「フェイトちゃんは…?フェイトちゃん…平気…?」 
   サーヴァントの幼女は、心配そうに呟いた。
   「(フェイト…?フェイトって誰かしら…)」
   凜の存在に気づいたなのは。
一瞬きょとんとして、
   「おはよう…ございます」
   「え?ええ…おはよう。貴女、名前は…?」
   「高町なのは…だよ。レイジングハート、大丈夫…?壊れてない?」
   「All right!my master」
   「きゃっ!杖が喋った!?しかも英語で…」
   レイジングハート。
それがなのはというサーヴァントの武器なのか。
   「(こんな小っちゃな子引き連れて聖杯戦争に挑め…って、
冗談きついわよ…)」
   一通り、情報の説明をした。
ただし、極力血生臭い表現は避けて。
   「解りました、凜…お姉ちゃん。
じゃあ私は、本物じゃなくて幽霊さんなの…?」
   「まあ、サーヴァントなら、そうなるかしら…?
私も…今日、急にこの世界へ来ちゃった人だから、
詳しくは解らないんだけど…
貴女はこの世界で英雄視されるような活躍をしてたんじゃない?」
   「そんな…。特に何も…」
   なのはは自分の今まで置かれていた環境について話した。
ユーノという使い魔から魔法を授かり、
ジュエルシードという宝石を回収する為に魔法少女をしていたら、
フェイトと名乗る敵が現れ、
彼女と戦ううちに、気がついたらこうして凜の前にいたのだという。
   「その…時空管理局っていうのはなんなの?聞いた事ないわ…」
   話の中で、凜が特に引っかかったのは、
時空管理局という、なのはが所属していた機関。
SFのような話だが、もし事実ならば、時空管理局の職員は
宇宙人か未来人という事になる。
   「未来からサーヴァントが呼び出される事なんてあるの…?」
   頭を抱える凛だったが、いっそこの世界の常識がそうなら
早く受け入れて、割り切ってしまったほうが冷静でいられると考えた。
   「凄いわね、この杖。科学の力…?魔法の力…?」
   なのはを知る上で、また聖杯戦争に勝ち抜くために重要な点。
それが、彼女の無事、レイジングハート。
デバイスと呼ばれる、人口知能を搭載し、意思を持った兵器で、
所持者が祈るだけで魔法が放てるという、
凛のいた世界の魔術とは、到底かけ離れた技術のものだった。
それが、凜にとって泣き所となる。
   「私、機械は弱いのよね…。どうしよ…」
   魔術に精通した凜は、科学は人並み以上にうとい。
機械が嫌で、携帯すら持たないくらいだ。
だが、なのはの魔法を解析するには科学の力がいりそうだ。
   「きゃあ…!?」
   なのはが、突然震えた。凛も、鳥肌を立てた。
すぐ近くで、強大な魔力が解き放たれた波動を感じたのだ。
   「まさか…セイバーを誰かが…」
   「…行ってもいいですか?ジュエルシードが…
フェイトちゃんが、また現れたのかもしれない…」
   ジュエルシードとは、なのはが探している魔法石で、
手にした者の願望を叶えてしまう危険物だという。
なのはは、そのジュエルシードの回収を行っていたらしい。
   「ええ。私も行くわ。初陣よ?」
   なのはは律義に、凜の返事を待っていた。
サーヴァントの習性というより、素の性格なのだろう。
   「大丈夫です!高町なのは…いきます!」
   なのはは、空高く飛び立っていった。
   「と…飛べるの!?聞いてないわよ…!」
   
   一方、こちらはその強大な魔力の放出源。
   「マスター、ご命令を」
   光の中から、銀色の鎧を着た騎士の少女が現れ、
一瞬呆然としたが、何かの手品だと信じて疑わないハルヒは、
気を取り戻して、自らのサーヴァントへ一言。
   「命令?じゃあ、SOS団に入りなさい!」
   「SOS団?レジスタンスの組織のようなものですか?」
   意味を説明するハルヒ。
   「盛り上げる?具体的にどうしたらいいのでしょう?」
   そんな会話の最中、セイバーの剣に反射して、見慣れた人影が映った。
   「何者…!」
   「……」
   「有希…?有希じゃない?
よかったぁ…。正直、ちょっと心細かったのよ…?」
   そこには、長門有希が立っていた。
元の世界で、ハルヒが勧誘したSOS団のメンバーである。
少し泣きそうになるハルヒ。
無表情な有希にだけ、さらせる顔があるのかもしれない。
しかし…
   「危ないっ!」
   響き渡る金属音。
一体なにが起きたのか…?
   
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