(10月9日)
紗都摩だ。
私は普段、一人頭の中で考えている時はこんな口調なのだが、
それだと静香にイメージ通りだと言われてしまうので、喋る時は女性っぽい喋り方を心がけている。
「紗都摩ぁ?私の乳首、また大きくなったと思う?」
「し…知らないわよ!いじり過ぎなんじゃないの?」
よく、主と従者のような関係と思われがちだが、2人きりでいる時のマディソンと私の会話は、恋人そのものだ。
マディソンは未だ、彩花に恋心を抱いているのは知っている。
それでも、私とマディソンが恋人同士でいられるのは、母淫の嫉妬禁止や乱交推奨の決まりのおかげだろう。
だから私は、悔しくもなければ、自分も誰か恋人作ろうとも思わない。
自分らしい生き方ができていると思う。
「ガールズアース…楽しみねぇ」
「…それで私のご機嫌取れると思ってない?」
「思ってる♪」
「もぉ…!」
「レズの夜明けが見たいんでしょ?紗都摩は」
「そうだけど…」
ガールズアース。
世界をレズ女ばかりにしてしまおうという計画。
私もマディソンも、ありがちな「男にトラウマがある」とか、いわゆる男性が憎いわけでは全然ないし、
かといって愉快犯的な世界じゅうがレズになるのを楽しもうとしているわけではない。
‘成長を続けたい’のだ。
「彩花ったら、あんなに面白い未来を描けるのに…実行しないんなら、それは未来の偉人じゃなくて、単なる作家に格下げなのよ?ふん…」
「また、彩花の事?つい口に出ちゃうみたいね?」
「妬いてる?」
「妬きまくり」
「じゃ、規律違反ね?」
「デリカシーがないのよ、マディソンは。普段はあるくせに、私には全然ない」
「カタカナ語使うなんて、キャラじゃないわね?」
「…貴女も静香の真似?ご注文とあらば、侍口調にしてもいいけど?」
彩花は、私やマディソンに夢を与えてくれた。
その夢を現実にしていく事が、何よりも楽しい。
「男の歴史は紀元前から、今もずっと。これからは、男女関係なく優秀な人が歴史を作るでしょうけど…それじゃ面白くないのよね?
少しくらい、女が歴史を作る時代があっても、バチは当たらないんじゃない?」
「…それが、マディソンがレズになろうと思ったきっかけでしょ?彩花がレズの未来を見せてくれるまでは、ピンと来てなかったみたいだけど…」
「女は、男を利用して上へ上がる。そんな価値観じゃ面白くないでしょ?と思って。私が、例え偉人になっても、そんな一部分があったら面白くないわね」
「私は…女として生まれて、父にがっかりされました。男がよかった…って。だから、女の価値観の変革を求めたんです。女が優位になる社会を作らなければ…と」
「私と最初に母淫で知り合った時も、男だって偽ってたものね?男だけど、誰よりもレズの夜明けを目指してる!って豪語して」
「…忘れてよ。それはもう…」
「だぁめ。私…今の女っぽさ目指してる紗都摩も好きだけど…男って偽ってる紗都摩も好きだったのよ?」
「…男と偽るだけで、優位な目線を私は持っていた。でも同時に、男という性だと何を成し遂げても二番煎じだと言う事にも気がついた。
だから…彩花やマディソンと出会って、初めて…女という性に生まれて良かったと思った。女として…私は歴史に名を残したい。マディソンや彩花、皆と共に…」
「口調が当時のに戻ってるわよ?」
「!…すぐ揚げ足とるんだから」
「熱くなると、その口調になるわよね?やっぱり、その口調のほうがしっくり来る」
「わ…私は女っぽい女を目指してるんだから!封印封印!」
こんな風に、お互いを確認し合う会話が最近多い。
昔はなかった。
もしかしたら、彩花と意見が合わなくなって、無意識に私もマディソンも、今の自分達がこれでいいのか、確認するようになったのかもしれない…
戻る