(10月17日)
「あぁん!和奏さんがこんな人だったなんてぇ!騙されたぁ!」
「な…なんでみんな全裸なの!?頭おかしいわ…!」
「あぁん!もうやだぁ!お家に帰してぇ!」
「私の好きな百合と全然違う…!もう嫌ぁぁ!」
現実に戻ってきた。
私は、レズ萌え荘にいたのだ。
にっくき初芝彩花が暮らす、変態小屋…
「私…どうせ恋愛するなら、もっと清潔な恋愛したかったぁ!なのに…!憧れの和奏先輩が…ブタ…」
「ぶひひぃっ!うるさい!さっさと私の神々しいアナルを舐めるのよ!」
「あぁぁん…!こんなの百合じゃなぁい…!」
レズ萌え荘には、和奏先輩もいた。
私と百合の関係だった美しく上品な和奏先輩はもういない…。
和奏は、下品で性欲の事しかない豚に過ぎなかったのだ。
こいつのせいで、私は人生を狂わされた…
悔しそうにアナルを舐める私。
「あ、新しい人だ。和奏、借りていい?」
「こいつ、優衣が最近調教してるダメ人間だよ〜?実物見るの初めて〜」
「ひぃ…!」
私がレズ萌え荘を変態小屋と呼んだのは、母淫の信者同様、住人はみんな全裸だからだ。
しかも、百合とは無縁な品のないレズ女ばかり…!
かくゆう、私も全裸にさせられ、和奏から新しく来た子に貸し出されてしまった。
「なかなかの巨乳ね?柔らか〜い!」
「おみゃんこもなかなか感度いいよ〜?」
「わ…私っ、百合野美姫ですぅ!あぁん!」
「秋津静香だよ!エッチ大好き!」
「春日優衣菜だよ?レズ最高!」
「秋津さんも優衣菜さんも…やめてぇ!優さん…助けて!お願いだから…助けて!こんなの、百合じゃなぁい!」
「なんなのかしら、この子…。百合ですって?ふん…。レズをナメてくれるじゃない…!
見なさい?どっちが女同士の愛の現実か!ほら…みんな酒池肉林よ!女性器をいじりあい、裸肉をむさぼり…」
「や…やめてぇ!」
「私のアナルでとどめよ!」
「わぷぅ…。騙された…。和奏に騙されたぁ…。よくも…」
和奏の汚らしいアナルを舐めて敗北宣言。
「あ〜ぁ…可哀想になぁ…。巻き込まれ系?バカナも帰してあげればいいのにー」
「いいよいいよ〜。おっぱいはいい感度だし、実は相当エッチだよ〜こいつ。もっと味わえるなぁ…」
「ぶひっ!和奏…彩花さまを想って今日もイクわ!ふん…貴女なんか、顔じゅう私の愛液まみれにしてればいいんだわ!ぶひひぃぃ!」
「誰が…お前みたいな豚に顔押しつけて…ちゅぷっ」
「そう言いつつ、和奏のおみゃんこ愛おしそうに舐めてんじゃん?」
「まだ好きなんだね…?こんな豚好きになっちゃって可哀想に…」
「あんっ!…バカバカバカっ!私の…バカ…」
「ぶひひっ!そうよ、貴女は大バカ!彩花さまに裸肉という性器全てを捧げた私が、貴女なんかを好きになるわけなんかないじゃなぁい?
貴女なんて、私の性欲便器がお似合いだわ!あぁっ!ほら…くらいなさい!イックぅぅぅぅぅっ!」
「くずっ…!こんな奴…こんな奴にぃぃ!」
和奏がいなくなり、やっとエッチから開放された私は、まだマシな残り2人に百合を薦め始める。
「私は百合が好きなんです!こんな下品でエッチばっかりなの、私が知ってる百合と全然違う!」
「百合ってなに?テッポウユリとかのユリ?」
「アニメや漫画の世界では、レズを百合って呼んでいるわ。でも、もっと健全に美化された関係や、恋愛未満のものを指すみたい」
あれ?誰、この人…?
「恋愛未満って…。それじゃレズじゃないじゃん?」
「だから百合って言うのよ?要は、同性愛って所に踏み込むと、ひいちゃうお客さんも多いから、百合っていう恋愛未満のもので留めているのね?」
「要は偶像なわけか…」
「百合は男性ユーザーも女性ユーザーもいるけど、好きな理由は全然違うと思う。
男性ユーザーは、単に女同士のイチャイチャが絵になるからって理由が大きいけど、女性ユーザーは精神的な所に入り込んでるケースもあると思う」
「同じレズでも、色んな言葉があるんだなぁ…。ビアンとかって言うのもあるんだっけ?」
「あれは、世間的にレズって言葉がポルノで使われる事を敬遠したレズの人達が、差別化を図るために使い出したの」
「へぇ〜…色々あるんだ」
「あの…貴女は…?」
「あ、ごめんなさい。彩花よ?よろしくね」
こ、こいつかぁーーーっ!!!
でも、なんか怒るタイミングを失ってしまった…
「彩花はなんで、百合とかビアンって名乗らないでレズにしたの?やっぱエロいから?」
「それもあるけど…。一番の理由は、レズが一番みんな知ってるからね」
「確かに、百合とかビアンって全然知らなかったもんなぁ…。この世界を知るまで」
「レズって言葉は、確かに男性のエロを指す意味だから、使いたがらない理由は解るけど、
でもどんなに何十年かけて百合やビアンって言い続けても、みんなレズしか知らないと思うの。
だったら、今あるレズって言葉に、エロだけじゃなく少しずつ肉をつけて言って、
ちゃんとした意味合いにして世の中にアピールしたほうが可能性がある。…ってとこかしらね?」
「私は、彩花のその宣言見て母淫入ろうと思ったからね〜?」
「そうなんだ?私はどんな言葉でもいいけどなぁ」
「優衣菜、あの頃ビアンの人達のサイトに行ったんだけど…レズって言うと凄くヒステリーに怒るんだよ?
