める
熱情のまま、
 「いれて・・・おまえの、はやく・・・!」
 霰もない言葉で懇願した。常に無い恋人の乱れた姿を前にして、しかし祐希
はこの場に不似合いなほど、冷やかな声音を投げて寄越した。
 「まだだ。素直に白状してからだと言ったろう」
 何を---と問う声は喘ぎそのものだった。悦楽に飢えるあまり朦朧とし始めた
昴治の利き手がそろそろと、放っておかれたままの自身のものに伸びていく。
が、
 「イキたいか?なら、さっさと相手の名前を言えよ。そしたら」
 兄の不心得な指先を握り込むと、祐希は秘所へと潜ませた楔を2本に増や
し、爪先で濡れた内壁を微かに擦った。
 「ふぁ・・・っ!ああん・・っ」
 「・・いれてやるよ。あんたが、欲しいだけ」
 昴治の嬌声に煽られてか、冷淡だった祐希の言葉が艶を含み始める。未だ
下肢に残されたままの衣類越しに硬く猛った欲情の徴しを押し当てられて、昴
治は堪らずそれに身体を擦りつけた。
 「誰なんだ。俺の言いつけを破って受け取った、このチョコの出所は」
 枕元に放置された、包装をぞんざいに破かれ封を切られたトリュフ・チョコの
小さなパッケージ。
 誰からも---それが「義理」であろうとも、たった1つのチョコも受け取らないと
昴治は確かに祐希に誓った。
 そして、大変な苦労をもってそれを果たした筈だった。それなのに。
 すでに部屋で待っていた祐希に帰る早々身体検査をされた時には、疑り深
い奴だと呆れもした。が、ジャケットのポケットに滑り込んだ祐希の手は、あろ
う事か、真紅の包み紙でラッピングされた小箱を掴み上げたのだ。
 もちろん昴治には、何の覚えもないものだった。たとえ祐希にそれを信じて
はもらえなくとも。
 「ほんとに俺、しらな・・・あ、ああっ・・・!ゆう、き・・!」
 くちゅり、と音をたてて指が抜けていった。失われた刺激を惜しんだ昴治の両
足が、伸し掛かる祐希の腰に絡みつく。
 「やぁ・・!ゆうきぃ・・・ぬいちゃ、やだぁ・・・っ」
 まろみの有る頬にぽろぽろと雫がこぼれ落ちた。祐希は指でそっとそれを拭
いながら、両の瞼に唇を寄せる。
 「---ホントに覚え、ないのか?」
 先ほどまでの突き放した感の消えた声音だった。昴治は心身を苛む切なさ
に唇を噛み締め、何度も必死に首を縦に振り続けた。
 溜息とも舌打ちともとれる行為のあと、祐希は僅かに身を起こし兄の足に纏
わりついた着衣を素早く剥ぎ取って、
 「・・・っん、あ・・!あ、あぁ・・・っ!」
 抱え上げた細腰へと---祐希の熱を待ち望む花蕾へと自身を捻じ込んだ。い
きなりな、強引と言っていい性急さで。
 「あっ・・ああン・・・は、あぁ・・」
 ようやっと与えられたそれに、昴治の身体は歓喜に打ち震える。内部を埋め
尽くす太い楔に絡みつき、締め付け自ら腰を振って擦り上げた。
 「・・・兄貴・・っ」
 進入した途端むしゃぶりつかれ、不意の激しい刺激に襲われて祐希は眉を
寄せた。危うく達しかけ、そんな自分の不甲斐なさに憤る。
 より高く兄を突き上げた。立ち上がって震える兄自身が、揺さぶる度祐希の
腹を打っては先端から歓びの涙を滴らせた。
 「あん・・・あ、ん・・・・あぁ・・!ゆ、きぃ・・・っ!あぁ・・・・っ!」
 先ほどまで物欲しさに涙で濡らしていた頬を今は悦楽に燃え上がらせて、昴
治は躊躇なく善がり声を上げる。
 過ぎる快感に耐え兼ねて首を振るたび、明るい色の髪がシーツの上で乾い
た音をたてた。
 「っ・・あに、き・・・」
 「は・・ああ!・・・や・・も、おれ・・・だめ」
 「まだ、だ・・・あんたには、まだ足りないだろう・・?」
 普段であれば始まりでしかないこの段階で、しかし昴治だけでなく既に祐希
もが、もはや限界に近かった。
 「あぁっ・・・もぅ、いっ・・ちゃう・・・・っ!」
 あまりに永く焦らされた挙句の強烈な愉悦の故か。何時にない狂態に、喘ぎ
に煽られた為か。
 最後の力を振り絞り、祐希は兄から一旦身を引いた。「抜かないで」と悲鳴を
上げたその身体を容易にうつ伏せに返し、破裂間際の猛りで再びその細い腰
の最奥を深く穿った。
 「っあぁ・・・!ああっ----!」
 白い背を仰け反らせ、昴治はあえない声を上げる。
 貫き引き抜いて、また差し入れられる屹立した欲望のもたらす、目も眩むよう
な快感の中で昴治は鳴いた。
 繰り返される甘美な責め苦という幸福の中で、祐希に愛される歓びに、何時
までも---鳴き続けた・・・。


 後日。
 ジャケットに忍ばせてあった赤い包みの正体が、顔見知りに強引に押し付け
られたものの、当の昴治に断られ仕方なく---あるいは悪戯半分に---無断で
隠されたものだったことが、案外容易に判明した。
 その犯人自らの申告が為されたからである。
 そして。
 犯人たる「リヴァイアス第一の英雄」が、その後一週間最愛の親友から口を
きいてもらえずに泣いて過ごした事実を 知る者は少ない---------。


<End


バレンタイン用のSSだったはずでした。 一晩あれば充分だろう、なんて思って簡単に
書き始めましたらば・・・な、何ということでしょう。わたくしめの上には、エロの神様
というお方は とうとう現れては下さらなかったのでございます・・・すみません(T_T)
やおいとは、こんなにもムズカシイものであったのですね・・・・(←何を今更!(ーー;))