「あの…涼宮さん?」 
   「ん?あんた誰?」
   「同じクラスの吉田ですが…」
   「や…やめなよっ…?涼宮さんと絡んじゃヤバいって…」
   鶴屋さんと入れ替わりに、ハルヒに声をかけてきた女生徒がいた。
吉田一美と平井ゆかり。ハルヒと同じ一年生で、
クラスメートでもあるようだ。
   「一年生がなんてこの教室にいんのよ?」
  「それは、こっちのセリフでもあるんじゃ…」 
   「クラスメートの間桐さんのお兄さんに用があったんです。
彼は二年生なので…。でも、いらっしゃいませんでした」
   「ふぅん…。あ、私は鶴屋さんに
”オヤシロさま”について聞こうとしたの。
あ、そうよ!あんた達は知らない?”オヤシロさま”って?」
   「知ってはいますが…」
   もうすぐ授業が始まるので、一年生の教室へ帰りながら
一美らの話を聞く事になった。
   
   教室へ向かいながら、話をする3人。
   「私達が住んでいる雛見沢というの町には、
綿流し祭という行事が年に一度あるんです」
   「雛見沢…。そうなんだ」
   「6月かな?でも、それが呪われたお祭りで…」
   「毎年一人、謎の死者が出るんです。
自殺とも他殺とも言われているけど…」
   「ハァ…?ぶ、不気味ね…。なんで?」
   「それが解らないのよね…。未だに全てが未解決って
テレビで聞いたよ」
   「しかも、行方不明者も1名出るんです。
去年は、その死者と行方不明者が、この学校の生徒だった事で
私達は恐怖しました」
   「ま…マジなのっ…!?」
   「私達はまだ中学生の頃だったけど…
当時の一年生が犠牲になったの」
   随分と重い話である。よくニュースで、学生がこうした被害に
あった時の学校の様子などが映される事があるが、
目の当てられるものではない。
   「亡くなったのは男子で…行方不明になったのは女子…?
名前、覚えてる?」
   「男子は…。ごめん、ちょっと出ないわ。女子の方は
覚えやすい名前だから知ってるわ。確か、みくるさん…」
   「そうそう!確か朝比奈!朝比奈みくるだよねっ?」
   「ええ。そうね。朝比奈みくるさん。当時一年生」
   「!…。あ…」
   「…どうかしました?」
   「そ、そんな…」
   ハルヒは絶句した。朝比奈みくるは、SOS団の一員である。
怖い事とはいえ、どこか他人事としても捕らえていた
オヤシロさまの事件が、苦しいほど身近になってしまった。
   「ま、まさか…友達だったの…?」
   頭の中が真っ白になったハルヒ。
   「涼宮さん!?」
   「…ごめん!ちょっと用事を思い出したから、
もう行くわね!ありがと、吉田さんに平井さん?」
   ハルヒは、歩いている二人を差し置いて
階段を駆け下りて、その場を後にした。
   「ハァ…ハァ…!…なんて事なのよ!?
これは…浮かれてるとかってレベルじゃないわよ!?」
   とりあえず、これ以上その話を聞きたくない。
あと、少しの間一人になりたい。
ハルヒはそんな思いで、ただがむしゃらに
階段を一階まで駆け下りた。
   
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