歓迎パーティーと言いながら、ハルヒは宅配ピザを食べ終わると、キョンやみんながいない事を愚痴って、結局すぐ寝てしまった。
   「ほんと、しょうがない子ね…」
   ハルヒが寝ついたのを見て、凜はこっそり遠坂邸に戻り、召喚の儀式を始めた。
欲するはセイバー。それなら、聖杯戦争に勝てる。
   「これはチャンスよ…。そう。今度こそセイバーを…。セイバーを…」
   だが、そう言葉に出せば出すほど、凜は内心、アーチャーを望んでいた。
憎まれ口叩きまくりだし、皮肉屋だが、
自分はあの男と共に聖杯戦争を戦い抜く決意をしていた。
召喚の際、凜が望んだのは、
結局、セイバーだったのかアーチャーだったのか、
本人も解らずじまいになった。
そして、居間に大きな衝撃。
  「前と同じだわ…」 
   居間にいけば、赤い外套を来た‘あいつ’が、ふてぶてしそうに待っているのか?
   「…な、なによこれ…?」
   居間にいたのは、白い服をまとった、
おおよそサーヴァントとしては似つかわしくない幼女。
近くには宝具?とおぼしき杖が。
   「お姉ちゃん…誰?」
   
   ハルヒは夢を見ていた。
そこには誰もいない世界を壊し続ける巨人がいて、
それにたった一人立ち向かっていく銀色の剣士を、
ハルヒはどこからか眺めていた。
だが、剣士は巨人に負かされる一方で、
世界は巨人の手でどんどん破壊されていく…。
   「…う…ハァ…ハァ…」
   悪夢と分類されるだろう苦しい眠りから目覚めたハルヒ。
寝汗をびっしょりかいていた。
   「お手洗いに…」
   別に行きたくなかったが、
すぐにまた寝て今の悪夢をまた見るのも嫌だったので、
トイレに行く事にした。
  「広いわね、この家…」 
   いつの間にか、トイレではなく、好奇心で屋敷の中を探検していたハルヒ。
   「これは…蔵かしら?立派なもんねぇ…」
   庭の一角に蔵を見つけ、重たい扉を開ける。
   「さすがに何もないか…。…きゃぁ!?」
   月明かりを頼りに蔵の中へ足を踏み入れたハルヒだったが、
さすがに視界が暗過ぎて、転倒してしまう。
だが、突如。
蔵の中で激しい光と衝撃が起きるハルヒ。
   「な、なに事…!?…もしかしたら、元の世界へ戻れるの…!?」
   一瞬、期待をしてしまった。
半分寝ぼけているせいもあるが、
もし今日の出来事が丸々夢なら、
目覚めて現実、すなわち元の世界へ戻れると思ったからだ。
ハルヒの記憶に凜やこなたの顔と、
ブリタニアや綿流しといった単語がよぎった。
ハルヒはそれを面白そうだと感じていた。
前の世界より、ずっと面白そうな事に溢れている。
まだ、ためらいがある。
むしろ、元の世界でまた退屈するくらいなら…いっそ。
   『もうSOS団なんてやめろ!
お前のせいで、みんなが迷惑してるんだ!』
   ハルヒは歯を食いしばった。
そして、この光は現実へと帰るものなんかじゃない。
更に面白い出会いや出来事へのきっかけになれ!と願った。
   「帰ってやるもんですか…!なんでも…来なさい…!」
   力なく腰は抜けていたが、笑みを浮かべてハルヒは待つ。
するとそこへ現れたのは…
   「…え?なんなの…?誰、あなた…?」
   中世の騎士のような姿をした、金髪の女性がそこにいた。
   「問おう。あなたが私のマスターか?」
   
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