ある日、キョンと大喧嘩してSOS団の存在を否定されてしまった涼宮ハルヒ。
世界がつまらない。
自分でもどうしようも出来ないくらい、めちゃめちゃ面白くなっちゃえばいい。
そして、禁断の言葉さえ…
   「キョンなんていなくなっちゃえばいいのよ…!!」
   珍しく、涙に頬を濡らして翌朝目が覚めたハルヒ。
世界は、彼女の望み通り様変わりしていた。
北高に通っていたはずのハルヒは、見知らぬ学校へと足を運ぶ事になった。
その理由は、鞄に入っていた学生証だ。
   「穂群原…学園?なんて読むのかしら?」
   ハルヒがその学校を訪れると、様々な制服を着た生徒達が、何食わぬ顔で登校している。
ハルヒと同じ北高の制服を着た人もいる。
   「これは、ひょっとしたら…ひょっとしたわよっ!」
   見慣れぬ異変の数々に、昨日まで退屈でいっぱいだったハルヒの心は一気に満たされるのだった。
   
   ここは二年生の教室。
よく見知った顔を発見。
   「にょろ?」
   「丁度いいところにいたわ、鶴屋さん」
   「これから、ちょっと用事があるんだけど〜」
   「いいからつき合いなさい!…そうね。同じクラスのはずだから…みくるちゃんはどこ?」
   SOS団の一人、朝比奈みくるは鶴屋さんと同じクラスだ。
ところが…
   「………」
   「あ、あら?」
   あの、いつでも陽気で明るい鶴屋さんが、少し表情に影を落とした。
   「ずいぶん前に行方不明になったんだよ?」
   「ゆ…ゆくえ…ふめい?」
   ニュースやドラマでしか聞き慣れない、‘行方不明’という言葉に、ハルヒは一瞬言葉を失った。
   「オヤシロさまの祟りかもっ…」
   「え…な、なに様…?」
   今度は全く聞き慣れない言葉が。
そこへ…
   「鶴屋せんぱぁい?遅いですよぉ?」
   「あっ!ごめんにょろ〜」
   「ん?あんた誰?」
   「中等部の竜宮レナだよ〜?」
   全く見覚えのない生徒だった。
そもそも制服が違う。
   「レナにゃん達は、教室でいつも面白い遊びをやってるから、参加しに行ってるんだよ〜?」
   「鶴屋先輩、意外と勘が鋭くて強いんだ〜」
   「下級生と遊ぶの好きねぇ…鶴屋さん」
   まさか、中学生と一緒に遊んでいるとは。
   「そういえばレナにゃん、オヤシロさまについて、何か話してなかったっけ〜?」
   「オヤシロさま……」
   「…?」
   鶴屋さんは軽い気持ちで、レナにオヤシロさまについて尋ねたが、
その刹那、レナの顔から血の気がひいたのがハルヒには解った。
その目も、冗談や笑みといった感情が瞬時に消えたような印象だった。
   「…………」
   「…い、行こうか!さあさあ!休み時間もったいないにゃろ〜♪」
   気まずい沈黙を察した鶴屋さんが、話題を変えて
半ば強引にレナを連れていく。
   「失礼しまぁ〜す、涼宮先輩☆
今度、私達の部活に遊びに来て下さいね〜」
   レナは、元の明るい表情を見せ、去っていった。
   「なに、今の…?ちょっと鳥肌たったんだけど…」
   氷のように冷たい、レナの瞳。
睨みつけられたのは鶴屋さんで、ハルヒでは無かったが、
背筋が凍るような視線だったのは、横から見ていても解った。
   
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