(11月4日)
「私とマディソン達当時の幹部は、信者の裏を知る事をモットーとしていたの。宗教に入る背景には、心の闇を持っているというケースも多いから」
「それで、のぞみの事も調べたの…?」
「ええ。子供は特に念入りに調べないと…」
「で、のぞみを調べた結果が…」
「両親の…自殺…」
「あの時は、がむしゃらになって自殺の原因を調べたわ。結果、お母さんが4年前から鬱病になり、お父さんも自殺の一年前、会社を辞めていた事が解ったの」
「それが…自殺の原因…?」
「ただ、当然だけど自殺の直接の原因というのは、亡くなった本人にしか解らないわ」
「そこに、のぞみが当時不登校になっていた事が、彼女が自分を責めるきっかけになったわけね…」
「お母さんが鬱だったから、のぞみは不登校になったんじゃないの?」
「お母さんは隠れ鬱と呼ばれる状態だったらしいわ。一見、鬱から解らず明るく振る舞っていたみたい…」
「でも、躁鬱が激しかったとか…ないの?」
「まあ…多少はあったみたいだけど、のぞみが不登校になった原因ではないらしいわ。のぞみ本人は、不登校の理由が‘なんとなく行かなくなった’らしいから」
「なんとなく、学校に行きたくなくなったりする…?」
「私は…ないかなぁ」
「私は結構あるわ。毎日続ける当たり前の行為が、急に嫌になる時ってあるわ」
「結局、マディソンが‘私が面倒見る!’って言って、今に至るわ」
「のぞみはマディソンを心の寄りどころにしてるわよね…?どういう経緯でそうなったの…?」
「両親の自殺の理由を、のぞみが悪いか悪くないのかの結論を、マディソンは勝手に出したのよ。‘のぞみは悪くない。私が一生保証する。だから私についてこい’…と」
「それで…あんなに…」
「でも、私はマディソンに、のぞみを利用している面があるのが許せなくて…それで今に至るわ」
「でも、確かにそれを聞いてると、のぞみにしてあげられる事は…もうないのかもしれないわね…」
「ほんとに…ないのかな…?」
「うん…」
「私はマディソンが引き取ると言った時、うんと言ってしまったの。‘貴女は忙しいから。
他にやってほしい事がたくさんあるから’…と言われて。そこで、のぞみの面倒を放棄してしまった私に、彼女に何かする資格はないわ」
「忙しかったのなら…しょうがないんじゃない?」
「こういう事を、忙しいからという理由で逃げるのは、大人としては最低だと思うわ…」
「ごめんなさい…」
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