みんな不快になるって。それ見た時に、この人達には可能性ないな〜と思って。だから、彩花の話にガッチリ共感したの」
「マセ過ぎててムカつく」
「で…でも、それがそのサイトのルールだったんでしょ?じゃ、破った方もいけないんじゃ…」
「ちゃんと謝ったし、許して貰えたよ?そうじゃなくて、単純に言葉の言い方一つで揉めてるなんて、あんまり未来を作っていく人達って感じがしないなぁと思って」
「母淫では、百合でもビアンでもなんて言っててもいい事にしてるけど、言葉自体を嫌悪するのは意味がないって言ってるわ。
レズって言葉にむしろ誇りを持って、堂々と言って活動しろって教えてるわ。それが結果的に、一番卑屈にならないで済むから」
「…私、帰ります」
「あら。お疲れ様〜」
「…彩花さま」
「なに?」
「自分に従う人以外はどうでもいいんですか?…私はそういうの嫌いです。
レズって言われるの嫌なビアンの人は結構いるし、百合好きの人はその辺きちんと配慮しています。なのに…無神経過ぎます」
「…心に止めておくわ」
「レズに生まれた事を被害者ヅラしてる奴らなんてどーでもいいじゃん?被害者として世の中に認められたって、悔しいだけだよ。
レズは病気じゃないし。マイナーだから嫌な事起こるんだよ?みんなでメジャーにしていけばいいんだって。流行りでも男の人でもなんでも利用してさ?」
「優衣菜、静かに」
「むぅ…」
「…人はそんなに強くないと思います」
「…それでも、誰かが声をあげなきゃ、何も変わらないわ。それに…自分の人生は自分で決めるもの。
レズであれビアンであれ、それを負と考えるか、正と考えるか…。私はそれを正と考えるお手伝いをしてるだけ。
ビアンだろうが百合だろうが、レズだろうが関係ない。その人が魅力ある人がどうか。それだけよ?」
「…冷たいと思います。仮にそうだとしても…貴女にそんな資格があるんですか?貴女だって他人の事は解らないでしょ?」
「ええ。でもそれは、当たり前の事じゃない?私に資格があると思う人は思うし、思わない人は思わない。
でも私は、そのどっちも興味ない人が世の中には大勢いて、その人達がレズに興味を持ってくれる事が一番大切なの。
その人達はレズでもなんでもない普通の人達だけど、彼らがレズに興味を持たない限り、私達レズの苦労は解決しない」
「でも…!偏見を無くすよう、世の中に訴えていく方法は、レズみたいなイヤらしい形じゃなくてもいいはずです!新たな偏見を生みます!」
「私達レズが一番苦しんできたのは、結婚とかもあるけど、一番は好きになった人がレズじゃないなら、高確率でフラれるって所よ。違う?」
「いや…。別に色々あると思いますけど…」
「偏見を例えば法律的に無くしたって、普通の女の子がレズもOKになると思う?人は決まりより、娯楽に弱いのよ。娯楽としてレズを広める。
ファッション感覚でも、友達感覚でもいい。みんながレズを経験したり、娯楽として親しみを持つ事が、偏見を無くす第一歩だと私は思うわ」
「…そんな未来、来ませんよ?」
「来てほしいから、頑張ってるのよ?私も、優衣菜も静香も、和奏でも」
「えぇっ!私…全然初耳なんすけど…」
「解りました。それでいいです。ただ、百合やビアンの皆さんを否定するのだけは許せません。謝って下さい」
「…謝って済むなら謝るけど、なんで貴女に謝るの?傷ついたから?」
「…争い事が嫌いなんです。百合の世界でもビアンの世界でも、争い事は起きます。
なんで迷惑なのに、争うのか解りません。争った相手がお互い謝れば、全部解決します。戦争だってそうです」
「…そりゃ、くだらない答えだけ知ってて悪意で争いを起こす人もいるけど…。今自分から見える答えに満足してないから、争うんじゃない?」
「争い自体が悪です。百合は娯楽だし、ビアンは精神的に脆い世界ですから」
「それは賛成だわ。誰かと争う暇があったら、まだ見ぬ答えを探して行動すればいいのよ?
争いなんか一度も起こさずに、目指したい答えが見つかる事もあるわ」
「……」
「初めて意見が合ったわね?」
「…帰ります」
帰り道。
どうしてあんなに怒ってしまったのか、自問自答した。
私は確かに百合好きだけど、別に代表とかなわけじゃない。
ビアンの人の事も、そういう系の雑誌や本で知ってるだけで、当事者ではない。
なんでだろう?
守りたいと思ったから?
初芝彩花の強烈な意見に嫌気が差したから?
それとも、単なる劣等感?
他者の価値観を否定するような物言いはおかしいって、そう信じてきたけど…。
私はただ、「何も選ばない」事で、彩花のレズに嫌悪感を抱いてるんだろうか…?
私は…本気で百合を選んでいるのかな?
ただ単に娯楽なら、あの場であんな風に反論する必要なんてなかったはず。
私は…何をすればいいんだろう?
ひたすら、レズを、初芝彩花を、母淫を否定し続けて戦えばいいんだろうか?
百合のために。ビアンの人達のために…
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