長門たちの事を、手当たり次第に聞き込みしてみる。 
   「ねぇ、アンタは知らない?長門有希とか古泉一樹とか…」
   「い、いえ。知らないわ…」
   しかし、手がかりはゼロ。
次第に焦りの色が見え始める。
苛立ってきたハルヒ。
   「……」
   「ちょっと!そこのメガネっ娘!アンタはどうなの?」
   「い、ぃや…」
   「なに…?聞こえない。あなた、もっと顔上げてハキハキ喋りなさいよね?」
   気弱そうな女生徒は、ハルヒに睨まれ、最初肩を震わせていたが…
   「うるさいっ!!!」
   突然、声をあらげた。
   「涼宮さん…。イレヴンのくせに自意識過剰で…鬱陶しいのよっ!!」
   女生徒はそう怒鳴り散らすと、一目散に逃げていった。
辺りからは、それに同調したり、ハルヒを嘲るような声が聞こえた。
   「な、なによ、イレブンって?イレブンは…11?」
   まわりの嘲笑や遠目からの敵意には、普段から慣れているハルヒだったが、
さすがに言われもない内容で蔑まれるのは気持ち悪かった。
   「もぉ…!なにあれ〜?私達が日本人ってだけで…腹立っちゃうよねぇ?」
   「ええ。あんな差別用語、ブリタニア人でも良識ある方は、絶対にしませんし…」
   2人の女子が、ハルヒに声をかけてきた。
   「貴女、うちに入りたての一年生ですよね?後輩が失礼な事を言ってしまって申し訳ありません」
   「ごめんね〜。あ、ゆきちゃん!この人、噂の涼宮さんだよ!?」
   2人は、ハルヒの事を知っているらしく、眼鏡の子の方の話を聞く限り、彼女らは三年生のようだ。
   「イレヴンって…私、なんの事か解らなかったんだけど、なんなの?」
   先輩らしいが、敬語も一切使わず、軽々しく尋ねてみるハルヒ。
だが、幸い2人ともそういうのを気にするタイプではないようだ。
   「イレヴンっていうのはねぇ…ブリタニア人が日本人を差別して呼ぶ言葉だよ?」
   「日本は昔、侵略国家であるブリタニアに無条件降伏をしたんです。
だから、ブリタニア人の中には日本人を下に見る方も結構いらっしゃるんです。さっきの方のように…」
   「は…ハァ?なに、その歴史?そんなの習ってないわよ…」
   そんな話、聞いた事がなかった。
確かに、生徒に外人が多いのは気になっていたが、
言葉も通じるし、そもそも制服すらみんな違うのだから、
気にとめるにしても、二の次三の次だった。
   「でも、基本的には、ブリタニア人も皆さん良い方ですから、
みんながそうだと思わないで下さると嬉しいです」
   「じゃあ、またね〜」
   2人が去っていった後も、ハルヒはしばらく、全く実感のないこの世界の歴史に、首を傾げていた。
   「…ますます、私は異世界に来ちゃったって実感が持てたわ!
ブリタニア?イレヴン?ど〜んと来なさいよっ!」
   
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